表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/80

ナイフ

澄子は、両手を広げて光明の前に立った。

その直後、楓芽が現れ、その現場を目の当たりにした。


『楓芽さん、来てはいけません!!!!!』


楓芽はナイフを見て何かしたら悪化すると即座に判断し、じっとした。

最蔵の怒りの声と光明の冷たい言葉が響き合う中で、自分の感情が揺れ動いているのを感じていた。

心臓が高鳴り、恐怖と覚悟が交錯している。

光明の視線は鋭く、澄子の存在を冷ややかに受け止めている。


その瞬間、光明が手に持っていたナイフが一瞬の閃光のように閃き、澄子の目の前に迫ってきた。

澄子はその恐ろしさに足がすくみそうになったが、最蔵が慌てて澄子を引き留め、間一髪でその危険を回避した。


最蔵は光明を無言で睨んだ。

澄子を引き留めている手は激しい怒りと共に小刻みに震えている。

それが伝わった澄子は、それでも光明の過去を聞くことに努めようと最蔵に逆らいながら全力でナイフに手を伸ばした。


そして、ナイフを握る光明の手を掴み、自分の胸に刺した。

強烈な痛みが全身に回り、気絶しかけている。

澄子の顔は真っすぐ光明の瞳を見つめていた。


『全部、ここにおいていっていいよ』


その言葉を聞いた瞬間、光明は滝のように涙を流した。

同時に光明は澄子がナイフを受け止める表情を見て震え上がっている。

生温かい血が手に光明の手に届き、光明は重い口を開いた。

楓芽は急いで救急車を呼んだ。


『俺の話を聞いてくれるのはありがたいけど、お前らみたいに被害者同士でくっついて慣れあってるやつらに語ったところで、悪は悪だと片付けられるんだから、結局俺だけが一方的に傷つくだけなんだよ。俺の人格を否定するようなやつらに何を言ったって殺人は駄目だと言う。殺人を犯したことばかりに目を向けて、こちらの人権は牢屋に丸投げして無視するだろ。俺の過去に寄り添ったふりをして結局、最後は裏切るんだ。全員、敵だ』


澄子は頭を振って光明の手を両手で握り、私は敵ではないと伝えた。

痛みも、過去も、全てを否定されてしまうことに対する光明の怒りはナイフの痛み以上のものがあると、澄子は感じていた。

澄子は同時に、最蔵が抱えている怒りの大きさも理解している。


一方、最蔵は澄子の行動に驚き、澄子の手を見つめていた。

血が澄子の白い肌に映え、その光景が最蔵の心に何かを呼び覚ました。

怒りや悲しみ、混乱が渦巻く中で、最蔵は徐々に自分を取り戻そうと努めた。


『澄子さん…………、そんなことをしてまで止めようとするなんて………』


最蔵の声は震えていた。

澄子の努めに衝撃を受けながらも、怒りは依然として消えそうになかった。

それでも、澄子の眼差しを見て、なんとか冷静になった。


『お前の痛みを否定する気はない。だが、光明、お前がしたことは許せない。許すなんてできるわけがない』


この時、救急車が到着し、楓芽が誘導していた。

最蔵は怒りで狂う自分を止めながら光明の方を向き、静かにこう言った。


『話を聞こう…。お前の過去、そして理由を…、それを知ろうと思う…………』


その言葉は、怒りを抑えた静かな決意の表れだった。

痛みや抱える想いに耳を傾けることが、最蔵にとっての一歩となるかもしれないと感じていた。

最蔵はその一歩を踏み出す覚悟を決めた。

そして、最蔵は澄子にこう言った。


『あとは二人でお話ししますから…』


『はい…』


澄子は最蔵の瞳を見つめながら返事をし、その直後に気絶して倒れてしまった。

その後、澄子は楓芽と共に救急車に運ばれ、治療が行われた。

この時、智真も救急車に運ばれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ