六十八話「青々花」
まとめるのに時間をかけてしまった
ナグルファルと巨大霊体、どちらも死に関する存在であり″船″である。
「続けます......」
愛華はここで更に情報をまとめる。
「センパイの事件以外での入滅者は何名か居るようで、菊名が聞けた情報もセンパイの事件以外の入滅者のご家族からです」
「その分秋山青々花の関係者はどれも家族の関係が薄い方が多いようで、余り話が聞けませんでした」
愛華はショボくれた顔をしている、嫌なモノを見せられた様な面持ちだ。
ザジがここで話を切り出す。
「二依子が出会って遊んでいた仲間たちは、あまり良い色の霊体をしてなかった、亡霊にも見て取れる位暗い色の霊体だったよ......」
「ワシらも秋山青々花で調べて、最初に出くわした情報が精神科のカルテじゃからな」
ザジの問いは頭目がその答えを知っていた、わざわざナースに変装してまで潜り込んでの成果であるらしい。
黒服達がこっそりガッツポーズ、ちゃっかり次回は巫女だのバニーだの準備を進めているらしい。
更にここで、頭目のイヤホンマイクから黒服達が重要な情報を頭目の口を通して公開する。
「その秋山青々花達の入滅は合同で行われた様じゃ、山奥に止めたワゴン車の中で睡眠薬を使って眠りながら死亡した」
「 ! 」
黒服達の情報網により二依子達には解らなかった詳細な情報が迷い混む。
「私は青々花にそれぞれ一人ずつ居なくなっていったと聞かされたけど、嘘だった......その時にはもう全員が自殺の準備始めていたのね」
「畜生、何だよそれ......その後必死だった二依子が馬鹿みたいじゃないか」
二依子は項垂れた表情を見せる、ザジもこの情報に怒りを覚えていた。
「そして私は知らずに居なくなっていったのを嘆いて、必死で憑依アプリで一緒に遊んだ場所を霊体の擦りきれる想いでみんなを探し回ってた......」
二依子の証言に頭目が語りを入れる。
「そいつらは宗教勧誘を行っていたサクラの様なもんじゃな、あえて数を減らしてお主を焚き付け煽っておったのかもしれん」
「結果、旧アプリの使用時間オーバーで肉体と霊体の垣根である軛を壊しかけて、一歩間違えたらお主は亡霊の仲間入りしかけたわけじゃな」
二依子がその事実に落胆を覚える、自信の何も見えていなかった事実が歯痒い。
「始めからそういうつもりだったのね......アプリの使用時間も聞かされてなかったし、ザジ君の指摘で霊体の垣根の事を知ったから」
旧アプリはあえてそう仕組まれていたと言う話があるのを思いだし、ザジはここで疑問に思う。
「二依子を亡霊にしてどうしようとしてたんだ? 」
ここで頭目は推測する、神話の観点での巨大霊体の位置付けは正しく神格を問うモノであると、そして古代の神々と言えば付いて回る理。
「生け贄かもしれんな」
「 ! 」
ザジは直接巨大霊体に会合した時の様子を思い出す。
「取り込まれた魂が意志を失って内部で燃料みたいになってたのを見た、地獄みたいだった......あれが生け贄ってのならもっと″沢山″要るわけだが」
「愛華」
「うん......」
愛華と菊名がここでコクりと頷いて全員に資料を見せる、それには数々の被害者リスト。
ソコにはアプリ使用者がそのまま未帰還者となった人のリストでもあった。
「ここにあるのは、とある別の未帰還者十名の日付とリスト、全て同じ日にアプリの長時間使用で、未帰還になってるの......これには秋山青々花の元々の仲間は含まれて居ない」
「 !! 」
二人の情報の公開は二依子を十分に驚愕させた、そしてこの事実はある見解にたどり着く。
「なるほど......当時の二依子と同じアプリ依存者を一斉に煽って、本人の気付かぬ内に亡霊にして生け贄にしたと見ていいのう」
頭目は冷静に回答する。
「やっぱりザジ君に出会ってなかったら今頃は......」
二依子が騙されてたと言う事実の悔しさ、唇を噛み締める表情は悔しさと言うより悲しさである。
愛華が語る。
「センパイは、ここには居なかったかもしれませんね」
「......」
ここで頭目は二人、つまり菊名と愛華に対し唐突に問う。
「しかしまあ、お節介にしては良く事件を調べておるのう、お主らは本当に″タダの部員″か? 」
頭目の視線が愛華と菊名に向けられる、二依子もその問いの意味に気が付き困惑と不安の眼差しを二人に向けた。
「え? え! 」
まさか二人も何か裏があって自分の事を調べている?そんな疑問と恐怖が二依子の心を揺らぐ。
「......」
愛華と菊名は沈黙の後、菊名がこう答える。
「はい、私達はタダの部員です、何て事もない普通の後輩です」
愛華は曇りのない笑顔でこう答える。
「私達だけでポゼ部は成り立たない、センパイが居てのポゼ部ですから、この小さな何て事の無い楽しい一時が守れれば私達は......」
二人の声が重なる。
「「 探偵でも何にでもなります! 」」
二人の発言の後、頭目が立ち上がる。
「くははは! これはたまげたのう、たわいもない日常の護り手か、学生らしいのじゃ」
そして頭目は立ち上がると部室の出口に向かった。
「そろそろ雨も上がる頃じゃ、教師達に気付かれん内に帰るとしよう、良い証言も聞けたわけじゃしな」
「頭目さん......ありがとう」
二依子は微笑んで頭目を見送る準備をする、教師達も侵入者の捜索を諦めたと踏んでの事だ。
「 ! 」
だが......
ここでザジが何かを感じとる。
「何だ? この気配は亡霊? 生き霊? 何処か近くに居るぞ? 」
プラモデルのボディで窓際にへばり付くと、外に見える雨の校庭に感じる気配に気が付いた。
「どうしたの? ザジ君」
ユナが尋常じゃないザジの行動に驚く。
その場にいたポゼ部、帰ろうとしていた頭目も校庭の中心に見える気配のの正体に注目する。
「誰か居るぞ! 」
全員の視線の先、校庭のど真ん中に人影が見える。
その姿は雨合羽で覆い隠され、フードで顔も良く見えない、若い女性の顔らしき輪郭が微かに見える程度だ。
二依子が窓を開ける、そう......間違いないと見た彼女は、踵を返して部室から飛び出し、校庭に向かって駆け込んだ。
「待て! 待つのじゃ」
頭目の制止も聞かず、校庭に出た二依子が叫ぶ!
「青々花! 」
だが校庭に出た途端に彼女の姿は忽然と消失した。
まるで幻でも見た様な顔の二依子だったが、校庭の真ん中にあった痕跡を目にする。
「これは......? 」
それはやけに軽く残った裸足の足跡だった......




