表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方希望伝  作者: raito
始まり
8/10

第七話 熱って何だっけ…?

前回のあらすじ

・何このキモチ…by チルノ


はい、めちゃくちゃ遅れました。マジすみません。つか、遅れたってレベルじゃねーぞ(自サイトも一年以上更新なし状態だった)!

いろいろ小説を読み漁った影響か、何が悪いのか自分で考えられるようになった。その結果……こんな甘くする予定はなかったと思う。


今回も視点が動きます。

チルノ(後半第三者視点)→ 優也の順です。第三者視点は出来るだけ使わないよう頑張ります。

.



コケコッコーーー…








「う、うーーん……朝?」


 薄っすらと目を開けると、光が入ってきたので目を細める。あたいの家はかまくらだし、あんまり光は入って来ないから一瞬何処だと思った。昨日の出来事を少しずつ思い出す。


(レームん家……だっけ? 確か今は…)


「すー……すー…」

「…………!!!??」


 少し寝ぼけてたけど今の状況は分かった。あたいは寝る前、ユーヤと反対の方を向いたはずだったけど、寝てる間にそれが反対になったんだと思う。ユーヤも分からないけど、寝てる間にこっちに向いたのだと思う。

 あたいとユーヤ、二人とも枕の上で横向きに、お互いの顔が見える形で眠っていた。あたいがビックリしたのは、起きた瞬間、ユーヤの顔がすぐ近くにあったから…。


「ち、近い…」


 それを見て、あたいの顔はまた熱くなった。それに胸がドキドキと言ってる。ユーヤを慰めてからあたいの調子おかしすぎ……こんな事は今までなかったのに、ビョーキじゃないかとまで思ってくる。

 あたいは改めてユーヤを見る。


「か……かわいいな…」ツンツン


 治まる所か変な事まで呟いてる。ユーヤの顔をじっくり見た事なかったけど、男なのに女の子みたいでホントにかわいい。ついついイタズラもしたくなり、ユーヤのほっぺたを突っついてしまう。


「にへへぇ…」


 今のあたいの顔、何だかスゴイ気持ち悪いかも…。

 イタズラされても尚起きないユーヤを良い事に、あたいはユーヤのほっぺを繰り返し突っついていた。


「んっにゅ…」

「!?」


 繰り返すと同時にユーヤはもぞもぞと体を動かした。顔も少しだけあたいの方へと近づく。相変わらずユーヤは起きないが、その表情は子供っぽい笑顔に変わっている。


(今、あたいの胸がきゅんって…)


 やっぱりあたい……おかしい。すぐにでもユーヤから離れないと変になる…。

 でも、なかなか起き上がってくれない。代わりに自分の顔が、少しずつ少しずつユーヤの顔に近づいていた…。


「……」

「すー…すー…」


 あ、あたい、何やってんだろ? 大ちゃんから聞いたけど、これって恋人同士がやる事だよ…。


(だったら……何で…?)


 頭では分かってるつもりだった。でも、ユーヤに近づくのをどうしても止められなかった。




 そして……




「二人とも朝だよー! おき……て」



 ユーヤと重なるほんの手前、フスマを開けた大ちゃんが入ってきた。あたいはその場で固まってしまう。


(ちょっと待って……これって!)


「……ごめんなさい。まさか、もうそんな関係になっているとは思わなかった」

「だ、大ちゃん違う! 絶対に違う!!」


 あたいは起き上がって、大ちゃんに誤解だと言い張る。大ちゃんは何か勘違いしてる!


「ふあぁ~…もう朝か…」

「うひゃあっ!」


 そこへ何事もなかったかのようにユーヤは起き上がった。さっきまで起きる気配がなかったので、あたいはビックリして飛び上がってしまう。


「親友として覚悟はしていました、ですが……優也さん! チルノちゃんの事をよろしくお願いします!」

「ふぁ? 何の話ぃ?」

「だ、だから、違うんだって! これはたまたま━━」

「いや~、それにしてもチルノちゃんもなかなか大胆だね。昨日までは恥ずかしがっていたのにもうそんな…」

「何言ってんの!? 違うって言ってるじゃん!! だからこれは…」

「ふふっ、照れなくても良いのに。応援してるよ、ホント♪」

「もおぅううううう!!! 人の話聞いてよおおおおお!!!」

「……?」




 その後、チルノは起きたらこうなってたと言い張り、何とか大妖精を納得させた(納得したかどうかは別として)

 一方の優也は、何の話をしているか分からず仕舞いだったという…。











 何だかよく分からない話が終わった後、俺たちは本来の服装に着替え朝食を取っている。

 居間の丸テーブルの上には、昨日の夕食と同じ食事が並んでいた。差し詰め昨日の余りものなんだろう。


「霊夢ってパンとかそういう系は食べないの?」

「あんたの世界がどうだかは知らないけど、ここでは小麦粉なんかの粉類は貴重品で高価なのよ。普段パンなんてめったに口に入れられる代物じゃないわ。……どっかのお偉いさんは除いてね」

「ふえー、そーなのかー…」

「……別に食べたくないんなら食べなくても良いわよ」

「い、いや、そこまで言ってないって!」


 俺は慌ててご飯茶碗を持ち、沢庵たくわんと一緒に白米を頬張る。霊夢はそれを「ふーん」と、何とも言えぬ表情で眺めていた。


「そういえば……チルノは朝っぱらから食欲ないみたいだけど…」

「!」


 早朝、大ちゃんとの謎会話を繰り広げたチルノは、さっきからスプーンに乗せるご飯の量が少なかった。朝は食欲がでない方なのだろうか?


「へ、平気よ! だって、あたいサイキョーだもん!!」

「でも…」


 心なしか、顔もほんのりと赤く映った…。


(あ、もしかして…)


「ちょっと手を抜いてたの! その気になればユーヤのご飯だって━━」

「よっと…」

「ふにゃっ!?」

「「ぶっ!!」」


 俺のご飯茶碗に手を伸ばそうとするチルノの腕を引っ張り、そのまま額を俺の額へと合わせてみる。熱はないみたい…と言っても、チルノの体温は氷精のためあって冷たい。実際には風邪をこじらせてるのかもしれない。


「うーーん…」

「ゆ、ゆ、ゆ、ゆーや!! ホントに何でもないからさっ!! 大丈夫だからっ!!」


 チルノは目を回しながら、余った手をブンブンと動かす。顔もどういうわけか一気に真っ赤になった。


「……」

「ゆ、ユーヤっ!!」

「あっ…ご、ゴメン。いきなり嫌だったよな…」


 慌ててチルノから身を放す。突然こんな事をやられたら誰だって嫌だよな。ちょっと無神経だった…。


「い、いや、むしろ………う、嬉しかったっていうか…」

「え? 嬉しい?」

「えっ、ちが……そ、そんな事は言ってないわよ! バーカ!!」


 ご飯茶碗を手に取り、チルノはむしゃむしゃと食べ始める。さっきまでちょびちょび食べていたのは何だったのか、そんな勢いのある食べっぷりだった。


「お、おい、落ち着いてたべ━━」

「う、うっしゃい! しょんな事ははかってるっ!!」

「何で逆ギレなんだよ!?」


 口に物を含みながらキレるチルノに、思わずツッコミを入れざるを得ない俺であった…。




「……ねえ、大妖精。私の白米甘いんだけど、砂糖でも入れてあったのかしらねぇ?」

「あ……あはは…」








「「「「ず~…」」」」



 しばらくして朝食を済ませた俺たちは、縁側部分に腰掛けのんびりとお茶を啜っている。

 現在の天候は晴。朝の陽気が直に当たり、実に気持ち良い場所だと思った。


「それで大丈夫か?」


 俺はチルノに聞く。結局、落ち着いて食べなかったから咽せたのだ。


「ふ、ふん。全然へっちゃら━━」

「喉が痛いとかない?」

「だ、大丈夫だから! そんな近づかなくても平気だから…」


 チルノは顔を赤くし縮こまってしまう。別にさっきみたいに、額を合わせるような距離じゃないんだけどな。覗き込むように少し近づいた程度だし…。


「……また甘くなりましたね」

「もう、お茶まで砂糖を入れないでよね」

「はあ? 何のはな━━」



「れーいーむーーーっ!!!」



 突然、真上から大きな声が響いた。不意に何だろうと空を見上げると……


(人が箒に跨って空を飛んでる? ってか、こっちに向かって来てるぅ!?)


「な、何アレ…?」

「……めんどくさい奴まで来たし…」


 驚く俺とは対照的に、霊夢は特に気にする素振りもなくお茶を啜る。知り合いなのだろうか。縁側近くに着地した来訪者を、何やら厄介そうな視線で見つめる。


「と~ちゃ~~く♪ 霊夢、遊びに来たぜ~♪」

「はぁ……あんたはもう少しまともに来ようとは思わないわけ?」

「私にそんな常識は通用しないぜ。霊夢だって私の性格分かってるんだろ?」ニシシ

「でしょうね…」


 得意げな表情を浮かべる来訪者に、霊夢は何処か諦めたようにため息で返す。

 突然空から現れた人物は、服装が黒系の服に白いエプロン、魔女みたいな帽子に髪はウェーブのかかった金髪のロングヘアー、そして、その右手に竹箒を持つ女の子だった。歳は俺と同じくらい、同じ女性で言うなら霊夢と同じくらいだろう。


「霊夢。この子、誰だ?」

「あー……彼女は霧雨魔理沙(きりさめまりさ。魔法使いで一応だけど私の知り合いみたいなもの」

「魔法使い…か」


 改めて彼女を見つめると、なるほど、確かにそれらしい格好をしているなと思った。ただ、その割に男勝りの口調と、魔法使いのイメージが合わない印象を受ける…。


「一応って……まあ、良いけどな。そういうお前も見ない顔だな。名前なんて言うんだ?」


 今度は彼女が、俺の様相をまじまじと見つめ聞いてくる。


「えっと、俺は赤池優也。普通の人間。呼び方は優也でも何でも構わない」

「へえー、優也って言うのか。先に紹介されちゃったけど、私は霧雨魔理沙! 私も魔理沙で構わないぜ! なあなあ、お前ってもしかして外来人だったりする!?」


 お互いの自己紹介が済んだ後、魔理沙は続けざまにこう聞いてきた。俺の事をまじまじと見てたのは、着ている服装等が珍しかったからだろう。やはり、俺が外来人だとすぐに分かってしまった。


「ああ、実は特殊な方法でこっちに来たらしくて……」


 俺はここまでの経緯を簡単に説明する事にした…。






「………ていうわけなんだ」

「なるほどな。紫の能力じゃなくて…」


 説明を終えると、顎に手をやり、何やら考える仕草を取る魔理沙。どうやら、俺の現状の原因について考えているみたいだ。

 そんな様子に横やりとばかりに霊夢が突っ込んでくる。


「私と紫でも分からなかったのに、あんたに分かるわけないじゃない」

「し、失礼な! 大体大まかな事は想像できたぜっ!」

「へぇー……どんな?」

「え、ええっと…………そっ、そういや、⑨と大妖精も居たのか! オッス!」


 結局、分からなかったのか、魔理沙は誤魔化すかのようにチルノと大ちゃんに挨拶する。この様子に霊夢は「やっぱりね」と呆れたように呟いた。俺も思わず苦笑い。


「お、おはようございます、魔理沙さん」

「あたい⑨じゃないもん!!」


 ちなみに魔理沙の挨拶に対し、大ちゃんは不意を突かれたように挨拶を返し、チルノは⑨を否定する。チルノの方は本当にそんな呼び名で呼ばれてるとは、またまた苦笑いである…。


「それでマリサ!! 前はよくもやってくれたわね!! 今度という今度はマリサをギャフンと言わせてやるわっ!!」

「ほー、ギャフンとねぇー?」

「やるなら、ここは止めなさいよ。それと壊したら弁償だから」


(いや、霊夢さん。そこは止めましょうよ…)


 止める気がない霊夢を余所に、両者スペルカードを構え戦闘態勢を取る。


「だ、ダメだよ、チルノちゃん。前回だって一方的にやられちゃったじゃん…」

「ストレートだな、大ちゃん…」

「ふふん。前のあたいとは百万倍も違うのよ!」

「百万倍だろうが⑨だろうが、お前が私に勝てる事はねーよ。マスタースパーク一発で充分だ」

「あたいは⑨じゃないってば!! 絶対絶対勝ってやるもん!!」

「はぁー……バカの一つ覚えってお前のためだけにあるような言葉だぜ」

「むきーーっ!!」


 散々なる挑発にチルノは怒りの声を上げ、逆に魔理沙は完全に上から目線の視線を送る。チルノの発言と魔理沙の態度、大ちゃんの様子から察して、チルノは魔理沙にほどんどやられてるのだろう。というより、一度もやり返せてないのかもしれない。


「ぐぬぬ……今度こそ、今度こそ絶対負けないもん!!」

「はいはい。じゃあ、期待しないで━━」

「待ってくれ、魔理沙。俺がやる」


「ん?」

「は?」

「へ?」

「えええええぇぇぇ!?」


 チルノは驚いた声を上げ、俺の方を見る。チルノだけじゃなく、ここに居る全員が俺の方を見ていた。

 俺だって自分で何言ってるか分かんねーよ(某ディレクターの言葉)……じゃない、何か咄嗟に出てしまった。


「お前がチルノの代わり…か。ふふっ、まあ良いぜ。チルノなんかよりは断然面白そうだしな!」

「な、何で!? 何でユーヤがあたいの代わりに…!?」


(あー……マジで何でだろうなー…)


 先に啖呵を切ったのはチルノだし、それにチルノのプライドなんかを考えると、むしろ放っておく方が正解だったのかもしれない。


 でも……


「大ちゃんの発言等を考えたら、お前が怪我するのかもしれないだろ? そんなの放っておけるかよ」

「なっ、何よ! ユーヤはあたいが負けるとでも━━」

「それに俺はチルノには傷ついてほしくない」

「ふ、ふえっ!?」


 真っ正面に見据えて伝えた言葉に、チルノはまた顔を赤くする。さっきから思うのだが、本当に熱じゃないのか? 段々心配になってくる。

 一応額に手を置いてみる。やっぱり、熱はなさそうに感じる。だが、顔はもっと赤くなり、何故かそっぽを向かれてしまった。


「なあ、霊夢に大妖精。優也って鈍感?」

「結構質の悪い方の鈍感よ…」

「あはは、鈍感ですね…」


「?」


 そんな様子を見てなのか、チルノを除く霊夢たち三人は何処か呆れた様子だった。熱がないか計っていただけなんだが…。


(何が鈍感なんだ…?)


 正直、自分の何に対してそう呼ばれているのか分からなかった…。


「ま、まあ、ともかくお前がやるんだな? よぉーし、なら早速外で弾幕ごっこの準備と行こうぜ!!」








「先行ってるぜ! 今更降参の白旗はなしだからな!!」

「騒がしい奴ね…」


 外へ飛び出す魔理沙を目で追いつつ、俺は考えていた。魔理沙は恐らく弾幕が使える。空も飛べる。対照的に、弾幕も空すらも飛べない俺に勝機があるのかと…。

 今更ながら、自分はとんでもない事を口走ったんじゃないだろうか。自殺行為も良い所である。


「でも、啖呵切った以上、玉砕覚悟でやってやるしかないか」


 それに自分の言葉をそう簡単に曲げる事はできない。チルノが傷つきたくないと率直に思ったのは事実である。まあ、ある意味では意地みたいなものだ。


「あ、あの、ユーヤ。コレ…」

「ん?」


 そんな覚悟を決めた中、チルノは俺に近づき何かを渡してきた。受け取ると、真っ白い紙みたいのものでそこには何も書かれてない。形的には神社にあるお札に似ていると思った。


「これは?」

「ユーヤ、スペルカード持ってないよね? まだ白紙だから使えないかなって。それとお守りの代わりに…」


 スペル……ああ、そういえば大ちゃんが言ってたっけ? スペルカードルールがあるとか何とかって…。


(で、これが白紙バージョンか…)


「でも、何でそれを俺に?」

「あたいも……ユーヤが傷つくのは見たくないから。それはこのしょーぶだけじゃないよ」

「……」

「だいったい、ユーヤは泣き虫だし心配なのよ! 少しでもあたいの力がないと絶対負けちゃうじゃん! だから…」

「チルノ…」


 チルノなりに俺の事を心配してくれる発言だった。親友…か。

 思わず頬が緩んでしまう。そう考えると、別にこんなものを貰わなくてもその気持ちだけで嬉しい。それだけでも充分力になりそうだった。


「……ありがとな。お前の分まで一生懸命戦うよ」


 俺はチルノの頭を撫でて、それに笑顔で答えてやった。


「~~!! ゆ、ユーヤ! あたいの代役だから、絶対に勝ちなさいよ!!」


 チルノは赤くなった顔で、そっぽを向きながらも檄を飛ばした。相変わらず顔を赤くする理由がわからないけど……


「まかせとけっ!」



 チルノのため、どんなに不可能だと思ったりしても負けるもんか!






「霊夢さん。気づきませんね、優也さん…」

「時間かかるわよ。アレ…」


 

はい、優也は鈍感ですね。←簡潔にしすぎか。

魔理沙が空から初登場。今回は弾幕ごっこですが、以降は何だかんだで二人の世話を焼く事が多くなりそうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ