3じにおまちしています
※薄いですが今回も異種間恋愛です
※所謂学校の怪談や七不思議ネタ
※今度こそ正真正銘ハッピーエンドです
たけがみ まや さま
あなたとおはなししたいことがあります
ほんじつ3じにりかしつまでおこしください
おまちしております
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部屋の掃除中、捨て忘れていた昔の教科書やらノート、アルバムやらを纏めていたときに、それはハラリと床に落ちてきた。小学生の頃流行っていた、動物の可愛らしいキャラクターが描かれた便箋に、カラーペンで不器用な文字が書かれているそれ。もう、ヨレヨレで黄ばんでいるが、奇妙な出来事とともに記憶には残っていた。
「あー、まだ取ってあったんだ、これ」
これを私が受け取ったのは、確か小学生の頃。何でもない日の朝に、机の中に入っていたのだ。だいたい、忘れ物やら置き手紙やらは教員が巡回時に全て回収してしまうため、内容も相まって不思議に思っていたのも記憶している。宛先は間違いなく私なのに、差出人の名前も書いていないのだから。けど、首を傾げる私を余所に、当時の友人たちは私が誰かからラブレターを受け取ったと浮かれていた。他の何人かのクラスメイトも、そう囃し立てた。当時流行っていた少女漫画やドラマもあって、すぐにそれが頭に浮かんだのだろう。そして、先生にバレぬよう他の野次馬目的の子たちを振り切って、私と友人二人で保健室へ行くフリをして、件の理科室へ行った。友人たちは私の恋の結末を見届けるという目的で、私はこの手紙の送り主をこの目で確めるために。けれど、3時を過ぎても待てども暮らせども誰も来なかったし、いなかった。時々先生たちから隠れたりして、下校の時間までそこにいたが、それでも結局何もなかった。日が傾いて橙色の外へ出ると、友人たちが私を慰めてくれたし、顔も名前も知らない手紙の送り主に怒ってくれていた。これは、女の子の心を弄んだたちの悪い悪戯だと。……私は特に気にしていなかったのだけれど。でも、誰が送ったのかが気になっていたのは事実だし、気持ちは嬉しかったのは確かだ。
もうかなり昔のことだし、とっくにこれは捨ててしまったと思っていたけれど、まだあったなんて。不思議でありながら、少し懐かしい気持ちに浸っていた。そういえば、そんなこともあったと。何の因果か、現在私はそんな思い出のある学校に、警備員として勤めている。まだまだあの頃の校舎をそのまま使っているらしく、ボロボロではあるけれど。でも、もうこの手紙は必要ないだろう。誰が送ったにせよ、済んでしまった話だ。今はもう関係ない。そう考えて、色褪せたその手紙を屑籠に入れた。
***
武上 真弥様
貴女とお話したいことがあります
本日3時に理科室にお越し下さい
お待ちしております
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「嘘」
今回の勤務を終えて帰宅し、鞄の中身を整理していたらこれが出てきた。今子どもの間で流行っているキャラクターが描かれた便箋に、ほんのりフルーツの香りがまだ残っているカラーペンで書かれた文字のそれ。文章も昔と全く同じのそれが、今になって再び私の元に届けられた。ただ違うのは、文字が漢字に変わり、まだ紙も筆跡も新しいことだ。つまり、私が勤務中に何者かが自分の鞄に入れたのは間違いない。一体何者だろうか……ロッカーは鍵が掛けてあり簡単には開けられないはずなので、あるとしたら少しの間トイレに置き忘れたときだが……。でも、仮に自分の同僚がこれの差出人だったとして、そこまでするだろうか。考えれば考えるほど、混乱していくばかりだ。
ふと、時計を見上げる。……色々まだ腑に落ちてないことはあるけれど、また仕事に向けての準備を優先しなければならない。それに、まだこれからやりたいことだってある。気になるのは事実だけど、今は目の前のことに集中しなくては。
……結局このときは、やるべきこととやりたいことをこなしていくうちに、謎の手紙のことをすっかり忘れてしまっていた。
***
磨りガラスの窓の外は、紺を塗りつぶしたように暗く何も見えない。ロッカールーム内は、いつかの昼間の小学校より、蛍光灯の無機質な白い明かりがより際立っている。制服から私服に着替えると、今週の勤務からの解放をより深く感じとるために深呼吸をした。さあ、あとは愛しの我が家へまっしぐらだ。鞄を肩に掛け、意気揚々とまだ暗い廊下へ出た。腕時計を見ると、現在の時刻は午前2時45分。今回はちょっと、鍵を忘れたり、手持ちのライトがいきなり故障したり、教室の花瓶が突然割れてしまったり、色々あってこんな時間になってしまった。これは間違いなく、家に着いたら3時を過ぎるな……。ん?3時?
「3時って……」
ふと、このときあの手紙のことを思い出した。そして、私はある考えが浮かんだ途端、いそいそと出入口とは別の方角へ歩き出した。
目的地はもう目前というところで、心なしか忍び足になる。戸の上の札の文字を確認した。……理科室だ。少し戸の窓を見ると、微かに橙色の明かりが見える。間違いない、誰かいる!先程の巡回時は、誰もいなかったのに……。腕時計を確認すると、午前2時55分だった。
「まさか……ね」
好奇心のままここに来てしまったけれど、いざ目の前にすると怖くて堪らなかった。できたら、あの手紙とは関係ないただの不審者であればいいのにと思った。そしたら、余計なことは考えずにただ捕縛できるから。でも……もし……。
いや、やっぱりここは入るべきだ。だって、いくらあの手紙の主でも侵入者は侵入者。それに、今の私は小学生ではなく、警備員で社会人だ。だから私情は挟まず、しょっぴいてやるのが義務。それに、本当に私を好いていたとしても相手が不審者なんて願い下げだ!今、その面暴いてやるから覚悟しろ!意を決して、だが相手を刺激しないように理科室の戸を引いた。……が、動くな!手を上げろ!みたいな啖呵を私は結局切れなかった。
***
「あーもう、何が悲しくてまたここにいなきゃならねえんだよ! てか、お前何のつもりだよ!?」
「いいから、待っとけって。そのうち全て丸く収まっから」
「やってらんねえ!」
理科室の侵入者……いや、厳密には違う、室内にいた者の姿を視認して間もなく、私は呼吸すら飲み込んでしまった。……喋る骸骨と内蔵が剥き出しの人間だ。いや、これも違う。よく見ると、骨格模型と人体模型が、理科室の机を挟んで座り雑談をしているのだ。机の中心には、火の点いたアルコールランプを置いて。私の目の前で。過去に、学校の怪談や怖い噂などでしか聞いたことのないようなことが、今になって起きている。当然、私は頭が真っ白になりただただ立ち尽くすしかなかった。
呆然としたまま、私が何もできないでいると、やがて二体の動く模型たちと目が合った。……あ、まずい。
「に、人間……? もしかして、警備員!? やっべ、警備員来ちまった! マズイやばいどうしよ」
「……マジか、とうとう」
あからさまにこちらに向けての二体の発言に、私は漸く我に返る。だが叫び声は出ず、ヒッと喉から気が少し漏れただけでこれ以上は何もできない。足もガクガク震えるだけで、走り出そうと動かしたくても動かない。ああ……本当にただの不審者だったらよかったのに。こんなのが相手では、どうしたらよいかわからないし怖い。冷や汗が止まらないし、数年ぶりに泣きそう。痺れを切らしたように、骨の模型の方から立ち上がった。そして、こちらに動き出す……あ、もうだめだこれ。反射的にキュッと目を強く瞑った。
……だが、想定していた衝撃はいつまでたっても来ない。恐る恐る目を開ける……
「おい、待てってお前」
「は!? お前何言ってんだ! だってこいつ警備員だぞ!?」
私がいる出入口とは反対の方へ逃げ出そうとしている骨が、人体模型に腕を掴まれて引き留められている。……どういうことなのこれは?
「お前こそ、落ち着いてよく見ろ。念願の彼女に向かって"こいつ"はねえだろ」
「は?…………え、え?」
呆れた様子で、骨模型君にそう言う人体模型君。そして骨模型君は、一瞬わけがわからないという顔をするも束の間、何かに気づいたように人体模型君と私の顔を交互に見た。二体は何かわかったのかもしれないが……私はまだ全くもって何もわからない。この状況もただでさえ異常なのに、自我がある理科室の小道具の考えていることなんてもっと考えが追い付かないのは仕方ないと思いたい。だが、混乱している私を余所に、骨模型君は今度はゆっくりこちらに近づいてきた。猛毒の毛虫がこっちに這ってきているような恐怖に、私は逃げ出したくなる。それでもまだ動けない己の体を恨んだほど。でも……想像とは違い、骨模型君は私の前まで来ると急にモジモジと両手指を合わせ出した。
「…あ、あのう、疑ってるわけじゃねえんですが、ちょっといいスか?」
「な、何?」
「あなた、ひょっとして武上真弥さんっスか?」
「!?……そ、そうですが」
何を言い出すのかと思えば、この骨模型君は私のことを知っているようだ。一体どこでそれを……。いや、答える私も私だけれど。
すると、私がそう答えると、骨模型君は暫し茫然としたあと嗚呼!と叫び、骨しかないスカスカの両手指で顔を覆いだした。
「む、無理……」
「……え?」
「ダメ、待って、ほんとむり……」
「ちょ、あ……だ、大丈夫!?」
「あーあ、感極まっちまったか。まあ、無理もねえな」
涙こそ流れていないものの、オンオンと泣き声を漏らす骨模型君に、私は思わず情が移ってしまい駆け寄る。それに、骨模型君がますます号泣してしまい暫く大変だった。
***
漸く落ち着いた彼(?)から、事情を話してくれた。……正直まだ信じがたい状況だけど、何だか自分が泣かしてしまったような居心地悪さが恐怖を上回ってしまったので、もう何も言わないことにして。
話によると、こうだ。この骨模型君は、12年前……つまり当時小学生だった私に何度も助けられたのだと言う。元々理科室の備品を大切に扱う様子や、真面目に授業を受ける態度には感心していたが、ある時この模型君を他のクラスの男子たちがバラバラにした上で落書きまでされたとき、綺麗に汚れを落とし元に戻してくれただけではなく、「たいへんだったね、もうだいじょうぶだよ」と声を掛けられたことでもう完全に落ちたらしい。その後も、悪戯から直接庇ったり、手入れも真剣に手伝う姿に惚れ惚れしたのだとか……。
確かに、生き物係の一環で一時期理科の担当の先生を手伝っていたし、理科も好きな方だった。備品の手入れや理科室の掃除も当番でしていた。それは、朧気ながら覚えている。でも……骨模型君には申し訳ないが、それについてはあまり記憶がない。手紙のことは、印象的だったし覚えていたけど。人はされたことは覚えているけど、したことは覚えていないというけれど……これは悪いことだけではなく、いいこともそうなのだろうか。それはともかくとして、そういった理由でこの骨模型君は私にお礼や色々話してみたくて、こっそり生徒の真似で手紙で私を呼ぼうとしたそうだ。だが、結局私が時間を誤解して上手くいかず、その後酷く落ち込んでやさぐれたのち諦めたらしい。そして、それが12年経ってようやく叶ったものだから気持ちが爆発してしまったのだそう。
「お見苦しいところを見せてしまい、失礼しました……で、でも、オレほんとずっと憧れてたんで……このときを! あのときのことは、オレ永遠に忘れませんから!」
「そ、それはどうも」
物凄く感激した様子の骨模型君に、私は苦笑いしかできなかった。覚えていないのは間違いなく事実。それに昔のことだし、ただの模型としか思っていなかっただろうから仕方ないと言い訳したくもなる。まさか、模型が喋って動いてここまで慕われるとは思いもしなかったし。でも、こんな彼を見てしまっては申し訳ない気持ちでいっぱいだった。だから、こんな反応しか返せなかった。……これからは、ちゃんと覚えておこう、うん。
それにしても……だ。
「そっか……3時は3時でも深夜の方だったのか……申し訳ないことをしたなあ」
「いえいえ! 考えなしに送ったオレが悪いので! 真弥さんは悪くないッスよ!」
「俺も初め聞いたとき、馬鹿かコイツと思ったよ。何を一生懸命書いてんのかと思ったけど。真弥さん、あん時小学生だっつーのに」
「うう……馬鹿はひでえけど、返す言葉もない……」
容赦のない人体模型君と、シュンとなる骨模型君にまたも苦笑いしながらも、私は今度は人体模型君の話を聞いた。何でも、今私が持っているこの真新しい手紙を鞄に入れたのは彼らしい。目に見えて落ち込んでいる彼に事情を聞いて、ずっと何かしらの機会で私に手紙を渡すチャンスを待ち続け、そして現在私が警備員としてこの学校に戻ってきたことを知り、実行に移したのだという。入れることができたのは、トイレの花子さんに協力してもらいやはりあの置き忘れたときに入れたようだ。な、なんか、色々と凄いな……。どこからどう言ったらいいかわからないけど……兎に角、みんな仲良しなんだね!うん。
「ま、結果的にコイツも俺も報われてよかったと思っちゃいるよ。しかしまあ、話は変わるが俺も昔のアンタを知ってるけど、かなり変わったよな」
「そ、そりゃ大きくくらいなりますよ……それに私にも色々ありましたし」
「それでも、真弥さんは真弥さんっスから! 真弥さんの魅力は未来永劫っスから! 大丈夫っス!」
「あ、ありがとう……」
「おいおい、あんまグイグイ行きすぎんなよ?引かれたらどうすんだ。」
「わ、わかってるって、んなの!」
初めは戸惑ったものの、この模型君たちとのやり取りに、大人の人間ながら心がほっこりして思わず顔が綻んでしまう。深夜の学校で、明かりがアルコールランプしかないのに何だか賑やかだなあ。それに、初対面なのに幼なじみに再会したときみたいに懐かしい。
そんな暖かな気持ちに浸っていると、骨模型君がおずおずと私に話しかけてきた。
「じゃ、じゃあ……えっと、真弥さん。これから雑談会始めても……?」
ワクワクしているような、ハラハラしているような口調で、こちらの様子を骨模型君は窺っている。そうさせてしまっているのはこちらだから申し訳ないけど、そうだよね、こういうとき緊張するよね。でも、もう答えは決まっている。
「…うん、勿論、よろこんで!寧ろ12年も遅刻しちゃったし。ごめんね?」
「い、いえいえ! ほんと気にしないで、ゆっくりしてってください!」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
先程まで模型君たちがいた机の席に案内されて、不思議だけど楽しい雑談会が始まった。
***
「そういえば、二宮金次郎像が前のと変わってたけど、あれは?」
「あー、アレ歩きながら本を読むなんて行儀悪いし、危ないからってPTAの抗議で前の金次郎が撤去されちまったんスよ」
「えっ、そうなの?」
「そ。んで、今はちゃんと座ってお勉強してるお行儀のいい金次郎君と交代。前のはリストラ&解体ってわけだ。」
「な、なんか……世知辛いなあ」
「だよなあ」
「そっスよねえ」
「ここ結構年季入ってっから、俺らもいつ破棄されるかわかんねえし」
「折角真弥さんに会えたそばから縁起でもねえこと言うな馬鹿!」
「ははは…」
他愛もない……と余裕ぶって言いたいけど、そうも言っていられない話をしながら二人がわざわざ用意してくれたお茶を啜る。何せ彼らの話は衝撃的なことの連続なのだ……こちらが大した話をできないのが恥ずかしく感じるくらいには。でも、聞かずにはいられない。ちょっと怖いこともあるのに、面白すぎて癖になる。それと、このお茶もどうやら第二理科室の机の引き出しにあった(恐らくは現在の理科担当教員の)ティーバッグをくすねてきたものらしい。……断るのが申し訳なくて、薦められるがまま飲んでしまった私も同罪だから、何も言うまい。あー、でも、久しぶりにバーナー使ってお湯を沸かす様子を見るのはちょっと楽しかったかも。懐かしいなあ。……我ながらダメだ、これは。
「おっ、そろそろ夜明けか?」
「あっ、ほんとだ」
楽しい時間はあっという間だ。人体模型君の言うとおり、たくさんお話しているうちに東の空がだんだん白んできていた。腕時計を確認する。……4時15分だ。
「そろそろ帰った方がいいかも……あんまり長居しても心配されるし」
「俺らも危ねえし、これでお開きだな。」
「あっ、じゃあ、オレ真弥さん校門まで送る!」
「やめとけ見つかるぞ。ここでお別れだ」
「えー……」
申し出を人体模型君に切られて、心底残念そうな骨模型君。オーバーなリアクションにも、机に頭を伏して両手で押さえている。うん、人体模型君の言うことに従った方がいいんじゃないかと私も思うな。気持ちはありがたいけど……迷惑かかりそうだし。
「はあ……夜明けがもっと先だったら……」
「やめとけそういうの。お前、ただでさえ真弥さん小学生の頃からそんなんだったし、危ねえぞ」
「ち、ちげえよ! 勘違いすんな! てか、それ言うなら赤マントのオッサンよりかマシだろ!」
「……まあ、確かにあのオッサンは完全アウトだけどな。花子も避けまくってるし。」
「……」
別れを惜しんでくれている骨模型君には申し訳ないが、何気にサラッととんでもない会話が飛び出してきて、私は顔を引きつらせた。風評被害を夜な夜な愚痴る音楽室のベートーヴェンの肖像画とか、約束は守らないことに定評のある美術室のブルータス像とか、こっそり荷台で遊んでいたら派手に転んだテケテケ少女とか、そういう話は聞いたけど、まさか赤マントもいたとは……我が母校ながら全然知らなかった。というか、色んな意味で一番知りたくない話だった。何とか上手く笑えているといいけど……私。
「んじゃ、あとは俺たちが片づけとくんで。真弥さん、気をつけて」
「あ、こちらこそありがとう。とても楽しかった」
「おう」
人体模型君の気づかいの言葉に、素直にお礼を返した。正直、怖いものがあるのは否定できない。でも、少なくとも彼らとは過ごしていてとても楽しかった。これは間違いのない話だ。
「じゃあ、私はこれで。ありがとう、久しぶりに凄く楽しかった」
「は、はい! 真弥さんも気をつけて帰ってください!」
ブンブンと今にも取れそうな勢いで、手を降り私を見送る骨模型君に手を振り返しながら理科室を後にした。廊下の窓から見える街の向こうから、太陽がだんだん顔を出しているのが見える。私は、少し名残惜しいような気持ちで階段を降り、戸締りをして校門の外へ出た。こうして、特別な夜とともに12年前の謎は解けたのだ。……何だか夢でも見ていたようだ。本当にあっという間だった。
ふと、あの手紙がまた見たくなって鞄を探る。……ん?何かもう一枚ある?初め持っていた手紙と同じ大きさだが、紙の色や絵柄の違うものが増えていた。私は迷うことなく、紙を開いて読んだ。……そして、思わずクスッと笑みが溢れた。
「やられたなあ」
紙を再び畳んで、鞄に戻すと帰路についた。勤務後の楽しみがまた増えたことに、私は心を弾ませた。