七十三話「アカウントハック」
二依子と愛華の様子に驚愕する暇もなく、ビル全体で停電が発生する!
非常灯が付き薄暗い状態になっても尚、夥しい昏倒したプレイヤーや参加者、運営チームや観客が絨毯になったかの様に倒れており以前として異常な光景が並ぶ。
「これは! 」
ザジと菊名が周囲の様子を確認すると、バトルの中継に使われているアプリの画面を移したキャストモニターの様子に異変を感じ取った。
「なんだこの画面?! 」
その画面はアプリの憑依モードの画面である、モニターされたのはエミュレーターを通してPCで起動した憑依アプリのものであるが。
バグったゲーム画面のように小窓が重なり小さな文字列がアプリ表示の上に立ち並んでいた。
ここで慌てて二依子のスマホの画面をザジが確認する!
「同じ画面だ、二依子のアプリ画面にもこの文字列が出てる! 」
「愛華のスマホも同じ状態よ! こんな画面は見たことないわ! 」
アプリに重なる黒いDOS画面に浮かぶ不気味なポゼッションコード!
いくつもの文字が並び不気味に綴られる様子に確認した菊名が騒ぐ、ダニエルも驚愕しながら見ている様だ。
「まさかアカウントハックか! セキュリティを内側から突破するように仕込まれている! 一体いつからなんだ! 」
近くにそのPCがありダニエルが霊体の手で操作しながら状況を確認した。
そうダニエルはアプリの仕様に誰よりも詳しいはずである、だがアプリの開発者は元々亡霊になったプログラマーであり、書き込んだコードの中にダニエルも気が付かない細工をしたと考えて良いだろう。
「ハックしたのは解るが起動したモードが憑依モードなら、憑依するボディは一体何処だ! これだけの人間の魂の数何処に運び込まれているって言うんだ! 」
ダニエルが荒々しくキーボードを叩きPCに問いかける、だがダニエルの問いかけにPCは答えない!
「送信先、つまり憑依モードによる魂の憑依先は近くにあるはずなんだ!憑依モードの到達時間が短い所から遠くのものに憑依していないはずなんだ!。」
PCの前で憑依したアーミートイボディのまま項垂れるダニエル、ここで二依子の鞄から出てきたユナが顔を出す。
「遠くの物体に憑依出来るシステムがちゃんとあるんだ......」
何か考えている様子のユナ、だがここでユナの霊体を形成している「札」が急に振動を始める!
(え! ......これって! )
それと同時に地響きのような霊力の波が周囲に響き渡る!
「ああ! この感じはまさか! 」
ユナの驚愕にザジも察する!そして窓を探すと、飛んで張り付く様に外の様子に釘付けになった!
そこには......
巨大な光る船!
クラゲが泳ぐのように空中をゆっくり進む。
その姿は神話の神を運ぶ、天の鳥船か......
はたまた死人の魂を運び、地獄に誘う死爪船か......
突如ザジ達の前に現れたソレは!
沢山の霊糸を手繰り、魂を集めて輝きを増し始めていた!!
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場所は変わり地下駐車場、ここでは倒れたKIRIKU弟の様子に慌ているKIRIKU兄のプラモデルでの姿があった。
「弟よどうした! 何があった! 」
そんなKIRIKU兄の目の前に、ヒドランジアチームのプレイヤーが立っていた。
「おい! 頼む救護班を呼んでくれ! 」
KIRIKU兄はヒドランジアチームのプレイヤーに駆け寄る様に近寄るがそこで......
「おい! 何だよ! 何で何も言わないんだ! 聞こえているんだろ! ......ってうわ!! 」
KIRIKU兄の問いかけに対しヒドランジアチームのプレイヤーが急に襲いかかった!
足で踏みつける様にしてKIRIKU兄のプラモデルのボディを潰そうと動き出す。
「ワオン! (危ない! )」
メンテナンスボックスから突然!犬型のロボットプラモデルが飛び出して来る!
けたたましく吠えながらヒドランジアチームのプレイヤーに飛びかかり爪を振り下ろす!
「 ! 」
そう......そこに現れたのは、ザジと同じキャンパーのメンツである犬霊「よしこ」である。
「姉さん! すいません助かります! 」
「ワオンワオン! (あなたは下がりなさい! )ワオンワン! (あいつを良く見て)」
よしこが攻撃をしたヒドランジアチームのプレイヤーに視線が集まる。
被っていた雨合羽の固定していたボタンに、よしこの爪が当たりハラリと落ちると。
月明かりにその異様な姿の全貌がはっきり見えてくる!
「コイツ人間じゃなかったのかよ! 」
驚愕するKIRIKU兄、雨合羽の下にあったその姿は人ではなく可動の改造が施された……マネキン人形であった。
「ワオンワオンワオンワオン!! (霊体の気配がこのマネキンの中から沢山感じる!! )」
よしこに気付かれた事が癪に触ったのか、マネキンボディが突如敵意を見せるように吠える。
その声は人の声と言うより鳥の威嚇にも似た甲高い霊声だ。
「うわ! 何だよ! コイツも亡霊なのか!? 」
たじろくKIRIKU兄、ここでマネキンが急に腹部に手をかけると、抉じ開ける様に腹が開く!
中からゾロゾロと鳥の骨で出来たの様な小さい人形が数体出てくると、それぞれが武器を持ちKIRIKU兄とよしこに襲いかかった!
「ひい! 来るぞ!! 」
KIRIKU兄の叫び、それと同時にマネキンは背後の闇に消えて、何処かに去ってしまった。
足元にあったヒドランジアチームの赤い魔改造プラモデルも、いつの間にかそこから消えている......
「ワオンワオン! ワオンワオンワン(逃げるわよ、今の状態じゃあスキルも満足に使えない! )」
「そう言えばアプリのロックが無かったら、姉さん達亡霊は素でスキル使えるんでしたね」
KIRIKU兄は意外にもここで冷静になっていた、もしかしたらアホ兄は演技かもしれない。
「弟よ! 暫しの辛抱だ! なんとかして戻してやるからな! 」
追いかけてくる鳥の骨人形を引き寄せるかの如く、KIRIKU兄とよしこは非常階段を登って行った。




