第一話 神様はおっちょこちょい
「おきたか。」
ここはどこだ、、何してるんだっけ、、?そうだ。首を吊ったんだ。死に切れなかったか?
「ん、、ここは、、?」
ここは病院か?眩しくてよく見えないが隣に誰かいる。俺は硬いベッドに寝ている。
「ここは魂の世界だ。」
何言ってるんだ?聞き間違えか?
「たましいのせかい?」
「そうだ。魂の世界」
魂の世界?
ていうかこいつは誰だ?顔を見たい。右を見るとそこには足がある。ここは硬いベッドじゃない。おそらく床だ。
「俺は死ねたのか?」
上を見上げる。そこには髭を蓄えた中年の男性の顔があった。欧米系だろうか。
「ここにいるということは死んだんだろう。」
そうか。ならよかった。
「ただ、君がここにいるのはおかしいんだ。」
男はため息をつく。
「君はこの世界の人間じゃない。我々のミスで世界を転移してしまったのだ。」
転移?世界が違う?ここは異世界か?
「本来死んだ生命は魂だけになり魂の世界に行く。その世界のな。ただ君は別の世界の魂の世界に来てしまった。それがここだ。」
まだ状況が飲み込めないが男話を続ける。
「生命は死後、魂だけになり魂の世界にいったあと、転生する。我々の仕事はその魂を転生させることなのだが、それは自動化されているんだ。ただ、その自動化を効率化しようとするあまり、いろいろ狂って君が来てしまったわけだ。」
俺はどうなるんだ。
「俺は転生できるのか?」
男は頷く
「できる。ただこちらの世界は君の世界よりも過酷だ。だから君には申し訳ないことをした。」
誰にでもミスはある。それに転生という二度目のチャンスをもらったのだ。責めることはできまい。
「そして我々は申し訳ないことをした君に、サービスをあげようとおもったんだ。ただそれも失敗。君はあの世界で生きていくために大事なものが少々苦手になった。」
失敗しすぎだろ。
「さっ、もう時間だ。君には悪いことをした。ただ、精一杯生きてほしい。あと、言語に関してだけど君の家の屋根裏部屋の棚の裏を見てほしい、」
男は早口で付け足した。
俺は生まれた。生まれる瞬間のことは少々生々しいので割愛しよう。
最初に感じたのはやはり体の変化だった。これは慣れ親しんだ体ではないのだ。
目を開けてみたが光を感じる程度でなかなか見えなかった。もしやあの男が言っていた”生きていくために大事なものが少々苦手になった”というのは視力のことだろうか、なんて思ったが1ヶ月もすると親の顔が認識できるようになったので、視力が上がっていることが確認できた。このまま上がっていくのだろう。
さて、この世界に誕生してから一年間。正直ここまでの一年、意識がはっきりしなかったり、頭が重かったり、なかなか立てなかったり、視力が低かったり、言語がわからなかったりした。しかし1年経った頃には二足歩行ができるようになったし、目も見えるようになった。そこで初めて両親の顔を見たが、なかなかの美人とイケメンだった。親があの顔なら俺の顔にも期待できる。
つい先日、生まれる前に会った変な男が”言語に関しては屋根裏の棚の裏をみろ”と言っていたことを思い出したので屋根裏部屋に行ってみた。そして棚をみつけ、その裏を見るとなにやら一冊の本が隠してあった。取り出して開くとこの国の言語とその読み方、意味、発音方法などを日本語で記した教科書のようなものだった。厚さにして広辞苑ほどだろうか。そしてその教科書の最後の10pほどにはこの世界について書かれていた。
その内容をまとめてみよう。
まず驚いたのが、この世界には魔法というものがあるということだ。それも、ファンタジー作品に出てくるようなやつだ。回復魔法とか、攻撃魔法とか、
そして他にも、様々な種族がいたり、冒険者がいたり、ずいぶん昔に殺されたようだが魔王も存在したらしい。
そしてその魔王を殺した勇者には仲間がいたとか。
回復魔術師、攻撃魔術師、剣士、そして勇者の四人パーティーだったようだ。
まあつまり、この世界は元いた世界でゲームやらアニメやらラノベやらで語られる異世界そのものだった。
俺は最近になって爆発的に言語が理解できるようになった。
本を見つけたおかげもあるだろうが、やはり人間として成長してるのだろう。そして親とも会話できるようになった。
「コールちゃん。ここまでおいで。」
彼女は俺の母親。名をサラという。
まだ年齢は20代だろう。
「ついたー」
俺は歩く練習をしている。5歩までなら自分で歩ける。
「よくできましたー。」
サラは俺の頭を撫でる。美人で胸がでかい女性に甘やかされるのは実に気分がいい。
「だいぶ成長したなぁ」
椅子に座ってこちらを見ているのは我が父。カインだ。
サラよりは年上だろうか。もしくはサラが若作りしてるだけで同い年なのだろうか。
「ママって何歳?」
「女の人に歳とか聞いちゃダメよ?でも教えてあげる。ママは23よ。パパは48歳。」
驚いた。若作りしてるのは父上だったか。
後から聞いた話。カインは魔族らしい。人間の二倍の寿命があり、成長速度も遅いため、まあ精神的にも肉体的にもカインとサラは同い年ということだ。ただサラの方が老けるのが早いだろうからそのうちサラの方が年上になるだろう。いや年上なのはカインなのだが。
「にしてもなかなか来ないな。」
「そうね。そろそろだと思って身構えてるのに。」
なんの話だろうか。誰か家に来るのか?
「誰が来るの?」
俺が尋ねるとサラがふふっと笑う。
「魔力覚醒よ。あなたくらいの歳になると必ず魔力の生成が始まるの。でもまだ制御なんてできないし、魔法も弱いからなかなか気づかないんだけどね。」
なるほど。それがくれば俺にも魔法が使えるようになるわけか。
ウィンガーディ、、、なんちゃって。
それから魔力覚醒が起きるのは2年後の話だった。
「あれ?床が濡れてるわ。カイン?何かこぼした?」
「いや、液体の類は触ってないと思うけど。」
サラが首を傾げる。
「もしかして、、、」
カインも察する。
「いやいや、まだ決めるのは早いだろう!」
そういうカインはかなり興奮していた。
その日から一週間。我が家では何かと不可解な現象が続いた。その度にニヤける我が両親と言ったら君が悪いったらありゃしない。しかしここまでくれば俺も気がつく。
長い道のりだった。医者のところに連れてかれたりもした。
ただついにこの瞬間が来たのは俺を見捨てず、愛してくれた母と父のおかげとも言えよう。
魔力覚醒だ!




