五十五話「みちよちゃんクライシス」
霊体とか魂とかの補足をまた考えます。
場面は変わり、ここは近所のビジネスホテルの一室。
ベッドで上着を脱いでラフな格好になった幼く見える成人女性いた。
それはヴァリアント・ドーマンを使って派手に亡霊戦車と立ち回った、陰陽師の頭目である。
プラモデルの入った回収BOXから、ヴァリアント・ドーマンを取り出して破損部分等の改修を行っていた。
作業中にドアからコンコンっと、ノック音が聞こえる。
「入れ、空いておる」
ドアが開く、黒服達が三人入ってくる。
(ちなみに黒服達はそれぞれ名前があり、斎藤、大谷、小笠原となっている......肩強そう)
「失礼します頭目様、......御夜食です」
黒服達がコンビニで買ってきたスナック菓子やチューハイが入った袋を持ち運び、テーブルに置かれた。
「おお気が利くのう、お前らは引き続き情報の収集を頼む。」
「はい畏まりました、あと陰陽宗家の方から動きが有りまして......」
黒服の言葉に頭目が耳を傾ける。
「ほう......例の奴等の尻尾は掴めたか」
頭目がスマホを持ち、メールアプリを開く。
「天国教か......他の新手の信仰集団じゃな......」
「少なくともこのご時世、金蔓共が″目に見え始めた死後の世界″に無駄金入れるとか......世も末じゃ」
黒服達が資料を出すと、プロジェクターを設置し始めた。
灯りを消して資料写真を写し説明を始める。
「先日、噂に聞く存在が明らかになってきたと報告が有りました」
「例のガス事件で廃村になった場所が、異様な霊力の集積地点となり......」
「″魔境″と化しているとのこと」
黒服達の資料には、キャンパーメンバーが停泊し巨大霊体と交戦した......
あの廃村が写し出されていた。
「周辺を捜索した協力会社の調査員が、襲われて仮死状態で例の病院に収容され一命はとりとめたとの事」
頭目が眉間にシワを寄せて言う。
「まったく、陰陽師も堕ちたもんじゃ、民間の調査会社の協力無しじゃ何も調べられんとは」
「仕方ありません、人手が足りませんから......」
黒服達も呆れた顔を見せて答える。
頭目が声を上げて言い放つ。
「そもそも陰陽師も僅かな古参しか居らんのに! 」
「千年に一度出てくるかも知れん様な、災害級の亡霊なんぞ相手に出来るか! 」
黒服達は宗家から来た伝聞を読み上げる。
「古より現れし″地霊″の出現に伴い、それに組いる信仰集団の存在に気を付けたし......との事」
頭目はプロジェクターの使用で暗かった部屋の灯りを付けて、再びプラモデルの補修作業を始めてから言う。
「亡霊まだしも人間相手じゃ特に無理じゃな、......適当にここで面白い遊びで暇潰すんじゃ」
チューハイの缶のタブが開けられ炭酸の弾ける音が木霊し、今日も頭目はチューハイが美味しい。
「ぬふふ......」
器用に箸でスナック菓子をつまみ、変な声と共に作業しながらチューハイのツマミにして貪る。
「ソレなんですけど、宗家奥方様が蔵を調べてカンカンに怒ってると言う報告が......」
頭目がその報告に、ギョッと目を見開き振り替える。
真っ青になり作業も止まる。
「 ! 」
「……去年宗家に嫁に出た姉上が!!? 」
頭目がワタワタとスマホの通話履歴を見ると、宗家からの着信が幾つも入っている。
「不味いのじゃ!! 上手くバックレるのじゃ! 姉上は古い人間じゃからメールやスマホもまともに使えん! 」
「電話が来ても出るでないぞ! 口裏を会わせて、ちゃんと仕事しとる様にして欲しいのじゃ! 」
黒服達もアワアワしながら打合せし始めると......
突然!! 窓から轟音!!
バーンと音を立てて!!
何かの飛来するモノが壁に突き刺さる。
無惨にも貫かれ砕け散る窓ガラス!
かなり分厚いはずなのに、飛んできた飛来物のパワーで紙のように破られたのだ!
「何じゃ! 」
壁に突き刺さる飛来物......
ソレは矢文だ!!
日本神話に矢を放たれた神が矢を投返し、遠くに居る放った本人に直撃する逸話が有るが。
正に勢いがソレで何十キロ離れた頭目の居るホテルの部屋に、正確に刺さる矢文が如何にも陰陽師の術のシロモノだと分かる。
「ひぃぃぃ!! 」
矢文にくくりつけられた紙を、恐る恐る紐解く頭目。
そこには......
みちよちゃんへ
蔵の刀と式神を
勝手に持ち出しましたね
許しませんよ
お姉ちゃんより
矢文に書かれたこれらの文字は、恐怖を煽るために呪詛のたっぷり込められた......
血文字で書かれていた!
「んぎゃあああああああああああああああああ! 」
頭目がのたうち回る様子に、黒服達もビックリしながら慌てふためく。
「不味い! 不味いのじゃ! 持ち出した正当な言い訳を考え付かんと、ワシは姉上に酷い仕打ちを受けるのじゃ! 」
頭目はよもや
「憑依バトルで無双するために持ち出しました」
とか言う訳にはいかないため、新しい言い訳を探す考えの様だ。
「ちなみにどんな仕打ちが待ってるんですか? 」
黒服が気になって頭目に問う。
「あの姉上は″頭平安時代″なんじゃ! 全裸で市中引き回しとか平気でやるんじゃぞ! 」
(......)
黒服はそれを聞いてちょっと創造力を膨らませて(?)ニッコリ。
「このド阿呆!!! 」
黒服の顔面に拳がめり込まれた。
「とにかくじゃ! 何か姉上に報告出来る良いこと無いかと、ワンチャンを考えるんじゃ! 」
ここで黒服はボソッと言う。
「ワンチャンなんて無いと思いますけどね......」
「そんなこと言わんで探して欲しいのじゃぁぁあああ! 」
情けなく部下に泣きつく頭目は、小動物みたいに見えていた。
「頭目様」
他の黒服が何やら報告をしている。
「何じゃ唐突に? 」
その黒服はタブレットを持ち寄って画面を見せてきた。
「前回の準々決勝でとあるチームに疑惑があるんですが......」
「何じゃ? 疑惑じゃと? 」
頭目がその報告に聞き入る。
「その試合中に、突然スキル管理者が意識不明になったチームが居まして」
「スキルが使えなくなった為に何もできず敗走したチームがあるんですが......」
頭目はスマホを取って、アプリを開いて聞き直す。
「勝った相手はどのチームじゃ......」
黒服がスマホを指差して答える。
「これです、このチーム! 」
その黒服が指差した先、そのチーム名が謎が多かったあのチーム......
ヒドランジアの色。




