六十六話「天敵」
やや遅れ気味ですいません
木で出来た札......つまり年代的にかなり古い代物であると推測される。
ザジはカンチョウの考察を思い出す、読んでいる方も思い出してくれたら幸いだ。
「カンチョウの推測で奈良時代位だとか言ってたな、良くわからないが......」
ここで頭目は腰に手を当てて偉そうに語る、歴史にやや詳しそうなドヤ顔である。
「古いシャーマニズムの終焉の時代じゃ、それ以前の時代にしか無いような呪術の類いがお主の札の元になっとるんじゃな」
「でもどうして式神の札に? 」
ユナは困惑したまま頭目に問う。
「わからんのう、等の昔に失われた呪術を式神の技で再現したかったのやもしれん」
「一体なんの為に......こんなものを作ったんだろう」
暗い面持ちのユナを見かねてザジが、ここでバトル報酬の「彦名札」の事を思い出し話題をそらす。
「あの報酬の札もそうなのか? 」
「わからんのじゃ! だからワシら参加しとるんじゃろう? 」
「そうだけど......」
その通りの返答にザジもぐうの音もでない。
「ええい! 辛気臭いのじゃ! お主らもっと良い質問せんか! 続かな過ぎて見ておれんのじゃ」
ザジはやきもきする頭目に「最も聞きたい事を」を問い掛ける。
「埴輪の事を知ってるって事は、あの″巨大霊体″も何か知ってるって事だよな」
「そうじゃな......」
ザジの荒ぶりたい気持ちを抑えた声に、頭目は反応し答える。
「いいか、お主ら亡霊共が遭遇したのは、ワシら陰陽師でも千年に一度出るかどうかの大災害級霊体じゃ! 」
頭目が椅子に座ると、スマホ片手に画像を出して説明を始めた。
魔境と化した廃村の画像や、記録のスクリーンショットをザジ達に見せる。
「 ! 」
「亡霊のお主らがコレを見たところで、機密であっても御咎め無いじゃろ」
「まさかコレ、俺達の居た廃村......! 」
歪な赤い色の霊界に成り果てた廃村を見るザジ、襲われて脱出した時に見たあの巨大霊体の″結界″を再び思い出させる。
ザジはあの戦いで聞いた、霊国の主が自身の国をこう呼称していたのを思い出す。
「アイツが言ってた、自分等の事を″根の国″って......」
「ほう、奴等はそう名乗ったのか! 自らを根の国(冥府)として語ると! 」
このザジの反応に頭目は笑う、だが急に開き直る様に真剣な顔になり、ザジのボディ(プラモデル)にデコピンする。
「 ! 」
「いくら強大な霊体であっても、あんなものが冥府で有るものか! ここは神話の観点で見るのではなく歴史的な観点で見よ! 」
頭目はザジのボディ(プラモデル)を手に乗せて語り出す。
「昔の王君などが生前葬をしておるじゃろ? 秦の始皇帝みたいな豪勢な墓を先に作って埋めて置くという奴じゃ」
「あれは死後の世界でも自分の国を、冥府で見せつけられる権力を主張したモノじゃ、死ぬ前からあんなん用意しとるのは他の国の王でも見られるじゃろ? エジプトのピラミッドとかな」
頭目はザジを再び机の上に置き、座りながら腕を腰に手を当てて胸を張って語る。
「つまり同じ様な事をして、そのまま亡霊を成し、生け贄等で亡霊集団を形成したとなれば、奴等は神話の冥府とかではなく! 」
「人為的又は霊為的にそうなるように呪術で作られた″自称根の国″じゃ! 」
「そもそも根の国と言うのは人の国として実在してた説が有るんじゃが、そこはワシらの知るよしではない、じゃがお主らにとってあの根の国は......」
そう、ザジ達にも薄々気が付いていた、巨大霊体の中で蠢く囚われた亡霊達の姿。
魂を取り込み、霊体を捕らえ、化石燃料の如く扱われ、従属したものを兵士にして扱い棄てる。
その行いはザジ達にとって忌むべき行為であり、自身のそうなった時は成す術がない。
「......″天敵″......」
ザジがはっきりその意味を言葉にした、その存在は正にソレであると。
「その通りじゃ、あやつはお主ら亡霊を木から落ちた果実にしか見えとらん、今の殻を失ったら有無言わず食われるじゃろう」
「そんな! 」
頭目のその答えにユナが呆然としている。
「ワシら陰陽師も最早数少ない、災害級の霊体には鎮める方法も定まらん、周囲の亡霊共を食い荒らして再度地霊として沈んでもらうまで待つしかないのう」
「それじゃあまるで、エサを求めて山から下りてきたクマじゃないか」
打つ手のない陰陽師にザジも率直な言葉が出た。
続けて頭目は語る。
「その例えは理にかなっとるのう、地の底で未練の強い死者の魂が沈むのを待っとったのに、今の時代中々そう言う死人が沈んで来ないので地上に上がってきたと言う説が濃厚じゃからな」
ザジはその話の原因に覚えがあった。
「近年の亡霊の増加、俺達みたいなボディ持ちになってセカンドライフを謳歌してる奴等がいるって話が有るんだが」
ザジの覚えに頭目はここで驚く気配は無かったが......
「お主ら亡霊が増えとるのは解るが、じゃが奇跡的じゃなければ何じゃ? 作為的か? 」
頭目もザジもユナも二依子も、ここで急に思い当たる節に気がついた。
そうその″作為的″に亡霊が増える方法、それはすぐそこに在るのである。
「憑依アプリ......」
空模様が怪しくなり、夕立が降り始める、まるで今のザジ達の様子を表すかのように暗雲が立ち込めていた。
頭目がメールを確認する、宗家から送られてきたメールには、作為的に亡霊を増やす存在を示唆する事が書かれていた。
「天国を語る新興宗教やらが、近年信仰を集めておる、今回ここに来たのもその関係者の情報を探しての事なんじゃが......」




