八十一話「希望の流星」
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状況は再び前線に戻る。
謎のマネキンは霊力で圧縮空気を噴射しながら、船の巨大霊体の手に捕まり誘導されるように引き込まれていく。
「もうマネキンが船の真ん前にまで飛んで行ってるぞ! 」
個別に思わぬ不意討ちを受けたザジは、その場から出戻りを行うには遠い場所に居る。
頭目のヴァリアント・ドーマンや戦艦AWAJISIMAは、霊体の手の妨害が激しく身動きが取れない!
「この見えにくい手が邪魔なんじゃ! ただの妨害だけじゃのに、網のように絡みよる! 」
地引き網のように形状が変わった霊糸の縄の手が新たに何本と追加され、空中を漂う網のような形を取り。
憑依プレイヤー達を絡めて身動きを取れないようにしていた。
「おい! あれを見ろ! 嫌な予感がする急げ! 」
ザジが必死で指摘する、その視線の先に有るのは......
結界を解き、マネキンを受け入れる為に形状が変わった船の霊体の姿があったのだ!
「くっ......! ここからじゃ間に合わない! 」
悔しがるザジ、自身の不甲斐なさに嘆く。
だがここで突如新たな霊体の声が響き渡る!
「 天が呼ぶ! 地が呼ぶ! 人が呼ぶ!」
「ねぱたお姉さん! ここに参上おおお! 」
「「 このねぱたお姉さんに任しとき!! 」」
「 !? 」
突然現れた霊声の主に周囲の仲間が困惑する。
それは飛行船ドローンの上に居る、腕組みしながら様子を見る特撮フィギュア。
「え? ちょっと! どうしてここにねぱた姉さんがここに居るの!? 」
その存在にザジが驚愕している。
そして声の主、ねぱたが語る。
「今まで結界の殻に閉じ籠ってたって所やな! 殻にしてた結界を網みたいにして開いて、ウチらが攻撃が出来へん様にしつつマネキンも回収する......」
「ええ方法やけどな! 今のウチを妨害するにはちょっと無理あるで!」
飛行船ドローンも海に流した網の様に漂う、霊体の手が引っ掛かり移動が阻害される!
「うええ! ちょっとねぱたさん! こちらも身動きが取れませんよ! 」
飛行船ドローンの中でユナが砲撃をしながら現状に喘いでいた。
ここでねぱたが進言する!
「ユナちゃん! パルド、そのままやで! 今ええ角度やから、後ちょっと引っ張られるの我慢しい......」
そう言うとねぱたは、機会を待ってたのかタイミングを見計らい、飛行船ドローンを踏み台にしてジャンプした!
「うわあ! ちょっとねぱたさん! 」
大きく揺れる飛行船ドローン、それだけねぱたは勢いを付けてジャンプしたのだ。
「どんなに妨害が凄くても、マネキン入れるにはデカイ穴要るんや! 」
「ウチがマネキンを何とかしたるさかい!みんなでその穴に突撃しいや!」
飛び上がったねぱたの特撮フィギュアはクルリと一回転すると、キックのポーズを決めた!
「行くでえ! ええ角度や! 」
ほとぼしる霊力、退魔の力を纏わせて、今特撮のヒーローフィギュアがフィクションを超えて必殺の一撃を繰り出す!
向かう先は悪霊のマネキン!
「「ハイ! 」」
「「ファントム! 」」
「「フィニッシュ・キィィッーーーク!! 」」
その一撃は、正に流星一条!
漂う霊糸の網も諸ともせず!
易々と撃ち抜いて真っ直ぐにマネキンに飛んでいく!
「おおおおおりゃあああ! 」
マネキンの亡霊達もそのねぱたの突撃に反応し、バリアを張って防衛を試みるが......
ズドンと音を立て! ねぱたの勢いを殺せずに、バリアはあっさり撃ち抜かれた!
そして......! それと同時にマネキン本体に直撃!!
蹴り混むねぱたが、トドメの気合いをぶつける!
「「ブラスト・エーーーンド!! 」」
マネキンに叩き込まれたキック!
ねぱたの霊力スキルの、強度を軟化する霊力に加え、更に衝撃力を増強する霊力を加えると言う二重の荒業!
マネキンの胸部は、今!
マグナムに射たれたスイカのように!
歪な亀裂を走らせて、豪快に爆散した!!
「なんじゃ! あの馬鹿強い亡霊は! 」
頭目の驚愕がその豪快さを物語る、間違いなくこの場で現れた味方勢力最大の攻撃力だ!
爆散したマネキンは四肢がバラバラになり、最早見る影はない、内部に居た船の巨大霊体の骨の兵士達もバラバラに散って落ちていく。
「ムム! あれは! 」
ダニエルがその様子に注目した。
崩壊したマネキンの残骸から、多数の霊体の放出が確認される!
「今のマネキンの崩壊の後、船の霊体に囚われていた被害者プレイヤーの魂の一部が解放されたぞ! 」
「恐らくあのマネキンは魂の回収係で間違いはない、我々が結集した時点で、乗り遅れて居たんだと思う」
「 やったぞおお! 」
ダニエルの発言に前線のプレイヤーや、ザジ達にも驚きの声が聞こえる!
だがそれと同時にサーバーが複数に存在すると言う事実に、長期戦を予感させた。
「迷わず全員突撃だ! 送信先があのマネキンならすでに船に乗り込んだのが複数有るだろう! 」
そうダニエルが以前に魂の送信先を見た時に、船の巨大霊体に集束していた。
すでに魂の回収マネキンは複数乗船しており、遅れた一体が今ねぱたに破壊されたのである。
「チャンスは今しかないぞおお! 伏兵隊突撃! 」
霊体の手に囚われる戦艦AWAJISIMAの諭鶴羽コンテナが開く!
中から五体のプレイヤーが姿を見せた!
各々が突撃を開始、その中にはポゼ部の菊名の姿があった。
「戦艦娘AWAJISIMA!リフトアップ!」
それと同時にAWAJISIMAが変形し、戦艦娘モードが立ち上がる。
「キミが捕まりなさい! 一気に内部に送ります! 」
戦艦娘AWAJISIMAは右手に沼島ナックルを装備、そしてその沼島ナックルに菊名のフィギュアボディを捕まらせる!
「オッケー! ジョイント固定! 何時でも行けるわ! 」
沼島ナックルに接続される菊名のフィギュアのボディ。
戦闘機の様な羽根を意識したアーマーを広げてフライトの体制を示す。
「急ぐのじゃ! 何か攻撃をしようとしておるぞ! 」
船の霊体から霊力の集束を感じとる頭目が、船の反撃警戒を促す!
すると船の巨大霊体から幾つかの火の魂が放出される!
「人魂! いや亡霊の霊体?」
頭目含む全員が困惑していると、ザジが突然叫ぶ!
「それ(火の魂)に気を付けろー! 爆発するぞ! 」
「 !! 」
AWAJISIMAや頭目達前線の周囲に到達した火の魂は!
周囲にガラス片を纏い、まるで機雷の様に爆発した!
「うわ! 何よコレ! 亡霊!? 」
爆発はあちらこちらで起こり、戦艦娘AWAJISIMAも防壁が耐えられず、損傷が発生する!
「第二第三隔壁閉鎖、霊力漏れを許すな! 」
戦艦娘AWAJISIMAのダメージコントロール、だがここで時間を奪われては乗り込むチャンスを逃してしまう!
「行きなさい! キミの友達が待ってるはずです! 」
戦艦娘AWAJISIMAのAI「イザナギ」が菊名に語りかける!
「送ったらすぐ逃げてよね! ......何時でもいいわ! 」
AWAJISIMA内部のプレイヤー達(修験者)は銃を持つようにして標準を構える。
「標的をロック! ナックル発射ッ!! 」
戦艦娘AWAJISIMAが必殺の拳を構える!
沼島ナックルには接続された菊名のボディ、目の前には船の霊体のマネキンが通る筈だった結界の穴!
今、希望の拳が打ち出される!
「第三! 艦橋! 」
「ロケットパーーーーンチ!!! 」
沼島ナックルの内部の圧縮空気が解放される!
「やああああああ!」
接続された菊名のフィギュアのボディが、その射出の勢いに激しく軋む。
いく先々には火の魂の機雷が!
だがその機雷の爆発は遅れて発生し、爆片には晒されず突破!
爆発の衝撃に揺らぐ菊名のフィギュアボディ。
菊名が大きく叫ぶ!
「愛華あああーッ! お願い! 私に力を貸してええええ!! 」
少女の祈りの突撃は、今。
巨大な船の霊体の防壁の穴を抜けて!
沼島ナックルと共に。
巨大霊体の内部に突き刺さったのである!!




