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『近所に引っ越してきた櫻子はツンデレだけど嫌いじゃない!件』 その1話 ツンデレ櫻子とその家族

プロローグ 母、彩夏。ある朝の出来事

 


いつもと変わらない週末の朝だった。私はキッチンでちょっと遅めの朝食の用意をしていた。するとリビングで主人と娘の会話が聞こえてきた。大きな声で娘がすごく叫んでいる、なんだかすごく興奮している様子だ。


「ねえぇ! いつ買ってくれるの!?」


どうやら話の内容は、携帯電話を買って欲しいという事だった。


「だってあやちゃんも持ってるし、早希ちゃんも今度の休みにパパと買いに行くって言ってたもん、それと未来もね……」


 詳しい内容は、聞こえなかったけど、娘も必死に食い下がっている。大体、部活もしていない、習い事もしていない出不精の娘に携帯電話など必要ない。娘の気持ちはわかるけど……


「通知表だってよかったじゃん、成績上がったら買ってくれるって約束したじゃん!」


(そんな約束はしていない(笑))


「みんないいなぁ! 私だけ持っていないなんてカッコ悪い! みんないいなぁ! 」


 もう半ばやけくその娘、いつの時代も変わらないおねだりをする娘との親子喧嘩(かな?)

主人は、温和で口調も優しいから娘も余計に苛立つらしい。でもこの後の主人の言葉が

私の似たような経験をした少女の時のことを思い出させてくれた。


「さくら、隣の芝生は何とやらだよ」


それを聞いた娘の反応は……


「はあぁ⁈ もういい! お父さんに頼まないぃ! ジィか、新之助に買ってもらうから!」


ジィとは、私の父の事、新之助は私の弟である。主人が続けて、


「おじいちゃんはそんな大金持ってないぞ、それとおじさんを呼び捨てはいけないなぁ」


「うるさい! あのボロバイク売って買ってもらうもん! 私の為ならそれぐらいしてくれるもん! お父さんのケチ、どケチッ! 」


(ドタドタドタドタ! バアァン! )


と騒がしく二階の自分の部屋へ帰っていった。やれやれ、やはり私の娘ではある。

 

 私も娘と同じ年頃の時、似たような思いをしたことがあった。周りの人達が私より幸せで、色々な事で自分より満たされていると思っていた。そのせいで大切な人達を傷つけてしまった事を今でも忘れられない。

 私の名前は松金彩夏、小学校6年生。家族は、お父さんの松金たかし、お母さんの和美、そして弟、新之助の四人家族だ。


お父さんは、最近、長年勤めていた仕事を辞め今は幼稚園で送迎バスの運転手をしている。


優しくてかわいい私のお母さんは、保育園の先生だ。子どもの頃、かわいくて優しかった担任の先生みたいな、保育園の先生になるという夢を叶えた私の自慢のお母さんだ。弟の新之助は、お母さんの保育園に通う年長さん。私達一家は五年前にここに家を建てて引っ越してきた。


ご近所さんは、全部で六軒、ほんとうは七軒だけど三軒先の左側が空き地になっている。広すぎるから買う人がいないという話だったけど去年の夏頃から家を建てる工事が始まった


そうしてそこに建った家は、青い屋根に真っ白い綺麗な壁、シャッター付きの広いガレージがあるとても大きな家だった。


「こんな大きな家に住む人ってどんな家族だろう、毎日おいしいもの食べているのかなぁ」


とつぶやきながら想像ですでに羨ましがっていた。


そこに引っ越してきたのは、岸野一家。ご夫婦と娘の三人家族だ。


お父さんは背が高くてスーツが似合う超イケメン、お母さんは元モデルでスタイル抜群、黒髪のロングヘアで小顔、目鼻立ちがきりっとしてものすごく美人。そして一人娘の岸野櫻子、私と同じ年の小学校五年生だ。櫻子は、お母さんに似て小顔で背がすらっとして長身、艶やかな黒くて長い髪とかなりの美人さん。いつも鮮やかなブラウスに、ロングスカートかワンピースを合わせてまるでお人形さんみたいに綺麗だった。


でも初対面にもかかわらずその日のうちに櫻子への印象が変わった。


それは、岸野一家が引っ越しのあいさつに来た時の話。お母さんに呼ばれて二階から降りるとまずお父さん、お母さんと初対面。とてもにこやかで好印象(すっごいイケメンとすっごい美人!)そして櫻子と初対面。(わっ、こっちも美人!)綺麗すぎて一瞬緊張したけど


「さやかです、よろしくね! 」


そう言って私は爽やかに挨拶したつもりだった……。そして初対面の櫻子はというと、くいっと顎上げて右斜め四十五度の視線でこう言い放った!


「よろしく」


(何こいつっ! なにこの態度!)さすがに初対面だから顔には出さなかったけど(多分出てた)

びっくりしてしまった。お父さんお母さんもその様子を見ていて二人で苦笑いしていた。

その後、岸野母が満面の笑みで、


「さやちゃんかぁ、かわいいぃ……櫻子をよろしくねぇフフッ」(笑顔はさらに美人)


初対面で『かわいい』と言われてしまった。悪い気はしないけどこっちが赤面してしまった。この時思った、櫻子母、顔や体に似合わずかなりのおっとりさんだなと。


そして新学期、六年生になって最初の登校日の朝が来た。前日に櫻子母からお母さんに登校初日だけ一緒に行ってほしいと頼まれていたので朝から櫻子の家に迎えに行った。この前あんな態度を取られたけど転校して初登校の日だから『きっと緊張してるだろうなぁ』とか『仲良くしないといけないなぁ』とか考えながら、約束の時間より少し早かったけどチャイムを鳴らした。


「ピン」「……ポー……」「ガチャッ」


とチャイムが鳴り終わる前に玄関の扉が開いた。(えっ開けるの早っ? もしかしたら中で私が来るのを待ってた?)と思いつつ私はすぐに笑顔で挨拶をした。


「おはよう櫻子さん! ごめんね、待った?」


自分なりに気を使った挨拶をした、つもりなのに櫻子、私の顔をジッと睨んで、ツンと顎を上げ足早に行ってしまった。後ろにいたお母さんから


「さやちゃん、おはようぉ櫻子をよろしくねぇ」


と声をかけられたが櫻子が見えなくなりそうだったので


「はいっ」


そう短く挨拶をしながら櫻子を急いで追いかけた。追いかけながら冷静に考えた(なんで怒っているの?待たせたから? いや、約束の時間より少し早かったはず!)結局、学校に着くまで話しかけても顔も見てくれないし完全に無視されてしまった。正直嫌な奴とその時は思った。


でもそんな櫻子が少し羨ましかった。学校は制服がなく私服で学校に通っていたけど、私はいつもTシャツにジーンズ、冬はパーカーにジャンバー。櫻子はいつも綺麗なブラウスにスカートかワンピース、冬の時期には綺麗なコート、おまけに美人で背が高いから似合うし。


私には、似合うわけないって解っているけどやっぱり着てみたいな、可愛いスカートかワンピース。

そしてなによりお父さんもお母さんも優しいし本当にいい人達。いつもお会いしたら気さくに声をかけてくれるし、どうして娘はこうなったのか不思議。


               羨ましいなぁと思いながらも……つづく

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