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短編集『極夜』

『忘却の薬』

作者: 心士 光

『忘却の薬』


大企業の研究所で働く田中博士は、今日も新しい薬の開発に取り組んでいた。彼は若い頃から記憶に関心を持ち、そのメカニズムを研究してきた。特に、辛い記憶やトラウマを忘れることができる薬の開発に情熱を注いでいた。


ある日、田中博士の研究がついに実を結んだ。彼は、特定の記憶を選んで忘れることができる「忘却の薬」を完成させた。この薬を使えば、嫌な思い出や悲しい出来事を完全に忘れることができる。しかし、使用には慎重な判断が求められる。記憶は人間の人格や経験に深く影響を与えるからだ。


田中博士はこの発明を公表する前に、自ら実験台となることを決意した。彼には一つ、どうしても忘れたい記憶があった。かつて、彼の不注意で実験が失敗し、同僚の原田が大怪我を負ったのだ。以来、彼はその記憶に苦しめられていた。今こそ、それを消し去る時だと思った。


薬を飲むと、彼は瞬く間にその記憶を忘れた。まるで、その出来事が最初から存在しなかったかのように感じられた。彼は解放感に包まれ、過去の呪縛から解放されたようだった。


この薬はストレスの多い現代社会において爆発的に普及した。心理的なトラウマの治療から、日々のストレス緩和サプリまで広く応用された。人類はすべての苦しみから解放された。


そんな日々を少し過ごした頃、同僚の原田は再び大怪我を負った。しかし、田中博士がその記憶に苦しめられることはなかった。

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