ヘルダーリンの自然哲学あるいはナトゥール讃歌Natural philosophy of Hölderlin 試論 研究序説
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この試論の増補改訂版を作りましたので、そちらの方をお読みくださいませ。
ヘルダーリンの自然讃歌 あるいは ヘルダーリンの自然哲学に関する一考察 Eine Studie zur Naturphilosophie von Hölderlin
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2017年10月10日 記す。
梗概
ヘルダーリンの生涯の問いとは、形骸化し、活力を失った旧来の宗教の下で
私たちの荒廃した生命をいかに再びあの古代ギリシャのように歓喜と賛歌と横溢に
再生できるか、ということだった。
ヘルダーリンは詩人の直観でそうした現代の荒廃した危機的状況を
「乏しい時代」と端的に表現するのである。
「乏しき時代にあって、いったい何のための詩人であるというのか?」(パンと葡萄酒)
と
自問を重ねるのである。
その問いを深めさすらいの果てにたどり着いたのが
「聖なる自然」への回帰であり
古代ギリシャへの回帰だったのだ。
古代ギリシャこそ人間が達したもっとも充実した時代だったとヘルダーリンは考える。
そこから熱狂的なギリシャ賛歌の詩が生まれる。
このようなヘルダーリンを誰も理解できなかった。
ゲーテですら、もっと小さな詩を作るように勧めたし、、
シラーにいたっては、もっと良識的な詩を作る様に勧めるのだった。
ヘルダーリンは絶望するしかなかった。
その絶望はやがてドイツ人全体への絶望に変わっていった。
「ドイツ人ほど支離滅裂な国民はいない。
職人はいる、だが人間がいない。
思想家はいる、だが人間がいない。牧師はいる、だが人間がいない」(ヒュペーリオン)
ドイツ人への絶望、時代への絶望はその裏返しとしての
熱狂的なギリシャ賛美へと傾倒してゆくのだった。
ところでヘルダーリンにとってのギリシャとはなんだったのだろうか?
彼は少年時からホメロスを愛読していたし
ギリシャ悲劇に対する愛着はすさまじいほどだった。
そしてプラトンのあの理想主義こそがギリシャの絵姿だった。
たとえばソフォクレスの悲劇に於いては
神々と人間の壮絶な運命の戦いがありそして和解がある。
そこでは人間は神から下された宿命と主体的に和解しえて
生きてゆくのである。そうした生の航路には
乏しさはないと、ヘルダーリンは考える。
しかし現代はそうではない。
全的な総体としての運命の統御者としての人間がいないのだ。
そんな中で運命的に出会ったのが理想化された現実の女性だった。
その人の名は「ディオティーマ」と呼ばれた。
彼女は傷付きやすいヘリダーリンの心情を理解して庇護した。
しかし彼女は現実の世界では人妻であり、
良識のあるいわば現実と和解した女性だから
到底、、夢幻への飛翔を続けるヘルダーリンの熱意を受け入れることなど不可能だったろう。
ここでもヘルダーリンは深い絶望とともにディオティーマと別離するしかなったのだ。
こうしていっさいに絶望したヘルダーリンは
やがて「聖なる自然」のみが最後の避け所だと理解するのである。
「私はもうすっかり見終えた。人間についての夢は。
おお、太陽よ、そよ風よ、
今でも私の心にまるで兄弟のように、生きているのはあなたたちだけだ。」(ヒュペーリオン)
かくしてヘルダーリンは今や聖なる自然の大司祭となって人々に
伝道しようとするのだった。
しかしそのころには、もう彼の純一な精神は荒廃した俗世間にあまりにも深く傷つけれてしまっていた。
彼に狂気の兆候が表れ始めていたのだ、
やがてその闇は深さを増して、もう二度と元には戻らなかった。
以後36年間精神の闇の中、肉体だけ生き延びて
自分の名前も忘れ果て、自らを「スカルダネリ」と自称して
乞われれば不可解な詩を朗誦するのだった。
やがて、、精神の闇の中で死んでいくことになる。
ヘルダーリンのこうした一生が一体何の意味があるというのだろうか?
それは、、彼の以下のような言葉の中にそれは探すしかないのだろう。
それはたとえば、、、
「さまざまの苦しみと憤怒を重ねて、餓え求めている私の心よ。
そして帰っていくがいいのだ、お前が出てたったところへ、
自然の腕の中へ。移ろわぬ静かな美しいこの母の懐の中に」(ヒュペーリオン)
「私たちが抑えることができなかった炎を私たちは炎に焼かれながら償うのだ」(ヒュペーリオン)
だがこうした彼のの言葉の中で
ヘルダーリンの到達した最後の結論とは
おそらく、彼の宿命と和解したこのような、
以下の言葉に体現されているのであろう。
「完成の中ではいかなる嘆きも、もはや存在しない」
目次
1、生の航路
a交友
b尊敬すべき師たち
c家庭教師
d旅程
e母父妹
f狂気の淵
2、愛、あるいギリシャ
a古代ギリシャの憧憬
b聖なる自然への帰依
cディオティーマ
3乏しき時代
a時代への決別
b精神の荒廃
c文明の砂漠
4聖なる自然
a自然の全一性
b自然の汎聖性
c自然の治癒力
d自然賛歌
5没落者の影
a母のもとで
b宮廷図書館員
c指物師のもとで
6終焉
a自然の司祭として
b神の充溢
cグリーヒェンラント




