エッセイ・短編 命・言葉・愛・感謝・希望等をテーマにした作品です
みえたよ
たった一言で
夜がやわらぐことがある。
誰ともつながれないと思っていた夜に、
名前も顔も知らない誰かが、
心をすくいあげる言葉をくれる。
ほんの数行。
画面の向こうからこぼれた、見えない手のひら。
気づけば、呼吸が深くなっていた。
大丈夫、とまでは言えないけれど、
もう少しだけ、生きてみようと思えた。
でも、
その人とはもう二度と会えない。
アカウントが消えるように、
あの温もりも消えていった。
それでも。
たしかに、あの夜、
誰かと心がふれあった記憶だけが、
今もわたしをあたためる。
触れた時には、もうすれ違っていた。
でも、たしかに、わたしにとって小さな光が灯った瞬間だった。
拙文、読んで下さりありがとうございます。