第七話 熱って何だっけ…?
前回のあらすじ
・何このキモチ…by チルノ
はい、めちゃくちゃ遅れました。マジすみません。つか、遅れたってレベルじゃねーぞ(自サイトも一年以上更新なし状態だった)!
いろいろ小説を読み漁った影響か、何が悪いのか自分で考えられるようになった。その結果……こんな甘くする予定はなかったと思う。
今回も視点が動きます。
チルノ(後半第三者視点)→ 優也の順です。第三者視点は出来るだけ使わないよう頑張ります。
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コケコッコーーー…
「う、うーーん……朝?」
薄っすらと目を開けると、光が入ってきたので目を細める。あたいの家はかまくらだし、あんまり光は入って来ないから一瞬何処だと思った。昨日の出来事を少しずつ思い出す。
(レームん家……だっけ? 確か今は…)
「すー……すー…」
「…………!!!??」
少し寝ぼけてたけど今の状況は分かった。あたいは寝る前、ユーヤと反対の方を向いたはずだったけど、寝てる間にそれが反対になったんだと思う。ユーヤも分からないけど、寝てる間にこっちに向いたのだと思う。
あたいとユーヤ、二人とも枕の上で横向きに、お互いの顔が見える形で眠っていた。あたいがビックリしたのは、起きた瞬間、ユーヤの顔がすぐ近くにあったから…。
「ち、近い…」
それを見て、あたいの顔はまた熱くなった。それに胸がドキドキと言ってる。ユーヤを慰めてからあたいの調子おかしすぎ……こんな事は今までなかったのに、ビョーキじゃないかとまで思ってくる。
あたいは改めてユーヤを見る。
「か……かわいいな…」ツンツン
治まる所か変な事まで呟いてる。ユーヤの顔をじっくり見た事なかったけど、男なのに女の子みたいでホントにかわいい。ついついイタズラもしたくなり、ユーヤのほっぺたを突っついてしまう。
「にへへぇ…」
今のあたいの顔、何だかスゴイ気持ち悪いかも…。
イタズラされても尚起きないユーヤを良い事に、あたいはユーヤのほっぺを繰り返し突っついていた。
「んっにゅ…」
「!?」
繰り返すと同時にユーヤはもぞもぞと体を動かした。顔も少しだけあたいの方へと近づく。相変わらずユーヤは起きないが、その表情は子供っぽい笑顔に変わっている。
(今、あたいの胸がきゅんって…)
やっぱりあたい……おかしい。すぐにでもユーヤから離れないと変になる…。
でも、なかなか起き上がってくれない。代わりに自分の顔が、少しずつ少しずつユーヤの顔に近づいていた…。
「……」
「すー…すー…」
あ、あたい、何やってんだろ? 大ちゃんから聞いたけど、これって恋人同士がやる事だよ…。
(だったら……何で…?)
頭では分かってるつもりだった。でも、ユーヤに近づくのをどうしても止められなかった。
そして……
「二人とも朝だよー! おき……て」
ユーヤと重なるほんの手前、フスマを開けた大ちゃんが入ってきた。あたいはその場で固まってしまう。
(ちょっと待って……これって!)
「……ごめんなさい。まさか、もうそんな関係になっているとは思わなかった」
「だ、大ちゃん違う! 絶対に違う!!」
あたいは起き上がって、大ちゃんに誤解だと言い張る。大ちゃんは何か勘違いしてる!
「ふあぁ~…もう朝か…」
「うひゃあっ!」
そこへ何事もなかったかのようにユーヤは起き上がった。さっきまで起きる気配がなかったので、あたいはビックリして飛び上がってしまう。
「親友として覚悟はしていました、ですが……優也さん! チルノちゃんの事をよろしくお願いします!」
「ふぁ? 何の話ぃ?」
「だ、だから、違うんだって! これはたまたま━━」
「いや~、それにしてもチルノちゃんもなかなか大胆だね。昨日までは恥ずかしがっていたのにもうそんな…」
「何言ってんの!? 違うって言ってるじゃん!! だからこれは…」
「ふふっ、照れなくても良いのに。応援してるよ、ホント♪」
「もおぅううううう!!! 人の話聞いてよおおおおお!!!」
「……?」
その後、チルノは起きたらこうなってたと言い張り、何とか大妖精を納得させた(納得したかどうかは別として)
一方の優也は、何の話をしているか分からず仕舞いだったという…。
何だかよく分からない話が終わった後、俺たちは本来の服装に着替え朝食を取っている。
居間の丸テーブルの上には、昨日の夕食と同じ食事が並んでいた。差し詰め昨日の余りものなんだろう。
「霊夢ってパンとかそういう系は食べないの?」
「あんたの世界がどうだかは知らないけど、ここでは小麦粉なんかの粉類は貴重品で高価なのよ。普段パンなんてめったに口に入れられる代物じゃないわ。……どっかのお偉いさんは除いてね」
「ふえー、そーなのかー…」
「……別に食べたくないんなら食べなくても良いわよ」
「い、いや、そこまで言ってないって!」
俺は慌ててご飯茶碗を持ち、沢庵たくわんと一緒に白米を頬張る。霊夢はそれを「ふーん」と、何とも言えぬ表情で眺めていた。
「そういえば……チルノは朝っぱらから食欲ないみたいだけど…」
「!」
早朝、大ちゃんとの謎会話を繰り広げたチルノは、さっきからスプーンに乗せるご飯の量が少なかった。朝は食欲がでない方なのだろうか?
「へ、平気よ! だって、あたいサイキョーだもん!!」
「でも…」
心なしか、顔もほんのりと赤く映った…。
(あ、もしかして…)
「ちょっと手を抜いてたの! その気になればユーヤのご飯だって━━」
「よっと…」
「ふにゃっ!?」
「「ぶっ!!」」
俺のご飯茶碗に手を伸ばそうとするチルノの腕を引っ張り、そのまま額を俺の額へと合わせてみる。熱はないみたい…と言っても、チルノの体温は氷精のためあって冷たい。実際には風邪をこじらせてるのかもしれない。
「うーーん…」
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆーや!! ホントに何でもないからさっ!! 大丈夫だからっ!!」
チルノは目を回しながら、余った手をブンブンと動かす。顔もどういうわけか一気に真っ赤になった。
「……」
「ゆ、ユーヤっ!!」
「あっ…ご、ゴメン。いきなり嫌だったよな…」
慌ててチルノから身を放す。突然こんな事をやられたら誰だって嫌だよな。ちょっと無神経だった…。
「い、いや、むしろ………う、嬉しかったっていうか…」
「え? 嬉しい?」
「えっ、ちが……そ、そんな事は言ってないわよ! バーカ!!」
ご飯茶碗を手に取り、チルノはむしゃむしゃと食べ始める。さっきまでちょびちょび食べていたのは何だったのか、そんな勢いのある食べっぷりだった。
「お、おい、落ち着いてたべ━━」
「う、うっしゃい! しょんな事ははかってるっ!!」
「何で逆ギレなんだよ!?」
口に物を含みながらキレるチルノに、思わずツッコミを入れざるを得ない俺であった…。
「……ねえ、大妖精。私の白米甘いんだけど、砂糖でも入れてあったのかしらねぇ?」
「あ……あはは…」
「「「「ず~…」」」」
しばらくして朝食を済ませた俺たちは、縁側部分に腰掛けのんびりとお茶を啜っている。
現在の天候は晴。朝の陽気が直に当たり、実に気持ち良い場所だと思った。
「それで大丈夫か?」
俺はチルノに聞く。結局、落ち着いて食べなかったから咽せたのだ。
「ふ、ふん。全然へっちゃら━━」
「喉が痛いとかない?」
「だ、大丈夫だから! そんな近づかなくても平気だから…」
チルノは顔を赤くし縮こまってしまう。別にさっきみたいに、額を合わせるような距離じゃないんだけどな。覗き込むように少し近づいた程度だし…。
「……また甘くなりましたね」
「もう、お茶まで砂糖を入れないでよね」
「はあ? 何のはな━━」
「れーいーむーーーっ!!!」
突然、真上から大きな声が響いた。不意に何だろうと空を見上げると……
(人が箒に跨って空を飛んでる? ってか、こっちに向かって来てるぅ!?)
「な、何アレ…?」
「……めんどくさい奴まで来たし…」
驚く俺とは対照的に、霊夢は特に気にする素振りもなくお茶を啜る。知り合いなのだろうか。縁側近くに着地した来訪者を、何やら厄介そうな視線で見つめる。
「と~ちゃ~~く♪ 霊夢、遊びに来たぜ~♪」
「はぁ……あんたはもう少しまともに来ようとは思わないわけ?」
「私にそんな常識は通用しないぜ。霊夢だって私の性格分かってるんだろ?」ニシシ
「でしょうね…」
得意げな表情を浮かべる来訪者に、霊夢は何処か諦めたようにため息で返す。
突然空から現れた人物は、服装が黒系の服に白いエプロン、魔女みたいな帽子に髪はウェーブのかかった金髪のロングヘアー、そして、その右手に竹箒を持つ女の子だった。歳は俺と同じくらい、同じ女性で言うなら霊夢と同じくらいだろう。
「霊夢。この子、誰だ?」
「あー……彼女は霧雨魔理沙。魔法使いで一応だけど私の知り合いみたいなもの」
「魔法使い…か」
改めて彼女を見つめると、なるほど、確かにそれらしい格好をしているなと思った。ただ、その割に男勝りの口調と、魔法使いのイメージが合わない印象を受ける…。
「一応って……まあ、良いけどな。そういうお前も見ない顔だな。名前なんて言うんだ?」
今度は彼女が、俺の様相をまじまじと見つめ聞いてくる。
「えっと、俺は赤池優也。普通の人間。呼び方は優也でも何でも構わない」
「へえー、優也って言うのか。先に紹介されちゃったけど、私は霧雨魔理沙! 私も魔理沙で構わないぜ! なあなあ、お前ってもしかして外来人だったりする!?」
お互いの自己紹介が済んだ後、魔理沙は続けざまにこう聞いてきた。俺の事をまじまじと見てたのは、着ている服装等が珍しかったからだろう。やはり、俺が外来人だとすぐに分かってしまった。
「ああ、実は特殊な方法でこっちに来たらしくて……」
俺はここまでの経緯を簡単に説明する事にした…。
「………ていうわけなんだ」
「なるほどな。紫の能力じゃなくて…」
説明を終えると、顎に手をやり、何やら考える仕草を取る魔理沙。どうやら、俺の現状の原因について考えているみたいだ。
そんな様子に横やりとばかりに霊夢が突っ込んでくる。
「私と紫でも分からなかったのに、あんたに分かるわけないじゃない」
「し、失礼な! 大体大まかな事は想像できたぜっ!」
「へぇー……どんな?」
「え、ええっと…………そっ、そういや、⑨と大妖精も居たのか! オッス!」
結局、分からなかったのか、魔理沙は誤魔化すかのようにチルノと大ちゃんに挨拶する。この様子に霊夢は「やっぱりね」と呆れたように呟いた。俺も思わず苦笑い。
「お、おはようございます、魔理沙さん」
「あたい⑨じゃないもん!!」
ちなみに魔理沙の挨拶に対し、大ちゃんは不意を突かれたように挨拶を返し、チルノは⑨を否定する。チルノの方は本当にそんな呼び名で呼ばれてるとは、またまた苦笑いである…。
「それでマリサ!! 前はよくもやってくれたわね!! 今度という今度はマリサをギャフンと言わせてやるわっ!!」
「ほー、ギャフンとねぇー?」
「やるなら、ここは止めなさいよ。それと壊したら弁償だから」
(いや、霊夢さん。そこは止めましょうよ…)
止める気がない霊夢を余所に、両者スペルカードを構え戦闘態勢を取る。
「だ、ダメだよ、チルノちゃん。前回だって一方的にやられちゃったじゃん…」
「ストレートだな、大ちゃん…」
「ふふん。前のあたいとは百万倍も違うのよ!」
「百万倍だろうが⑨だろうが、お前が私に勝てる事はねーよ。マスタースパーク一発で充分だ」
「あたいは⑨じゃないってば!! 絶対絶対勝ってやるもん!!」
「はぁー……バカの一つ覚えってお前のためだけにあるような言葉だぜ」
「むきーーっ!!」
散々なる挑発にチルノは怒りの声を上げ、逆に魔理沙は完全に上から目線の視線を送る。チルノの発言と魔理沙の態度、大ちゃんの様子から察して、チルノは魔理沙にほどんどやられてるのだろう。というより、一度もやり返せてないのかもしれない。
「ぐぬぬ……今度こそ、今度こそ絶対負けないもん!!」
「はいはい。じゃあ、期待しないで━━」
「待ってくれ、魔理沙。俺がやる」
「ん?」
「は?」
「へ?」
「えええええぇぇぇ!?」
チルノは驚いた声を上げ、俺の方を見る。チルノだけじゃなく、ここに居る全員が俺の方を見ていた。
俺だって自分で何言ってるか分かんねーよ(某ディレクターの言葉)……じゃない、何か咄嗟に出てしまった。
「お前がチルノの代わり…か。ふふっ、まあ良いぜ。チルノなんかよりは断然面白そうだしな!」
「な、何で!? 何でユーヤがあたいの代わりに…!?」
(あー……マジで何でだろうなー…)
先に啖呵を切ったのはチルノだし、それにチルノのプライドなんかを考えると、むしろ放っておく方が正解だったのかもしれない。
でも……
「大ちゃんの発言等を考えたら、お前が怪我するのかもしれないだろ? そんなの放っておけるかよ」
「なっ、何よ! ユーヤはあたいが負けるとでも━━」
「それに俺はチルノには傷ついてほしくない」
「ふ、ふえっ!?」
真っ正面に見据えて伝えた言葉に、チルノはまた顔を赤くする。さっきから思うのだが、本当に熱じゃないのか? 段々心配になってくる。
一応額に手を置いてみる。やっぱり、熱はなさそうに感じる。だが、顔はもっと赤くなり、何故かそっぽを向かれてしまった。
「なあ、霊夢に大妖精。優也って鈍感?」
「結構質の悪い方の鈍感よ…」
「あはは、鈍感ですね…」
「?」
そんな様子を見てなのか、チルノを除く霊夢たち三人は何処か呆れた様子だった。熱がないか計っていただけなんだが…。
(何が鈍感なんだ…?)
正直、自分の何に対してそう呼ばれているのか分からなかった…。
「ま、まあ、ともかくお前がやるんだな? よぉーし、なら早速外で弾幕ごっこの準備と行こうぜ!!」
「先行ってるぜ! 今更降参の白旗はなしだからな!!」
「騒がしい奴ね…」
外へ飛び出す魔理沙を目で追いつつ、俺は考えていた。魔理沙は恐らく弾幕が使える。空も飛べる。対照的に、弾幕も空すらも飛べない俺に勝機があるのかと…。
今更ながら、自分はとんでもない事を口走ったんじゃないだろうか。自殺行為も良い所である。
「でも、啖呵切った以上、玉砕覚悟でやってやるしかないか」
それに自分の言葉をそう簡単に曲げる事はできない。チルノが傷つきたくないと率直に思ったのは事実である。まあ、ある意味では意地みたいなものだ。
「あ、あの、ユーヤ。コレ…」
「ん?」
そんな覚悟を決めた中、チルノは俺に近づき何かを渡してきた。受け取ると、真っ白い紙みたいのものでそこには何も書かれてない。形的には神社にあるお札に似ていると思った。
「これは?」
「ユーヤ、スペルカード持ってないよね? まだ白紙だから使えないかなって。それとお守りの代わりに…」
スペル……ああ、そういえば大ちゃんが言ってたっけ? スペルカードルールがあるとか何とかって…。
(で、これが白紙バージョンか…)
「でも、何でそれを俺に?」
「あたいも……ユーヤが傷つくのは見たくないから。それはこのしょーぶだけじゃないよ」
「……」
「だいったい、ユーヤは泣き虫だし心配なのよ! 少しでもあたいの力がないと絶対負けちゃうじゃん! だから…」
「チルノ…」
チルノなりに俺の事を心配してくれる発言だった。親友…か。
思わず頬が緩んでしまう。そう考えると、別にこんなものを貰わなくてもその気持ちだけで嬉しい。それだけでも充分力になりそうだった。
「……ありがとな。お前の分まで一生懸命戦うよ」
俺はチルノの頭を撫でて、それに笑顔で答えてやった。
「~~!! ゆ、ユーヤ! あたいの代役だから、絶対に勝ちなさいよ!!」
チルノは赤くなった顔で、そっぽを向きながらも檄を飛ばした。相変わらず顔を赤くする理由がわからないけど……
「まかせとけっ!」
チルノのため、どんなに不可能だと思ったりしても負けるもんか!
「霊夢さん。気づきませんね、優也さん…」
「時間かかるわよ。アレ…」
はい、優也は鈍感ですね。←簡潔にしすぎか。
魔理沙が空から初登場。今回は弾幕ごっこですが、以降は何だかんだで二人の世話を焼く事が多くなりそうです。