八十七話「にんぎょーのシューゲツー」
休みがない
ねぱたの記憶が甦る。
......
五月人形師匠とは、孫に買ってやった五月人形に取り憑いた......おじいちゃん亡霊である。
節句のよもぎ餅で喉を詰まらせて亡霊になったのだが、当の孫にあげた渾身の五月人形は......
「いらない、ゲームくれ」
......の一言で一蹴され、あえなく玉砕。
五月人形の素晴らしさを知ってもらおうと、取り憑いて奮闘(?)するが。
余りにキモ過ぎた為、「呪いの五月人形」としてお祓いしてもらうという名目で、神社に奉納ダンクされる事になった。
結局神社の蔵から逃亡し、果てにザジ達の様な放浪亡霊に成り代わる。
当時、亡霊間の抗争が絶えず、霊力の奪い合いが激化。
五月人形師匠は若き日の過ちの様な剣術で、その亡霊世紀末の剣術の覇者として......
「ハイ・ファントム一刀流」
を開眼。
ねぱたやザジに師匠として剣術のなん足るかを教え、ザジにオーヴァードエッジを開眼させ。
弟子のねぱたにセクハラしまくりながら、亡霊の生を謳歌していた。
そして最期は
迎えにやって来たと言う"婆さん"が、フル可動雛人形で立ち塞がり、彼女が見出だしたと言う。
「霊刀・理心流」
が、五月人形師匠の「ハイ・ファントム一刀流」と巌流島のごとく試合を行い......
師匠は自慢の五月人形ごと真っ二つにされ、見事に成仏(物理)したのである。
その顛末はその場にいた全員が呆然としていたが、妻に首根っこを捕まれて、引き摺られる様にして成仏していく様は。
どこか微笑ましくもあったと言う。
......
懐かしいと思い出に老けるねぱた、彼の教えと業は現在のザジ達の糧になっている。
(しょっちゅう、ケツばっかり触りに来て蹴っ飛ばしたった記憶しかないけど......)
(今はその教えが尊いわ)
「食らえエエエ! 」
キョウシロウの無限に切れる鉄の刃が今......下に恐ろしき片手上段の構えから、振り下ろされる!
対するねぱたの付属品の剣は、正眼に構え......
「そこや!! 」
所謂「受け」姿勢。
交錯する剣、ここで互いに霊力スキルの物理透過を打ち消しあった場合、ねぱたは押し負ける可能性が高い。
相手は強力なチェーンソーを振り回している様なモノ、斬り結んでかなう筈はない。
が......
「 ! 」
無限の刃は付属品の剣に触れる事なく弾かれる!
ねぱたは剣にバリアを集中させて触れるのを拒否したのだ!
「それがどうした! 今一度振り下ろせば良いだけの事! 」
キョウシロウの剣は弾かれながらも、再度上段に構え打ち込みの姿勢。
(よっしゃ! 振りかぶったな! )
だがしかし、ねぱたの目論みはその再度打ち込みに入る瞬間にあったのだ!
「今や! ハイ・ファントム一刀流! 」
「猫騙し!」
急に手を叩くねぱた。
ハイ・ファントム一刀流と語っといて、何故か飛び出すのは相撲の技!
五月人形師匠は相手の意表を付く、セクシーでコマンドー的な技ばかり教えていたそうな......
しかしただの"猫騙し"ではない......
ねぱたが繰り出したのはファントムスキルで言う、霊力による衝撃力増大。
周囲の空気が膨張爆発し、キョウシロウは振りかぶったままで爆風に再度動きを止められる。
「どっせい! 」
その刹那、素早くねぱたのキックが振りかぶった剣の柄に命中する!
すると......
「ぐああああああああ!」
急にキョウシロウがダメージのリアクションを見せた。
「キョウシロウさん!......」
相方の教団亡霊が慌てる。
ねぱたの放ったキックは、キョウシロウの剣の柄を大きく動かし......
キョウシロウの背中に刃を食い込ませていたのである!
「正に諸刃の剣や、物理透過スキルに両刃以外に選択肢は無い、自爆せんように気をつけて振らんとこうなるんや! 」
ねぱたの言葉に、キョウシロウの相方は憤慨しながら叫ぶ!
「おのれえええええ亡霊めエエエ!」
ねぱたに飛びかかる様に襲いかかる、紫のプラモデル。
これもまた二依子の過去の作品だろう。
手には同様に切れるナイフを持っている。
「甘いで、どんな無限の刃も当たらんと意味無いんやで......」
さっとナイフを回避したねぱたは、襲いかかる相方の教団の亡霊を強く蹴り飛ばした!
「いってらっしゃい! 」
特撮フィギュアボディが必殺技を繰り出す!
ねぱたのファントムスマッシュ!
「 ! 」
物理威力を増した一撃は、キョウシロウの相方を遥か遠くに吹き飛ばす!
「あんたらの方舟の供給範囲の外まで飛んでいきや! 」
見えなくなるまで飛んでいく相方の亡霊プラモデル。
結果、その場にはキョウシロウだけになってしまった。
「クソ!、何て事だ! 剣が内部まで......食い込んで......」
「あらあー、思いの外重症やったんやな」
キョウシロウのボディダメージがかなり深刻な様子。
ロボットプラモデルの内部フレームまで剣が食い込んで大きく霊力が漏れ出す。
その様子にねぱたは剣を突きつけて、フィギュアボディのままキョウシロウのプラモデルボディの首根っこを掴む。
「ちょっと聞きたいねん、あんたらのこんな大惨事起こしてどうするん? ウチら亡霊は人の魂集めても何の価値も意味も無いはずや......」
ねぱたの問いにキョウシロウは答える。
「うるさい......薄汚い亡霊め、俺達は天国の扉を開くんだ! 」
ねぱたは首をかしげる、キョウシロウの言ってる意味が理解出来てない。
「天国逝くなら成仏しいや、巨大霊体さんもそうやけど、そんな魂かき集めて一体、どこ行くねん」
「俺達は......天に昇る、その為の方舟に生け贄を詰め込んで......」
ここでねぱたは気が付いた、彼らは巨大霊体の行こうとしている先を知っている事に......
「何処や! 何処に行こうとしとるんや! 」
ねぱたは付属品の剣を突きつけて、聞き出そうと尋問する。
キョウシロウも自信の口が答え過ぎた事に後悔したのか......
「お前達に教える事など無い! 」
キョウシロウそう言うと、急に食い込んだ剣を引き抜く!
ボディから霊力が漏れ出す。
そして大きく声を張り上げ空に向かって叫んだ!
「聞こえていますか!」
「アドミニストレータ! 」
「私の憑依モードの強制解除をお願いします! 」
唐突に叫ぶキョウシロウ、ねぱたが驚愕している!
「なんやて、そいつ誰や! 何処に......」
ねぱたがキョウシロウに問い詰めようと、剣を深く突きつけたが。
すでにキョウシロウはボディから抜け出したのか、二依子の作品のプラモデルがグッタリと力を失って膝から崩れ落ちる。
「コイツ......! あっさりボディ捨てていった」
突然の事に呆然とするねぱた、虚しく転がる無限の刃を持つと、上で戦う仲間のよしこの救援に向かう事にした。
「アドミニストレータ......管理者......」
やはり最後の言葉が気になっているようだ、だがここで立ち止まっているわけにいかない。
「まだ裏に誰か居るんやな......みんなに報告しんと」




