三十六話「ここに!いるさ!(シルエット)」
「まったく宵越しの銭と言うのは大抵小銭が基本だ、無駄には出来ないのだよ」
カンチョウはリストアップした項目をモニターに出して意見を拾っている。
黒板のように掲げた液晶ディスプレイに予算案が出ていた。
そしてレストルームでは、ほぼ全員がボディから抜けて霊体のまま審議が進む。
まるで生きている時そのままを再現するように、レストルームの大部屋の内装も学校の教室セットを使用し……
尚且つ、みんなが姿を制服にイメージして学生に戻って気分的に堪能していた。
ねぱたがツッコミ始める。
「なんやみんなエセ学生過ぎて酷いやん、こんなん笑うわ! 」
それはもう学生服イメージだけがそのままなので顔やらは学生には戻れない、バラエティーの学生コント状態である。
「いやあキツいッス......カンチョウは教師でも良いのに何も合わせなくても」
「なにを言うのかねドク、お互い制服のイメージが古臭いじゃないか、ここはノリに合わせるものだろ?! 」
年長者の制服イメージが、やはり学ランな為に余計にコント感が否めない。
「ねぱたさんが完全にいかがわしいお店の人です......」
「なんでや! まだいける! まだいけるやろ! 」
ユナの視線にねぱたが怪しく踊る。
きっとMPが下がる。
「ねえ、俺ボディから抜けたいんだけど......」
ザジは何故かガールズプラモデルのままだ。
スカートのせいでやはりモジモジしていた。
「なに言うてんねん、ちゃんと制服着せてるやろ? 」
ねぱたの言う通りガールズプラモデルのオプションパーツ(制服)を着ている。
「いやだから......」
するとねぱたがザジのボディの肩を霊体の手で掴んで、耳打ちするようにささやく。
(なに言うてんねん、アンタはまだ昨日の傷が回復してへんやんか、まだその赤黒い霊体の尻尾切り痕が痛々しいわ)
ねぱたはザジの状態が気になるようだ。
やはり彼女の目は誤魔化せない。
カンチョウが再び予算案と購入備品の議題を掲示する。
「キャンパーの消費物のメインであるガソリンに至っては地下帝国での購入は可能だが、なるべく電力で移動し発電以外の使用は控えたい」
「今後の停泊場所までの移動を考えて備える必要がある訳だ」
ここでユナは新たに停泊場所を確保する必要があるという、現状に察する。
「追っ手ですか......」
そう、巨大霊体の戦いにより失ったのは備品だけではない。
″居場所″も失った訳である。
「約一年、あの廃村に住んでた訳だが結局追い出されたも同然の状態なのだよ」
フォッカーが観測報告を入れる。
「あの後で埴輪の追っ手を確認し破壊した、俺とドクで片付けたが今は廃村周囲にも止まれない」
「そんな......」
ユナは胸騒ぎがしていた。
「体の札が警告してるみたいに感じるんです、近くに居たらとても良くない事が起こる様な......」
暗くなっているユナに、ねぱたが割って入る。
「まあ暗なっても仕方ないやん、明るい方に行こう」
「ユナちゃん何か買いたいモノある? 」
ねぱたは完全に近所のオバチャンである。
「買いたいモノと言うより、クマのヌイグルミのボディを修理して欲しいかなあ」
元々はプライズの景品だ、そこまで乱暴に扱う事は想定していないだろう。
ユナがそう思っているとレストルームの扉が開いて、何やらボディの入ったコンテナが出てきた。
「大丈夫だ! ユナちゃんのクマはこの通り修繕が終わっている! 」
そう言っているのはドクだ、意気揚々とドクがコンテナを開ける。
そこには......
吹き飛んだ顔の代わりに、回転レンズスコープのメカニカルヘッドパーツで半分補われた顔のクマ! (むせる)
クマ手の左腕が特に意味無く義手に変更され、引き抜くと腕の形の大砲(サイ○ガン)が出てくる新ギミック!
補助パーツに連結アームが付いて、大型スラスターや連装砲などを装備するアタッチメントが追加された。
ついにフルアーマー熊がサイボーグ熊にクラスチェンジ!
「あああ......あああ......(白目)」
「早速入って確認してくれ!装備の使い方やらをレクチャーしよう! 」
ドクの薦めに応じて、ユナがサイボーグ熊に入ると......
「うあああああん!! (泣)」
隠しギミック腕大砲を腕を引き抜かずに発射し、ロケットパンチ!
そのままドクの霊体にツッコミの如く直撃!
「うおおお! ユナちゃん! 指じゃなく心で撃つのだよ! 」
ドクの霊体はぶっ飛びながらサムズアップの親指を立てていた。(ヒュー!)
「アハハ! もう完全に戦闘用熊やん! ウチからもパーツを足そか? 」
ねぱたは変身ベルトのパーツを出して来た。
「ユナは防御が薄いから......」
ザジは連結アームに覗き窓の付いた大型シールドを付けている。
「重いよ、積載オーバーだよ! 」
そうこう言いながらサイボーグ熊フルパッケージが完成する。
変身ベルトにダブルシールド、連装砲で強化され、禍々しい装いがトレンドの流行のスタイル。
「更に札が格納されている体内の箱も単体で活動出来る様に、小さな足が付いてるぜ」
「もはやファンシーなイメージがなくなってしまったな」
ドクの解説にカンチョウも呆れている。
「カンチョウ、言ってくださいよ!もうヌイグルミの熊と言う別の何かですよ! 」
カンチョウは、先の戦闘でのユナの様子を思い出して語る。
「武器はパイプ椅子にする必要があるだろう! あと禍々しいマスクに毒霧が吹ければなおのこと良し! 」
カンチョウのイメージのユナはプロレスラースタイルなのだ!
「うああああん(泣)」
あの戦いの後だ、みんなのイメージのユナは戦闘民族、ファンシーなクマではない。
完全に自業自得である。
******
「やっったあああー! あのオペレーターから来たあああ! 」
急にフォッカーが騒ぎだした!
「何かね! 急にどうしたのかね! やはりフラれたのかね! 」
カンチョウは自分で仕掛けといて酷い言い草である。
「なんや、やっぱり送っとたんかコイツ! 」
ねぱたも酷い言い草である。
「うるせえやい! 良いか! ついに最高の返信が来たんだぜ! 」
「どんな返信だよ」
メンバー全員が呆れながら注目する。
「いいか聞けよ......」
Re:今すぐにでもあなたに会いたいの。
山間の座標で待ってるわ。
「......ってさー、モテるなー俺ー! 」
その場にいたメンバーが凍りつく。
「絶対罠だー!! 」




