七十二話「異変」
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数分前に時間が戻る。
会議室とは別のバトル会場である地下駐車場、そこにはバトルの開始を待つチームの姿があった。
ヒドランジアチームとKIRIKU兄弟チームである。
KIRIKU弟(序列9位)が先に憑依状態になった兄(無害王子)のサポートを準備しており、アプリの起動したスマホの画面と悪戦苦闘している様だ。
対するヒドランジアチームは姿は見せたものの、隠れているのか眼前には居ない。
「兄貴、もうポゼ部の奴等がバトル始めてる、俺達もすぐ始めるぞ」
「ああ弟よ、こっちも準備は万端だ、助っ人の姉さん(あねさん)の調整の準備はいいか? 」
今回KIRIKU兄弟は助っ人を呼んで人数枠を埋めた様で、助っ人らしき存在が待機しているようだ。
「姉さんはそのメンテナンスボックスからまだ出ないでくれ、戦力はギリギリまで秘匿にしたい」
KIRIKU弟の策略だろうか、助っ人の存在を相手には隠して温存するのが得策と見ている様だ。
「......」
ボックスの中の"姉さん"は了解の返事のようだ。
「ポゼ部のモニターはどうだ? アイツ達勝ってるか? 」
中継ではザジが圧倒している姿を見せてる様子。
「こりゃ決着も早く付きそうだ、兄貴、タンクの予備の確認をしてくれ」
KIRIKU弟の指示で新たに導入した、霊力タンクのカードリッジが使用可能な状態なのかの確認を、KIRIKU兄が行っている。
「準備は万端だ、相手チームの姿は見えるか? 」
するとKIRIKU兄弟チームの前に、いつの間にか相手チームであるヒドランジアチームが立っていた。
「さっきまでの何処かに隠れて見えなかったのに、急に出てきやがった! 」
現れたヒドランジアチームは、プレイヤーが相変わらず雨合羽を着込んでおり、全身を隠している様だ。
「......! 」
メンテナンスボックスの中で隠れてる助っ人の「姉さん」が反応する。
「どうしたんですか姉さん? ......え? 危険な臭いがするって?! ハハハそんな犬じゃあるめえし......って姉さんそう言えば犬でしたね」
「しっ! 兄貴! 軽々とそれを口にするんじゃあない! 秘密なのがバレちゃうじゃないか! 」
ヒドランジアチームのプレイヤーの足元にちょこんとロボットプラモデルの様なボディが置かれている。
「なんだあのプラモ、何か前衛芸術みたいな姿をしているんだが......」
ヒドランジアのプレイヤーの前に置かれている赤いロボットのプラモデル、その姿はもう別物と言っていい位の形状をしていた。
全身には古い携帯の内部回路等が張り付いており、異様に延びきった腕周りには電子部品のフィルムコード等で間接を形成した魔改造プラモデルである。
「モデラーとして許せない形状をしてるな」
そう言うのはKIRIKU弟、最早前衛芸術の粋であるヒドランジアのプレイヤーのボディに、嫌悪感を抱いているようだ。
「ゴングが鳴るらしいぞ! 弟よ出るぜ! 」
「相手は一体だけだけど、隠れている伏兵が挟み撃ちにしてくるかもしれないから気をつけてくれ"メインだけ兄貴"! 」
「ひでえや! (泣)」
そして遂にバトル開始のアラームが鳴る! 中継のドローンが周回し始めた。
「バトルのゴングが鳴ったぞ! 突撃だ! 」
KIRIKU兄弟の兄が憑依するプラモデル、ミリタリーな灰色迷彩が特徴のボディが足部分に付けたローラーを回して接近する。
対するヒドランジアの魔改造プラモデルのボディは、微動だにしない。
「先手必勝! 」
KIRIKU兄の迷彩色のボディがバズーカを持ち出すと、ヒドランジアの赤いボディに向けて射撃を行う。
弾頭から発生する物理的な爆発ダメージが赤い魔改造ボディを襲う、しかし強硬な電子部品の装甲にはダメージが薄い様で、効果が見られない。
「弟よ、スキルを使うぞ、序列14位の威厳を見せる時だ! 」
「......」
「どうした弟よ? なんだ? 」
KIRIKU弟に反応が無い。
「......! 」
メンテナンスボックスの中の助っ人「姉さん」が叫ぶ!
「離れなさい! 危険よ! 」
霊声が轟く中、KIRIKU兄は振り替えると。
そこには眠るように倒れた弟の姿があった......
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場所は変わって、ここはビル最上階にある決勝が行われる大型バトルフィールド。
ここには先に待機しているチームがあった。
ヴァリアント・ドーマンチームとAWAJISIMA チームである。
「お前達、セッティングじゃ! いいか! 」
「はい、頭目様、しかしゼンキの修繕はもう間に合いません、もう"あっち"を出すしか」
「仕方ない! ゼンキ(前鬼)は札を交換して待機、代わりにゴキ(後鬼)を出すのじゃ! 」
ヴァリアント・ドーマンの赤と白のボディに新たなパーツの式神が取り付けられる。
「ゼンキと違うてこやつは高機動型じゃからな、一度憑依してテストせにゃならん」
頭目は憑依状態になってヴァリアント・ドーマンを動かし始めると、ゴキの大型フライトパーツとドッキングしフライトテストを行う様だ。
「ゴキ・スピードスター・ブースターは正常に稼働しておる! 更に"鳳"との合体もテストするのじゃ! 」
「はい頭目様」
重接続により大型化したボディに慣れる為に、頭目は一度大型バトルフィールドを飛び回る事にした。
「先にフィールド情報にありつけると有利になるのじゃな、あの小僧には悪いがここは状況に甘えるとするか! 」
部下の黒服達と情報を交換しながらフィールドのマップを徘徊している頭目、その目の前に大きな飛来物が現れる。
「AWAJISIMAチームじゃな! 奴等も早々に準備してフィールド情報の確認をしておるのか、ワシらと同等じゃのう」
AWAJISIMAは完全憑依、戦艦モードの状態でフライトテスト、彼らもフィールドの大きさは気になっている様子。
「ぶつかる様なことは無いのじゃが、大きいのはお互い様じゃから気を付けんとな......」
会場モニターではポゼ部の試合が中継されていた、もう決着がついても可笑しくはなく、他の準決勝も始まった様で中継が騒がしくなってきたようだ。
「ヒドランジアチームの様子はどうじゃ? ......」
「......」
頭目は霊声で黒服達に返答を求めるが返事が無い。
「なんじゃ? どうした? 」
頭目は慌てて憑依状態のまま黒服達のいる場所に向かって旋回する、フワリと黒服達の前に着陸すると......
「おい! お前達! 何があった! ......これは! 」
黒服達はその場で全員眠るように倒れていた
「不味いのじゃ! これはまさか! 魂が抜けておるのか? 」
「一体なにが起きとるんじゃ! 」
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その時、ビル全体は未曾有の惨状になっていた、沢山の観客や参加プレイヤー達が廊下におびただしい数で倒れており、どんどん起きられる人がいなくなっている!
「緊急事態発生! 緊急事態発生! 」
「憑依状態のプレイヤーは憑依を解かずに待機をしてください! 」
突然!ビル全域にアナウンスが流れる!
「繰り返します、憑依状態を解かないで......下さい......」
アナウンスはここで途切れた、声の主はきっと運営の管理メンバーだろうか、声の主もまた同じように魂が抜かれた様で事切れてしまった。
「なんだ! 一体何が起こってるんだ! 」
バトルの最中だったザジや菊名、ダニエルCEOも混乱している!
「ルカ君返事をしたまえ! どうした! 何があった! 」
「CEO、ダニエル......憑依を解かないで! ......絶対解かないで......」
ダニエルの秘書ルカの声が途切れた!
「ヤバい! 俺達も待避するぞ! 二依子! この場から......」
「......」
「二依子? 」
ザジが振り替える。
「......まさか! 」
ザジがそこで驚愕する。
先程まで一緒に話しバトルをサポートしていた、二依子と愛華......
彼女らは事切れたかの様に、眠るように倒れていたのである。




