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法身

徳密の心は、義徳との対話を経て、既に深く動かされていた。

しかし、ここから更に新たな感覚が目覚めることを、徳密はまだ知らない。


義徳は、優雅な身のこなしで一歩前に出ると、少し微笑んでから徳密に語りかけた。


義徳:『徳密さん、この天志(たかし)のご存在感、ただものではございませんでしょう。天志は我が寺院におきましても特別な存在であり、5歳の頃から金剛龍寺で私と共に修行をし、そのお手には未知の力が宿っているのです』


天志は義徳の言葉に目を細め、少し眉をひそめた。

天志は人に触られることを嫌う男だが、義徳の指示には従うしかなかった。

心の中で葛藤しつつも、徳密に対して特別な許可を与えることを決意した。


義徳:『徳密さん、どうぞ天志の手に触れてみてください』


義徳は静かに徳密に促した。

徳密は少し躊躇しながらも、深く頭を下げ、天志の前に進み出た。

その瞬間、空気が一瞬あたたかくなる感覚が部屋全体を包んだ。

天志の手は、分厚く、まるで石のように固く見えたが、その手には何かしらの柔らかさも秘められていることを徳密は直感で感じ取った。


徳密は天志の手にそっと触れると、まるで雷が体内を駆け巡るかのような衝撃が走った。

天志の手は、力強いだけでなく、無限のエネルギーを秘めた未知の世界へと徳密を引き込もうとするようであった。


徳密:『これは……』


徳密は言葉を失い、ただその手の中で感じる力に圧倒されるばかりだった。


天志は静かに目を閉じ、徳密の手をしっかりと握り返した。

その握力は驚くべき強さを持ちながらも、決して痛みを伴うものではなかった。

寧ろ、その力の中には温かな包容力と、深い優しさが込められていることを徳密は感じ取った。


その瞬間、徳密の視界が一変した。

目の前に広がったのは、神聖な光に包まれた大日如来の姿である。

巨大でありながらも優美な姿は、徳密の心の奥深くにまで響き渡り、その存在感が徳密を完全に圧倒した。


徳密:『ア……………』


徳密は心の中で呟いた。

天志に触れたことで、天志がただの人間ではないことを確信した。

その存在が、徳密に新たな氣づきをもたらし、深い敬意と感謝の念を抱かせた。


一方で、天志もまた、徳密の手を握った瞬間、目の前に黄金の星が見えた。

その星は輝きを放ち、天志の心の中に強烈な衝動を呼び起こしていた。

天志はその星が徳密自身の中に宿っていることを悟り、徳密が持つ力が自分の予想をはるかに超えていることに氣づいた。


天志:『こんな力を持つ者が……。欲しい……』


天志は驚きを隠せなかった。

徳密を欲しいと思ってしまうほどの強い感情に駆られたが、同時にその力を尊重し、自分が決して軽々しく扱うべきではないことを理解した。


二人はその瞬間、言葉では表せない深い絆を感じた。

天志と徳密の間にある見えない力の交錯が、二人の魂を一つに結びつけたかのようである。


徳密は深くお辞儀をして天志から手を離したが、その感触と視覚的な体験は、心に永遠に刻み込まれた。

天志もまた、徳密を見つめながら、自分の中に新たに生まれた感覚と向き合った。


この瞬間を通じて、徳密と天志は互いに何か特別なものを見出し、その存在がこれからの道において重要な意味を持つことを直感的に感じ取っていたのであった。

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