頑張りません!
「も、もう勘弁してくれ・・・ください・・・」
「寝るにはまだハエーんだよ!立てコラ!」
ガゴォン!
「すっご!今ぶっ飛ばされて空中で一回転しなかった!?」
「んなわけーねーだろwでもやっぱスゲェな!リョウのやつは!パないわ」
「なー、敵には回したくねーなw」
二人は笑いながら殴られ続ける男を見ていた
「あ・・・あがっ・・・反省してます・・・だから許して・・・」
血だらけになりながら必死に命乞いをする男
それはそうだ、もう2時間近く3人の若者に殴られ続けているのだ
さすがに殺されることは無いだろうとタカをくくっていたんだろうが限界が近づいているようだ
「あぁ!?テメェ達に殺された女の子だって命乞いはしただろう?」
「悪は滅びるしかねーんだ!あ、でも勘違いするなよ?俺たちは例外な」
バキッ!!
リョウは殴りつけながら男に語りかけ続ける
「あー、俺たちはアレだ。どっちかって言うと正義側の不良だ。わかる?オッサン?」
オレの名前は鈴木俊介、んで隣にいるのお調子者が前島裕也
そしてあそこにいる筋肉バカがオレ達のリーダー瀬川 良
なんでオレ達がこんなことをしてるかって?
それはオレ達が毎日毎日ケンカに明け暮れ、街の不良どもと小競り合いを繰り返していた一ヶ月前に遡る
── 7月○日 ──
滝山商業高校ほど近くのコンビ二前
「あっっちー!!暑すぎる・・・ユーヤぁバリバリ君買ってきて」
「はぁー?なんで俺がお前のアイス買いにパシられなきゃいけねーんだよ」
「つーかすぐ目の前なんだから自分で買いに行けよw」
オレとユーヤは学校の目の前まで来てるにも関わらずあまりの暑さで学校に行く気すらなかった
コンビニの駐車場の車止めを枕代わりに寝転がって照りつける太陽、雲一つない抜けるような青空の下とりあえずリョウを待つ事にした
「やああああっと見つけたぞてめえええらあああ!」
日除けにしていた顔に乗せている漫画雑誌をどけるとそこには浜北高の連中が4人ほど集まっていた
「なんだお前ら、なんか用か?」
「当たりめええだろおおがあああ!よくもうちの安雄をやってくれたなあああ!?」
こいつは確か浜北の大沢、こんな小物臭出してるけどナンバー2っていうね
もはや怒りで感情が極まってるのか何を言ってるのかよく聞き取れない
相手にするのも面倒くさいパターンってやつ
「あのボケが勝手に突っかかってきたんだろうが?」
2対4かー、いけそうだなこれなら
そして行くぞ!という感じの目配せをユーヤにした
「オメーら昭和のヤンキーかよw古いんだよバーカ!」
ユーヤが無駄に煽る、毎回いらんことを言うんだコイツは
何度オレとリョウがしなくても良い無駄なケンカしたことか
そしてあっという間にお互い顔を限界まで近づけ一触即発な雰囲気
サーッと血が引いていくのがわかる
これは怖くてっていうんじゃなくて頭の中が冷静になっていきクリアになっていく
理由ははわからないが小さいときからケンカする時はそうだった
まぁ他のやつがどうなのかは知らない
とその時
ウィーン
「ありがとうございましたー」
ゾロゾロと高校生が店から出てくるのが見える・・・見えるな
浜北の制服着てるなありゃー、4,5人はいるな。うん
だよなーこういうのって大人数で来るもんなー
アハハハ
「おう、お前ら早くこっち来い!見つけたから!!」
オレは小声でこっそりとこう呟いた
「ユーヤ逃げるぞ」
「あ、おまわりさーん!」
その場にいた全員がユーヤが手を振る方へ顔を向ける
思わずオレも向けそうになったが
ダダダダダダッ・・・!
二人で一気に駆け出した
「あ、逃げやがったぞ!待てコラアアアアアア!!」
とにかく街中へ逃げるしかない
なんか障害物的な物があるはずだし!隠れる場所もあるし!
それはもうマラソン大会のように10数人が街中を全力でダッシュしている
周りから見たらバカが走り回ってるようにしか見えないだろうが
オレ達は大マジだ
「ハァハァ!おい俊介!どっち逃げる!?」
「ゼェゼェゼェ・・・ど、どっち逃げるじゃねーよ。なんでオレと同じ方向に逃げてきてんだよ!」
「き、来ちまったもんはしょーがねぇだろ!」
ドタドタドタ!!
あいつらまだ近くにいるようだ
簡単にはあきらめることは無さそうだな
「ここにいたぞー!!」
「走れ!ウオオオオオオオオオ!」
さすがに相手の人数が多かった
後ろからオレ達の肩を掴もうとしているのが見えた
捕まった後どうしようかって考え始めていたその時
ゴキイイイイイイッ!
オレの顔の横を何かが通っていった
それが顔面に直撃し掴みかかろうとしていたやつが大きく後ろに吹き飛ばされた
前を見るとそこには
「リョ・・・リョウ・・・」
「た、助かったあー」
地獄にゴリラ、いやいや仏とはまさにこの事だった