おとぎ話の裏側で・・・
シンデレラについて勝手に考察をして書いたものです。
こんなのは『シンデレラじゃない!!』って方もいらっしゃると思います。
あくまで、オリジナル作品なので細かいところは突っ込まないでやってください。
皆様は『シンデレラ』という話をもちろんご存知だと思います。
ああ、自己紹介をする前から失礼いたしました。わたくし名前をシルフィールと申します。
どうやらわたくし、『シンデレラ』と言う物語の中に登場いたします、意地悪な姉その2の様なんですの。
ただ、いまだ確証が・・・・
はっきり申し上げますと、わたくしの知っているお話とかなり違ってしまっているのです。
皆様、わたくしの話を聞いていただけますでしょうか?
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わたくしとウェンディーネお姉様はお母様に連れられて、お母様の再婚先であるセプト侯爵家に参りました。
当初わたくしとウェンディーネお姉様はお母様の実家にて養育される予定でしたが、新しくお母様の旦那様になった侯爵様はそれを良しとはせず少々強引では有りましたが母娘揃ってセプト侯爵家に来るよう押し切ってしまわれたそうです。
さすがにこのときわたくしは5歳でしたので詳しいことは当時9歳でしたウェンディーネお姉さまから伺ったことでございます。
何でも侯爵様に4歳になるお嬢様シンシア様がいらっしゃるから、ちょうど良いと思われたそうです。
また、わたくし達姉妹のお父様が名門公爵家に連なる方でしたのでご自分の義女とするのに血筋的にも問題がなかったことも大きな理由なのでしょう。
ちなみに本当のお父様は、わたくしが生まれたころに有ました戦争で亡くなられたそうです。
お母様はわたくしの目から見ても美しい方で、とても2人の子を持つ母親には見えません。
性格も穏やかで優しく物腰も優雅ですし、とても物語に出てくる意地悪な継母とは思えません。
ウェンディーネお姉さまも、お顔はお母様にはあまり似ておられませんが淡い金髪に、優しい性格のとても綺麗な人ですし、『意地悪?それ美味しいのかしら?』とおっしゃいそうです。
まあ、当然貴族としてそれだけではいけませんので、多少なりとも権謀数術は心得ているでしょうが・・・
わたくしが、なぜ『シンデレラ』という物語を知っているかというと、他の方に申しあげれば笑われてしまいそうですが、たぶん前世であろう記憶を断片的に引き継いでいるからと申し上げるよりしょうがありません。ただ、全て覚えているのではなく本当に断片的で、昨日見た夢を覚えている程度の淡い記憶なのです。おかげで、周りの者たちに変な目で見られることなく生活できているのですが。。。
お母様が、わたくし達姉妹を連れてセプト侯爵家に入った際、一族の方達は侯爵様に隠れて散々お母様を責めたてていました。わたくしが知る限りでも、「新しい家庭に連れ子だなんて非常識だ」「自分の娘達しか可愛がらないつもりなんだろう?」「気の弱い振りをしてとんでもなく狡猾な女だな」「寡婦として恥ずかしくないのか?」「財産目当ての卑しい女め!!」
などなど、侯爵様さえいなければ子供の前でも堂々と罵っておられましたわね。。。
当然妹となったシンシア様も見聞きしていたわけで、お母様に対する態度はこの頃からあまりよろしくなかったですわね。お義父様はシンシア様に時々注意していたようですが。
そして当然の様に、ある一定の歳になれば淑女としての教育が始まるわけです。
一般教養、音楽、楽器、ダンス、礼節・・・・学ばねばならないことは結構沢山有ります。
どれか一つ欠けたらこの先貴族社会で笑いものにされること間違い無しです。
貴族に生まれたからと言って最初からそのすべてが出来たら苦労しませんわね・・・・
わたくしと、シンシア様は出会った当初5歳と4歳とはいえ誕生日的には6か月も違わなかったこともありほぼ同じ時期に同じことを学びました。まあ、音楽、楽器、ダンスなどはウェンディーネお姉様もご一緒な事が多かったですが。
シンシア様は容姿だけ申しあげれば、金色の煙る様な巻毛、上等な翡翠の様な深緑色の瞳、白い肌の美少女です。
性格の方は・・・・遊ぶことが大好きで、自分に優しく、好奇心の旺盛な方と申しあげればよろしいのでしょうか?ずっと椅子に座っているのが苦手な方の様にお見受けできました。
わたくし達について下さった家庭教師のご婦人は、セプト侯爵家の縁戚に当たられる方とかで、わたくしに対しては「こんなこともお分かりに成れないなんて、セプト家の令嬢として恥かしいと思われないのかしら?」と、よく注意(?)を促すセリフをおっしゃったり、礼節の授業では理由のよく分からないことで怒ってくださいました。主にシンシア様が失敗されるのはわたくしの行動に優雅さが欠けるからだと仰っていたかしら。そして、シンシア様に対しては「流石、セプト家の本物の令嬢は違いますわね」と、何かにつけて褒めていたと記憶しています。そういえば確か、ダンスの授業だけは花が舞うように華やかでお上手でしたわ。
後で知ったのですがシンシア様のお勉強はわたくしの半分も進んでいなかったとかで、家庭教師の方はわたくしとシンシア様の進行具合を逆にお義父様に報告されていたとか。
それであの頃のお義父様はわたくしによく、「もっと努力して頑張りなさい」と仰っていたのですわね。
正直、わたくし良く自分がまっすぐに育ったと思ってしまうことも有りますの・・・・
貴族女性のたしなみの1つで、お母様に教わりました刺繍も、シンシア様は1つも完成にはいたらなかったと記憶しております。
それをお義父様に報告し、お義父様から注意があった際も、シンシア様は「お義母様の教え方が悪い」・「連子姉さま達の分はお母様が刺繍を手助けして完成させていた」・「私は優秀なんだからきちんと教えられればできないはずがない」って仰って大変でしたわね。
お母様からしたら大切な子供たち(もちろんシンシア様含む)が恥をかかないようにと当然のことをなさろうとされていたのに、シンシア様にとってはそれが面白くない様に感じたのでしょう。お義父様にも「お義母様が厳しいのは教育と称して、私を虐めたいからだわ」と言っているのを耳にしました。
それを聞いてお父様も「シンシアにちょっと厳しくしすぎたのではないか?あの子は赤ん坊の時に母親を亡くしたかわいそうな子なのだからもう少し優しく接してやって欲しい」とお母様に言っていました。
わたくしそれを聞いて『見当違いですわお義父様?!』って思いました。
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そんな日々を積み重ね、わたくしとシンシア様16歳〔⇐わたくしの誕生日前だからですわよ〕のある日、お城から『王太子殿下の花嫁募集~参加条件は男爵以上の未婚の貴族令嬢全員でよろしく~』という招待状が届きました。
この時、ウェンディーネお姉様はトアール侯爵様と婚約が調いつつ有りましたので不参加の予定でしたが婚約が正式に調った状況では無かった為しぶしぶ参加することに、わたくし自身もあまり乗り気ではなかったのですが国王陛下からの召喚には応じねばなりません。全くめんどくさいことですが、貴族社会は身分制度が絶対なのですよ。
言わずと知れたことでしょうが、我が家で喜んだのはシンシア様のみです。
招待状を受け取って直ぐに、お義父様におねだりして新しいドレス・おかざり・靴などを新調する手配をし、ドレスに至ってはどんなドレスが自分をより可愛らしくそして美しく引き立てるのかをあーでもないこーでもないとひたすらに話し合っていました。傍で見ていてあの鬼気迫る感じは恐ろしい程の執念を感じました。
さて、ここで我が国の王太子殿下についてお教えしておきますわね。
殿下は少々お気の毒な方なのです。我が国の政治を司る上位役職者はその半分および4公爵家の中2家は軍事主体政治派、残りの半分および2公爵家は議会主体政治派と2派にくっきり別れてしまっています。上層部以外は中立派の方もいらっしゃいますがこ先代国王陛下の時からのような状態が続き、2派閥の後見を受けた方達が出世された結果こうなったようです。
今代国王陛下は、微妙なパワーバランスが崩れるのを恐れご自分のお従妹様を伴侶としてお迎えになられました。ですので王太子殿下のお血筋は素晴らしくよろしいのですが前記2派閥の後見が無い為政治的立場が若干お弱いのです。ご婚約者様も最初は他国の姫君をと考え申し入れをしていたようですが、隣国にちょうど良い年頃の姫君がいなかったり、タッチの差で他の方との婚約が成立していたりでうまくいかなかったようで。。。。
そこで、国王陛下も色々考えた末今回のパーティー主催となったのでしょう。もし、他国の姫君との婚約が調っていればこんな賭け的な事はしなくて済んだでしょうに。。。
男爵以上の家柄で、未婚の女性全員となれば当然中立派のお嬢様も相当数いらっしゃいますし(ちなみにセプト侯爵家は中立派です)、軍門主体政治派、議会主体政治派のお嬢様も平等に招かれますからね。男爵家以上としたのは王族に嫁す以上それ以下の家格・経済状態では馴染めないとの配慮からかと思われます。その証拠ではないですが、今回辺境伯の令嬢の参加は無いようです。
ああ、シンシア様の衣装を作る際お義父様から、お姉さまとわたくしもドレスを新調するように言われましたがわたくしもお姉さまも共に断らせていただいています。目立つ気もありませんし、手持ちのドレスとお飾りで壁の花を目指しました。
パーティー当日のシンシア様はそれはそれは素晴らしかったですわ~。
ただでさえ美少女なのにこの日のためによりをかけて磨き抜かれた肌!!髪!!艶々した唇は可憐でありながら思わずキスをしたくなる様なほのかな色香をたたえ、翡翠の瞳は自信に溢れてキラキラと輝き、バラ色のほっぺたは思わず触りたくなる程ツヤツヤでした。ドレス・お飾りも素晴らしい出来栄えでした。何より、足元で涼しげな音と虹色の光を弾くガラスの靴。どこのお姫様かと思う出来栄えでしたの。
ただわたくし、シンシア様のガラスの靴を見たとき『あら?』っと思ってしまいました。
『ガラスの靴を履いたお姫様』の物語ってまさか私の覚えている『シンデレラ』の主役ってシンシア様?
でも、物語のようにお義父様は亡くなってないわ?確かにわたくしとお姉さまはお母様に連れられてセプト家に入ったけれどシンシア様に意地悪した覚えはないし意地悪な2人の姉ではないわよね?お母様もシンシア様に対して意地悪やつらい仕打ちなんてされてなかったわ?第一シンシア様は家事なんかされたこと無いわ??まさか、今日のパーティーはシンシア様の為の物語補正??まさか、まさかよね???
そんなことを考えつつパーティーに参加しました。行きの馬車のなかでシンシア様は、「連子姉様達のドレス・お化粧が地味すぎる」と言ってみたり、「そんなかっこなら参加しない方がましなのではないの?」と言っていたりしました。参加に気が進まないわたくし達の意思表示はシンシア様には伝わらなかったようです。
そしてパーティーは盛況なうちに終わり、王太子殿下は正妃にシンシア様を選ばれました。確かにあの会場内ではシンシア様が群を抜いて一番美しかったもの。でもおかしいわ、確かシンシア様よりも美人と名高い方も何名かいらしたはずなのに。。。
お母様は直ぐにお義父様に「このままでは、セプト家が恥をかくことになる。この度の決定は辞退すべきだ」と言っていたけれどお義父様とセプト侯爵家一族の方々は「嫉妬は良くない。継子の幸せを祈れないのか」と、不快を示され、シンシア様が王太子妃殿下になることに最初鼻高々だったわね。ああ、例外で家庭教師を務めた女性だけは引きつった笑いをしていたと聞いたけれど。
王宮から教師役の方が見えて妃殿下教育が始まると、シンシア様の不勉強さが浮き彫りになってお義父様の顔色が段々悪くなっていったのよね。それでもシンシア様は「私は悪くないわ。教え方が悪いのよ。」とか、「なんでこんなこと(貴族家系図の暗記過去の功績含む)や、歴史を覚えなければならないの!!必要ないじゃない!!」とか、「礼儀作法?皆が私にかしずけば済むことでしょう?」なんて言っていたわ。これには流石のお義父様も今まで聞いていた娘の態度や勉強の達成度と違いすぎておかしいと思われたみたい。
でも既に結婚準備は着々と進み、立ち戻れないところまで来ていて結局は現状を王室に報告して判断を仰ぐことになったの。当然お義父様達は破談になるものと思われていたそうよ。国王陛下や王后陛下も結婚はとりやめる意向を王太子殿下に伝えたけれど、意外に王太子殿下が強硬にシンシア様が良いと言い張り『外交や、内政はできるものに任せ、シンシアが(お飾りの)正妃でも良いではないか!!』と言ってしまったらしいのです。
本当に、王太子殿下は何てことを言ってくれてるんですしょうね。それではシンシア様は結婚式以降はほぼ幽閉されるっていうことですよね?子供を産んでもきちんとした教育を施せない恐れがある以上近づけないってことになるのでしょうか。更には新婚ホカホカですが、正妃は役に立たないので外交・内政できる側室をもらいますって宣言したことになるんじゃないかしらね。きっと最大2派閥からふさわしい教育の済んでいる姫君が直ぐに嫁いでくるのでしょう。現状シンシア様じゃお顔位しかアピールポイント無いのに大丈夫かしら?
シンシア様自身は≪周りに反対されつつ貫く愛≫というシュチュエーションに酔ってらして、「王太子様(////)ポッ」って悦にひたっていたわね。
あの様子では、王太子殿下が結婚後直ぐに側室をもらうことになることに気付いていないのではないかしら。。。
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そして今日はシンシア様と王太子殿下の結婚式が行われるわ。シンシア様の為に王宮内にが宮が一棟建てられたってお義父様が言っていたの。その宮は中庭完備で居心地は良さそうだけれど人の出入りが厳重で入れるのはお義父様とお母様、シンシア様の姉妹であるわたくしとウェンディーネお姉様、後は女友達、ただし訪れる際は完全事前申請制で、事前申請のない場合は面会できないらしいのです。でも、後宮なんてそんなものかも知れませんわね。
わたくしには教育の足りないお飾りの妃を隔離して、国政に害が起こらないようにしようとの国王陛下ご夫妻の本心が見え隠れしているように思えるし、王太子殿下もそれを良しとしていることから大事なのは好みの容姿のみで能力はどうでもいいですと言っているような状態なのにシンシア様は、「私の為に宮まで建てていただけるなんて、なんて愛されているのかしら♪」と、ご機嫌で国王陛下夫妻の思惑に気付いた時が怖いわ。
そして魔法使いもかぼちゃの馬車も出てこないこれは本当にあの『シンデレラ』の物語で、わたくしは意地悪な姉その2なのかしら??
読んでいただきありがとうございました。
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11/12誤字直しました。
文中の1人称ですが『シルフィール⇒わたくし』『シンシア⇒私』です。