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走る方舟の憑依玩霊達(ファントムズ)  作者: 丸ーニィ
第二章三部 激突!!方舟対方舟編
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百二十六話「憑依バトルは永遠に不滅です」

 

「奴が見えなくなるまで離れていく......」


 鳥の巨大霊体がミサイルに追われ飛び去るのをパルドが確認、レストルーム内部は再び安堵のため息が溢れる。


 ボンボンと響く遠くでの爆発音......


 ミサイルが直撃したのか、振り切ったのかまでは確認出来ないが、鳥の巨大霊体が小さなレストルームを補足するのは困難な距離に達したと見て良い。


「こんなに離れればこちらにの補足も困難だろうよ、亡霊の俺達でも、感じ取れたとしても追跡には骨の折れる距離だ」


 パルドが親指を立てて逃げ切った事を皆に伝えた。


「逃げ切ったの?! やったあああああ! 助かった! 」


 ユナがクマから飛び出た霊体で、二依子に抱き付いたまま喜びの声を上げた。


「何を言う、ここから帰るまでが遠足だろ? 」


 フォッカーはそうは言うが、内心笑みは隠せない。

 パルドの安全報告が続く。


「GPS復帰確認、ミサイルの電波障害が無くなった、現在位置が判明! 」

「 帰れるぞ! 」


 レストルーム内が歓喜で包まれた。


 もし人が空を飛ぶならどうやって位置を割り出すだろうか?

 コンパスは必須だ、地図も必要だろう、昔の人も昼間は太陽の(サンストーン)や星の位置の観測等を用いて割り出していた。

 ザジ達亡霊もある程度霊力を感知出来るが、空の上では限られる。

 ザジ達亡霊にも空の上はGPSが必須なのである。


「会場からは大分離れてるな......全員霊力を振り絞れ! 海に落ちたら元も子もないぞ! 」


 眼下は海、ギリギリの霊力で落下傘の遊覧飛行を続け、ザジ達は気合いで帰路を目指す。


 それから奮闘する事、二十分。

 遂に、二依子が住んでいた街の上空にたどり着く。


「見て、会場のビルが見えてきた......あと少しだけど、私の霊力がもう無理ー! 」


「頑張れ! もうユナしか動けないんだ! 」


 ヌイグルミのクマ内部の"札"から霊力が振り絞られる。

 皆が必死で霊力を吹かしていたが続かず、最期まで霊力が残ったユナを励ますザジ。


「外の様子を確認するよ」


 レストルームの屋根で、ザジがガールプラモデルボディで外に出ての様子を伺う事になった。。


「あんまりレストルームのドアは長く開けるなよ、霊力が漏れるんだから、もうボディの無い俺には......隅っこで震えるしかないぜ! 」


 フォッカーが正座しながらガタガタ震え、事故物件の地縛霊みたいな顔をしている。


「今まで霊力で起こしてた電力、もうヤバい残ってない......俺のオリジナルボディは電子基板だから電力が無いと......意識が......ピピーッ! ガガガガ......」


 パルドが電力不足で、壊れたラジオのような不安定な状態に。


「みんなメチャクチャになってる......はっ! 二依子ちゃんは大丈夫? 」


 周りがこれだけギリギリなのだ、ユナは肉体がもう目の前まで来ている筈の二依子が、焦って飛び出さないか不安になったが......


「なんて事なの! ザジ君は女の子のプラモデルに入ったら、何気に内股を意識して足運びをしている......新規パーツはフリルのスカートで決定ね、ここで黒タイツの選択肢を考慮しなければならないとは......悩ましい! 」


 (なんか偉いことになってるー!)


 燦々と輝く新世界(ハロー・ニューワールド)の扉を開く二依子に、ユナは困惑した。


 レストルームの内部は亡霊という名の遭難者と、トリップ中の二依子が混沌を極めていた。


 そして......会場のビルが見える、日中空に居たザジ達には時間の感覚が無くなっていたが。

 舟の霊体の高高度上昇に二時間半位、落下は三十分も掛かっていない。

 成層圏からの落下は三分程で地表に着く、途中から落下傘を開いても長く時間は掛からなかった。


 

 そして......会場上空に到達。


「やっと会場到着だー! ......あれ? 」


 無事到着し、ゆっくり会場に降りていく。

 天井でガールプラモデルのザジが周囲を見渡す。


「周辺は騒がしいのに、会場は人影が無い......誰か居ないのか?」


 会場の外は警察や政府特務機関の陰陽庁が沢山居て、一般人の退去は終わっていたが......


「 ! 」


 誰も居ない筈の会場で、ザジ達の帰還を待つ者達が何処からか隠れていたのか、ぞろぞろと人影を見せ始めた!

 皆があの戦いで参加した憑依玩具戦線の一団だ!


「お帰り! 皆が君達の帰還を待ちわびていたよ」


 周囲のプレイヤー達を代表して、運営のダニエルが再び姿を現した。


「みんな......」


 ザジの喜びの声。

 会場の真ん中に、落下傘を付けたレストルームコアが着陸する。


「ちょっと小僧の姿がおかしいが......やっと帰って来たな亡霊共! 話に聞いておる、娘の肉体の方はこっちじゃぞ! 」


 レストルームから出てきたザジ達を真っ先に出迎えてくれたのは、仁王立ちの陰陽師の頭目だ。

 後ろから黒服が、担架に運ばれていた二依子の肉体を持ってくる。


「やっと二依子ちゃんを戻せる! 」


 レストルームから出てきたユナは、感慨深い想いで二依子の肉体を見ている。

 まだ肉体は眠っていたままで時間も短い為、生命維持の処理が必要迄には至らなかった。


「憑依アプリを止めるぞ、彦名札の準備は良いかのう? 」


「はい......」


 肉体に皆が入ったレストルームコアを近づける。


 頭目が印を結ぶと、レストルームから霊体が飛び出し、彦名札から二依子の霊体が離れ、霊力が霧散する事なく肉体に定着。


 そして彦名札は二依子の手に握らされる。

 ゆっくり二依子が目を覚ます。


「......私、体に戻れた......」


「「 センパイ!! 」」


 ポゼ部の二人、菊名と愛華が抱きついてくる。

 二人はずっと側に付き添って、戻ってくるのを待っていたのだ。

 頭目が彦名札を指差して言う。


「しばらくは肌見離さず持って置くと良いじゃろう」

「それでお主の霊体の修復が進めば、すぐにでもアプリが使える位に戻れるぞ! 」


「本当ですか! ありがとうございます! 」


 二依子はその言葉に驚き喜びの声を上げた。

 彼女は霊体と肉体の軛を欠損していたが、彦名札が定着と同時に修繕も兼ねてくれるようだ。


 大会運営のダニエルがやってくる。

 二依子やポゼ部に歩みより、大きく声を大にして語る。


「このエキシビションマッチ、優勝は君達ポゼ部で総意無いな! 」


 ダニエルの突然の発表に、ポゼ部全員が驚愕した。


「えええええ! 私達が優勝!? 」


 ザジや二依子、菊名や愛華がダニエルに駆け寄る。

 ダニエルとポゼ部はその優勝の経緯について話す。


「良いんですか? 本当に? 」


「当然だ、君達以外のチームはもう戦えないだろ、それにその優勝の景品の彦名札は、君達が必要としているモノだ、利害が一致する」

「プレイヤー達には改めてお詫びの配布を行う、だから......」

「改めてここで宣言しよう! 優勝は君達ポゼ部だ! 」


 集まった沢山の人々の祝賀の声が聞こえる。

 称賛の声が二依子の涙腺を緩め、菊名と愛華は嬉し泣きで抱き合っていた。

 救出と祝賀のムードが沸き立ち、ダニエルがこの場を次回の大会の宣伝を行い締めていった。


「......はい、こちらの救出は無事に終わったみたいなのじゃ、姉上。」


 頭目の携帯の向こうでは頭目の姉であり陰陽庁の代表、安倍みちかが部下に携帯の操作をさせながら報告を聞いていた。


「みちよちゃん......亡霊さん達にお礼とお願いを聞いてもらえる? 」


「ええ、N型巨大危険霊体の情報を聞き出して欲しいの......最悪の場合は彼等の参戦も要請してね」


「......そう、私達の戦いはこれからよ、総力を上げて打ち倒す、陰陽師の意地を見せないとね......フフフ」


「あと、" 倉 の 式 神 "の事で、聞きたい事が……" 沢 山 "ありますからねー! 」


 ブッツっと通話が切れる。


「ははは......(ヤケクソ笑い)」


 頭目の顔が真っ青になっていたが、気分を晴らそうと祝賀に混ざって行った。


「ワシも混ぜーい! 亡霊の小僧共! 次は勝つから覚えとけよおおお! ......後ちょっと聞きたいことあるんじゃ......」


 こうして表立った事件は解決に至った、天国を目指した亡霊教団、その成層圏での顛末。

 彼らもまた哀れな亡霊に過ぎず、残された者達もまた。

 新たな目覚めが待っているのである。


 ......そしてこの事件のエピソードには、まだフィナーレがある。


 徳島の剣山に墜落した鳥の巨大霊体は、再び動き出さんとしていたのである。


 舞台は再度......三日後に戻る。

 

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― 新着の感想 ―
二依子さんがザジくんのニューボディについてもうしっかり構想ができていそうで期待がめっちゃ高まります!! すっごく性能が良くて、しかもフリフリキュートだったら、ザジくんはそれに憑依してくれるのでしょうか…
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