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『近所に引っ越してきた櫻子はツンデレだけど嫌いじゃない!件』 その4話 新人戦選抜試合

そして剣道選抜メンバーを決める選考試合の開催日になった。


選抜メンバーは六年生十二人の中から五人が選ばれる。総当たりで一試合ずつして一本先取で勝ち数が多い事とその試合内容を考慮して選ばれる。私は5年生の時には団体戦選抜では次鋒、悪くても先鋒には選ばれている。今回も必ず選ばれると自信はあった。


でも試合が始まると一本勝ちは取れるが内容がいい勝ち方が出来ていない。延長戦を繰り返しやっと一本が取れるという試合が多かった。


そして美沙との試合の番が来た。


(ここは焦らず確実に一本を取って必ず勝つ!)


中央で竹刀を合わせ先生の号令で試合が始まる。


「始めっ!」


「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「きゃぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっ!!」


自ずと気合が入る。そして私から積極的に攻めて行く。


「面ぇぇん! 胴ぉぉお!」


「面ぇぇぇん!」


しかしなかなか一本が決まらない、それどころか逆に美沙に攻め込まれている? なんとか会場中心まで押し戻しかまえ直す。私は決まり手がないまま時間が過ぎていき焦っていた。そして先日の練習試合で美沙に『一本』決められかけた事をすっかり忘れてしまっていた。


鬩ぎ合い、私が美沙の竹刀を跳ね上げると剣先がすっと下がった(小手が空いた、いまだ!)


「小手ぇぇぇ!」


と鋭く踏み込んでいく。すると美沙は素早く私の竹刀を下に『パシッ』と払い落し、


「面ぇぇぇん‼ 」


と綺麗に面を返された。


「一本!」


先生の声が道場に響き審判全員の白旗が上がった。みんなから拍手が上がる。この前と同じだ。(まぐれじゃなかった、逆に竹刀を下げて誘われたんだ)


そして全員の試合が終わり選抜メンバーの発表があった。(試合の結果は微妙だったけど大丈夫、五人の中には絶対選ばれる)と自分の中では自信があった。


「大将、福沢咲」


「副将、太田美和」


ここまで呼ばれないのは分かっている。


「中堅、黒田流美」


「次鋒……牧 明菜」


最後の先鋒(……お願い……)


「先鋒、嶽國美沙」


私は顔を上げた。


「以上だ」


選抜選手発表の後、頭の中が真っ白になった。私は選抜メンバーには選ばれず補欠になった。そして美沙が選ばれた。その時(私の代わりに美沙が選ばれたんだ)と思ってしまった。そして美沙の周りには同級生が集まり美沙の健闘を称えていた。


その日の稽古が終わり更衣室で着替えていると、美沙が気まずそうに話しかけてきた。


「さやちゃん……あの……」


私は美沙の話が本題に入る前に……


「選抜メンバー、選ばれてよかったね……私はだめだったけど試合頑張ってね……」


と冷たく言い返した。美沙の顔が見れない、美沙が悪い訳じゃない、だけどやっぱり悔しい。いけないことだけど美沙を悪者にしている自分がいる。

『美沙のせいで私は選ばれなかった、私のほうが強いのに』そうじゃないのに、絶対そうじゃないのに……思ってしまう自分がいる。


帰宅すると夕飯も食べずに部屋へ閉じこもる。お母さんの呼びかけに


「食べたくない、いらない」


と部屋から出なかった。


次の日から美沙を避けるようになった、無視したり、わざと背中を向けたり。それでも美沙は、話しかけてきてくれていた。それから剣道の稽古にも行かなくなった。部活に行かず帰宅するとお父さんが帰ってきていてバイクを触っている。


「お帰り! 早いね、今日剣道は?」


その問いかけに無視して家に入りすぐに二階の自分の部屋へ籠もる。ベッドに横になり大きなため息をつく。美沙に酷い事をしていると思っている。美沙は全然悪くない私の八つ当たりなのに……。



                      自己嫌悪を抱きつつ、つづく……


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