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処刑直前
熱気に包まれた広場で小柄な男が横にいる女を見上げた。
これまで数々の戦いを繰り広げてきた男は死刑執行の直前でも怯えた様子も見せず真っ直ぐ立っている。
女はそんな彼を見ていてあることを思いついた。
クスリと笑い声を漏らした女に見張りの兵士が警戒の色を強める。
そんな兵士を他所に女はその思いつきを口にした。
「なあ、キース聞いてくれるか。」
男は無言だったが女は話を続けた。
「私達はずっと自由を手に入れるために戦ってきた、そうだろ。けれどもう終わりだ、そろそろ首と胴体が真っ二つになる。」
男は女を見上げたまま動いていなかった。
「確かに私達はもう直に殺されるだろう。でも私達が仲間だったっていう事実もクーデターを起こしたっていう事実も消えない。それにこれは未来の私達の追憶かも知れない、そうだろ?」
男は無言だった。
それにも構わず女は笑みを深め、言葉を継いだ。
「だから目が覚めたら酒でも飲もう、キース。」