百十八話「傍観者はかく語りき」
ちょっと早めに更新。
シラはその不可思議な霊体に問う。
「あなたは我々に、情報と技術を配信していた者に相違はない......呼ばせてもらう......」
「はじめまして、サテライトの送信者"アンキャナー"」
アンキャナー......それは教団亡霊達がサテライトの交信先に付けた造語である。
今回の作戦で使われたアンテナを、上空からスキャンする者を合わせた勝手な造語だが......
(その名は気に入った、そう呼んで構わない)
不可思議な霊体(以後アンキャナー)は大層気に入ったらしく呼ぶのを許可した様だ。
シラは戦いの結果を思い出し、気を落として言う。
「僕は彼ら(ザジ達)に敗北した......だがここに置いて、まだ天国に行ける一陣の光明があったとは驚きだ」
「私だけがたどり着いたのが悲しい......出来れば皆を連れて来たかった......」
アンキャナーは項垂れるシラを見て言う。
(......その君を倒した彼等、亡霊達なら問題ない)
(眼下で"ビースト"達が駆逐してくれるだろう......)
アンキャナーは表情は見てとれないが、安心しろと言わんばかりの落ち着きを見せる。
「 ? 」
そしてシラはその"ビースト"という初めて聞く聞き慣れない単語に、質問を投げ掛ける。
「ビースト? もしかしてあの舟を破壊した龍の......」
シラは崩壊直前までの意識はあった様で、舟が吹き飛ぶ様を思い出す。
(そうだ、君達には言っていなかったが、正確にはビーストというのは、君達が従えて乗ってきたあの"舟"も同じモノだ)
「まさか、各地で見られる巨大霊体が......」
(そうだ......"ビースト"だ......)
(正確にはあれを......)
( "アセンションビースト" )
(......と呼ぶ、我々が生成した"動物霊"の集合体だ)
「何故......そんなものを作ったんだ? 亡霊を食い荒らし、生きている人間の霊体さえも食らおうとする怪物だぞ! 」
シラはアンキャナーの回答に反応して、強く叫ぶ。
「あの危険性の強い霊体集合体、食われた研究者が困惑していた......何ゆえ存在するのかを! 」
シラは舟の霊体の制御にとても苦労していた様だ、作られたと知ると、正にその危険な本能の真意を問いたくなる。
(ふむ......まずは語らねばならないな)
アンキャナーはシラに語る。
(シラ、君達は"霊の世界"をどう理解している? )
シラが答える。
「霊の世界というのは? 亡霊の世界や、死後の世界とかそういうものかい? 」
シラの返答にアンキャナーは答える。
(そうだ、君達の世界はとても"霊力"が溢れている)
(それは霊力そのものが"人間"から放出されているからだ......)
(霊界つまり霊力世界は、守護霊や先祖の霊その転生の輪廻まで、全てを賄う霊力が"人間"から産み出されている事で共存する)
(これらの相互関係が太極図の様に、生と死の循環をもたらしている)
アンキャナーはモニターの様なもので、巨大霊体の様子を映し出して語る。
アンキャナーにシラは問う。
「なるほど......だがそれがビーストと、どういう関係を持つんだ?」
アンキャナーはシラの問いかけに、何の躊躇もなく「即答」する。
(ビーストはこの関係を......)
(貧食の本能で、食いあさり破壊し......)
( 人間を覚醒へと促す布石となる為の"高次元霊体"である......! )
「 !? 」
シラは、アンキャナーが語った答えに驚愕する。
そして......
彼は察してしまった......
彼の言動は全てに置いて、世界の"外側"から視ている物だと!
完全な世界の"外来者"の声であると確信したのだ......
続けてアンキャナーは語る。
(ビーストのモデルとなったのは、人間の"亡霊の集合体"だ......)
(何処かで現れたという、古代の亡国の集合亡霊達、あれを参考にして作った)
(彼等を解析した所、再び空に上がり霊力世界に舞い戻り、都合のいい輪廻転生を手に入れて......)
(国ごと再生しようと模索していたらしい、古代の人はつくづく傲慢だ......)
アンキャナーが空間に、記録映像を写して言う。
(天(霊力世界)に上がる習性と、君達の天国に行きたいという"利害の一致"でここまで来れたのだ......)
(鳥型アセンションビーストには、感謝してあげるべきだよ)
モニターされた映像には、教団亡霊を口に咥えて、彼方に飛び去る鳥の巨大霊体の様子が映り......
シラは嘆きの表情を見せる。
「僕はただ......皆と天国で、世界から独立するためにここまできたのに......」
霊体に涙、彼は自信の無力さに苛まれる。
いや、彼がそう言う人生だったが上で世界からの独立を望んだのかもしれない。




