八話「式神」
続き
「おのれええ! 、魑魅魍魎相手に撤退など陰陽道を行くものとして我慢ならん! 」
黒服達の車の中では頭目の女が暴れていた、プライドが許さないのか状況からの撤退を余儀無くされている事が気に入らない様だ。
「頭目様、このまま追うと例の進入禁止地帯に入ってしまいますし......」
「何を言う! 車はまだ潰れとらん! ぶつけてでも止めるんじゃ! 」
頭目が怒鳴りぶつける様に指示を
飛ばしていると、助手席の黒服が外の様子に目を丸くしていた。
「!? 」
車の外左側に何か飛んでいる、ドローンの様である。
「頭目様、あ......あれは?! 」
助手席の黒服の目に写ったのは、バギーの様な外見でタイヤの代わりに付いた大きめのプロペラで飛ぶレーシングドローンと、それに乗ったロボット騎士のプラモデル。
つまり先程にドローンに乗って黒服達の車へ飛んでいったザジである。
「は......はあ?!なんじゃこれは! 」
目の前に現れたのは玩具のラジコンとプラモデルだが、頭目の女にはプラモデルの後ろに浮かぶ少年の亡霊であるザジの本体も、はっきりと見えていた。
「こやつが! こんな奴等が! わらわ達をここまで翻弄した相手じゃと! 」
頭目の顔が強ばる、相手がどう言うものなのかはっきりと確認されたからだ!
そして悔しさ溢れる彼女の闘志が最高潮に達する!。
「″鳳″! 急急如律令! 」
頭目は懐から式神の札を出して呼び出す、以前の紙の鳥よりしっかりと鳥の形をした霊体を持つ紅い炎の式神である!
「こんな玩具相手に勿体無い位の式じゃが、もはや勘弁ならん! 捻り潰してくれる! 」
頭目の女は剣印を結んで式神を操作、紅い炎を纏わせて式神鳳はザジを捕らえるべく突進する!
「うおお! なにコレ! フェニックス? 今ちょっとカスったけど何か熱いぞ! 」
その突撃はザジのプラモデルの盾に受け流されるが、すぐさま反転して再び襲い掛かる!
プラモデルの盾の表面が焼けて少し白化していた。
「そんな柔いモノに憑いとるからじゃ!溶かして捕まえて祓ってやるぞい」
再び式神が突進を仕掛ける。
「成仏せいや! 悪霊退散! 」
頭目の操作する剣印に力が入る。
「イヤだね! 絶対御免被るよ! 」
ザジはそこではっきりと挑発的にも見える位拒絶して見せた、そして再び盾で受け流すと今度は盾の表面が更に裂ける様に溶けた!。
だが盾の表面が少し剥がれた先に薄いアルミ板が見える。
「ちっ! 耐えおるわ! 」
ザジはどうやらこういう状況に慣れている様子、戦闘用の仕込みが十分なのだ。
「盾なんだから頑丈に出来てる方が良いよね、むしろ脆いのはそちらの方じゃないかな? 」
式神が一撃見舞った後にザジのプラモデルが微弱に光る。
プラモデルの設定的なモノなのか体にはミサイルランチャー的なパーツが付いている、ザジはそこから霊力で加速した針を弾丸の様に撃ち出して反撃した。
「ぐう! こやつ妙に戦に慣れとる! 」
頭目の頬にみみず腫の様な傷が出来た、これは先程の攻撃が本人に当たった訳ではない!
式神の札に針の穴の様な裂け目が出来た反動による、自傷現象の様である。
自らの霊力を分けて造った式神である、操作中の反動は大きく分けた分強力であるのだ。
「こやつ札を直接叩きおったか、これでは此方が不利じゃ! 」
黒服達が頭目の傷を見て憤りを感じている。
「なんと言う事を......頭目様のお顔が! 糞! この悪霊め! 」
助手席の黒服がまだ持っていた拳銃を発砲! やはり的が小さい上に座席からの射撃では、標準も定まらない。
助手席の窓から身を乗り出すが......
「ザジ! あぶないで! 」
乗り出して撃とうとすれば、キャンパーから射撃が飛んでくるのだ。
ただし一部の射撃がザジの目の前を掠める。
「ザジ! あんま無茶すんなや! 」
ねぱた女史のAIMは相変わらずではあるが十分な威嚇には成っている様である、先程のフレンドリーファイヤーは置いといて。
「ねぱた姉さんなら致命的な誤射も有りうるな(白目)」
ザジは黒服の標準から反らせる為に激しく上下左右にドローンを操作する、万が一乗り出して撃とうなら針を飛ばして攻撃する構えだ。
決してねぱたの誤射を警戒している訳じゃないがそれを含めての行動だと思われる。
「今じゃ! 」
ザジに向かって式神が再び突撃を開始!しかし今度は盾を外して剣を構える!
「イカン! 」
ギリギリ剣の間合いに入る直前で、頭目は式神を方向転換。
「甘いな! ドローン剣からは逃れられない! 」
このザジの剣術(?) の間合いはその頭目の予想を上回っており、ドローンを使った剣術は札を掠めた。
「ぐあ! またしてもこやつ! 」
再び札が裂ける、頭目の手から出血がある。
現状ザジ優勢の状況が続く。
「さてとそろそろコイツを使いますかね? 」
ザジはいわゆるビームライフル的なパーツを腰のマウントパーツから外して、霊体の手を使ってプラモデルの手に装備する。
「そんな銃役に立つか!次こそ…!」
頭目の女は再び式神を操る、剣術を警戒していたが武器が代わっている今が好機と感じたのである。
だがその後のザジの行動で状況が一変する。
「まさか! 」
ザジが装備したビームライフル的なパーツの先端に何かが付いている!
「さてと、幕引きしようか! 変な鳥を操る人! 」
ビームライフルパーツの先端には先程回収された9㎜の実弾がくっついていた!。