織田輝の誕生
輝が再会した人物は明慶剛仁だった。
前のような可愛い女の子の姿ではなく、お坊さんの姿であった。
輝:『なぜ、生きてる?』
剛仁:『輝さんが私が生きている世界に飛ばされたのですよ』
輝:『ならば貴様は、もうここに居られないはずだ』
剛仁:『私はあのブラックホールの中で、この世界に再び戻るために力を蓄えていました』
輝:『何を企んでいる?』
剛仁:『私の目的は、この世界を変えること。ありがたいことに輝さんがブラックホールに送り込んでくれたおかげで、新たな視点を得たのです』
輝:『視点?』
剛仁:『はい。輝さんは私に新たな力と理解を与えてくれました。そして、私はこの世界に新しい秩序を築くために戻ってきました』
輝:『貴様の言う“新しい秩序”とは一体何だ?』
剛仁:『それは、ここでは言えません。輝さんがここに居るということは、輝さんもまた何かを変えようとしているのではないでしょうか?』
輝:『私は梅美を救いたいだけだ』
剛仁:『それなら、輝さんも私と同じです。私たちは違う道を歩んできましたが、目指すところは同じかもしれません』
輝:『貴様と同じだとは思わん。だが、今も貴様を倒すことができる』
剛仁:『そう簡単にはいかないでしょう。輝さんが私をブラックホールに送り込んだのは一度だけでした。次はそう簡単にはいきません』
輝:『試してみる価値はある』
剛仁:『どうぞ、輝さんの力を見せてください』
だが、輝は攻撃の姿勢をとろうとはしなかった。
僧侶の服を身にまとい、澄んだ瞳で輝を見上げている剛仁に攻撃などできない。
輝:『…………………』
剛仁:『お寺でゆっくりお話しましょう』
輝:『行ってもいいがな、あそこは全員お金にがめつい生臭坊主の腐った寺だ。金持ちとズブズブの関係を持っているせいで、僧侶たちは裏で贅沢三昧好き放題やっている。宿も高い順から選ぶほどの煩悩の魂。添加物の魂とでも呼んでやろう。あのクソ寺に何度火をつけて火事を起こそうとしたことか。火でもつけない限り、何も変わらん。あそこでお菓子一つでも食べてみろ。あれほどに薄汚い方向から流れてきたものは他にない』
剛仁:『宿を高い順で選ぶのは私もやりますよ。生活や修行の仕方に根ざした選択なので僧侶たちも同じ考えかと。宗教的な修行においては、物質的な快適さよりも精神的な浄化や成長を求めることが多いので、修行の場として適しているかどうかを考えると高価な宿を選ぶことはよくあります。確かにうちのお寺の僧侶たちは陰で精進料理以外のものを食べたり、女性との関係を持ったりしてるのは事実です。今は権力を持った者に私が対抗できる力は持っていませんが、将来、必ず変えてみせます』
輝:『応援する。だが、言っとくが、貴様の動き次第で私は寺の連中を全員虐殺する。いつまでも変わらないなら、あんな寺など無い方がいい。その時は貴様も覚悟しろ』
剛仁:『……………』
輝:『………………………』
剛仁は小刻みに震えながら、不気味な静寂の中で輝を見つめていた。
その目はどこか異様に明るく、輝は剛仁の瞳の奥に潜む煩悩を見透かすかのように、ひたすら無言でじっと見つめ返していた。
その視線は冷たく、深い闇を秘めているかのようで、剛仁の魂を探り当てるかのようである。
何も言わずにただ見つめる輝の目は、剛仁を恐怖の淵へと引きずり込むような力を持っていた。
剛仁:『……………はい』
輝:『それと竜太との約束はどうするんだ?梅美にだって失礼だぞ』
剛仁:『それもお寺でゆっくりお話しましょう』
輝:『恋人もどうするんだ?』
剛仁:『それもお寺でゆっくりと。これからのことも含めて、お話しましょう。輝の将来の居場所も用意する予定です』
輝:『大丈夫だ。弟とも仲良しだし、お母さまともお父さまとも上手くやっている。だから、心配するな』
剛仁:『輝さんの日記を読みました。日記にはこう書かれておりました。将来はお寺のお土産売り場で働きたいと。お土産屋さんの後継者が居ないと将来は、お店が潰れます。お店のおばあちゃんもあと10年働いたら101歳になって働けるかどうか………』
輝:『大きいお寺なのだし、探せば何とでもなるだろ。今はインターネッツがあるのだから』
剛仁:『来なさい』
輝:『わかったよ……。行けばいいんだろ…』
輝は剛仁の顔を見て断ることができなかった。
いつもそうだ。
剛仁:『手を繋いで行きましょう』
輝:『もう手を繋がなくても一人で立って歩けるようになってくれ』
剛仁:『もう繋いでくれてるじゃない』
輝:『これで最後だぞ。貴様は人を頼りすぎだ』
剛仁:『その貴様というの、やめましょう。剛仁って呼んで』
輝:『剛仁も私にさんをつけずに呼んでくれ。あと、敬語も使うな。余所余所しい』
剛仁:『輝は学校楽しい?』
輝:『楽しくない』
二人は生まれた時からほぼ一緒に過ごしてきたのだから……。
それは十年前のことである。
東京のとある病院に新人看護師がいた。
『勉強ばっかりしてたら、いつの間にかアラサーになっちゃった。医療の進歩って速いから最新の知識とか技術を学び続けると、あっという間に大人になるよね』
その新人看護師の名前は斎藤友花、27歳、独身。
友花には先輩に対してタメ口が許される独特なオーラがあった。
強く、明るく、賢く、人を引きつける何かを持っている。
しかし、友花は同期から激しく嫌われていた。
どんな患者にも優しく、安心感のある笑顔で寄り添い、高いコミュニケーション能力を持っていた為、目立つ存在だった。
さらに、学び続ける姿勢があり、先輩からは頼りにされ、院長からも好かれていたため、同期からは贔屓されていると思われ、挨拶を無視されたり、目の前で悪口を言われたりもした。
それでも友花は笑顔を崩さずに対応し続けていた。
友花は忍耐強さと粘り強さを持っており、同期からの攻撃など屁とも思わなかった。
そして、どんな時も臨機応変な対応と決断力も欠かさない。
看護師としての仕事をこなすには、精神的な強さと体力が必要だと友花は誰よりも理解している。
長時間立ち続けても、足の疲れなど屁のようなものだという自信もあった。
そんな友花が看護師になる前から決めていたことが一つあった。
それは、チームワークを大切にし、患者のケアを最優先にすること。
他の看護師や医療スタッフとの協力関係を築くことが重要だと友花は常に考えている。
しかし、多くの同期や看護師は友花が院長との特別な関係を利用して特典を得ていると感じていた。
それは大きな誤解だったが、公平さを欠いていると感じると嫉妬の感情が生じるのは人間の悪い癖のようだ。
『そりゃ大学院まで行ってたら人生の約三分の一も勉強してることになるからねぇ。これからもっと大変よ』
友花:『楽しみーっ』
先輩の名前は竹内なな50歳。
この先輩だけは友花の味方であり、時に誰よりも手厳しくしていた。
それは友花に対するいじめではなく、友花が看護師として全力を尽くすための愛の鞭のようなものであり、友花にも薄々感じ取っていた。
先輩は自分たちが思っているよりも周りをよく見ているのだ。
友花への嫌がらせに竹内が気付いたのは割と判りやすかった。
それは、スタッフルームでの出来事である。
嫌がらせの主犯格Aが竹内に『斎藤さんが特別な扱いを受けてます』と言ったことから始まった。
それに対して竹内は『それは誤解です。斎藤さんは全ての患者さんに平等に接していますし、公平に仕事をしています』とはっきり告げた。
すると、Aは『患者さんやご家族からも信頼を失いかねない状況になってます』と言った。
竹内は真剣な表情でAを見つめ、『私はそんなことは信じません。斎藤さんは優れた看護師であり、誰よりも患者のために尽力していることを知っています』と答えた。
この言葉がAの激しい嫉妬に触れてしまい、友花が院長や他の上司との関係を利用して特典を得ているとの根も葉もない噂が広まったのであった。
この時点で竹内はAの仕業であることくらい勘付いていた。
嫉妬に狂ったAは自分の友人であるBとCを利用し、今度はBが院長に『斎藤さんが患者さんのご飯を勝手に食べました』と言い、Cが『私も見ました』と事実無根の噂を流したが、院長は笑顔で『そっかそっか。………じゃあ、僕が僕の目で事実を明確にすることにするよ。話は、そこからだぁ~ねぇ~』と言って、相手にしなかった。
院長と共に病院内のスタッフの中で友花に対する信頼と実績を理解している人物が居るからだ。
その後、BとCはAに『これ以上自分の品位を下げるようなことはできない』と言って絶交を言い渡した。
これがきっかけでAは自分の周りから仲間が離れていくことに気付くのであった。
その時、院長がAと二人きりになった時に院長がAの肩に手を置いて『君は人を幸せにしているかい?』と質問をした。
Aは頭を振って『いいえ……』と涙を流しながら答えた。
それから、同期からの地味な嫌がらせがピタッと止まった。
いつもなら朝から本当にコイツらは看護師かと疑うようなことをされるが、今日は違った。
寧ろ、ゾッとするほど優しい声で挨拶をされた。
『斎藤さん、担当をあなたに変更してほしいって言ってる患者さんが居るんだけど、代わってくれる?個室の織田崇文さんなんだけど……、いい?』
田淵小春、新人看護師。
友花:『オッケー♪』
田淵:『左足が関節骨折の患者さんなんだけど、17歳なのに刺青があって、ちょっと………』
友花:『何をそんなに怯えてるの?昨日なんか鼻がすごい方向に曲がっちゃった患者さんが居たよ。皮もドゥワベロス~~~ンって剝がれちゃって、お肉が涙を流しながら飛び出て、骨までこんにちはしてたの。びっくりだよねぇ~。じゃあ、行ってくるね』
田淵:『う……うん、お願いね……』
友花:『はぁーい!』
友花は元気よく返事をし、担当変更を希望している患者の病室へ向かった。
廊下を歩きながら、なぜその患者が自分を希望したのか少し気になったが、特に深く考えることもなく、任務を全うするだけだった。
友花は病室の扉をノックし、軽く開けて中を覗いた。
そして目の前に広がる光景に息を呑んだ。
なんと、患者が朝から豪快にお酒を飲んでいたのだ。
テーブルには日本酒の瓶がびっしりと並び、患者は酔いが回った顔で友花を睨みつけた。
『なんや?』
友花は瞬時に冷静さを保ち、状況を把握しようと努めた。
頭の中で、どう対応するべきかを考えた。
酔っ払った患者をどう扱うか、医療現場では想定外の事態だ。
すぐに上司に報告するべきか、まずは患者の安全を確保するべきか。
病室で初めて心の中で葛藤が渦巻いた瞬間だった。
同時に患者が担当を変更したのではなく、田淵が自分の意思で変更したようにも感じた。
友花:『崇文ちゃ~ん、朝からお酒飲むのはやめましょうねぇ~。健康に悪いし、ここは病院だぞ~』
友花は穏やかに、しかし毅然とした態度で患者に話しかけた。
崇文は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにまたお酒を飲もうとした。
友花:『はい、没収~。未成年がお酒なんて持ち込んじゃだ~め!ここは病院だよ』
崇文:『ええやん、これくらい』
すると、崇文は新しいお酒を取り出して飲もうとした。
そこで友花は無表情で崇文の顔に近付いて、静かにこう言った。
友花:『ここは病院だっつってんだろ。崇文ちゃんが有難迷惑だって吠えても感情があるから心配するし、皆タコみたいにあっちこっち動き回って仕事してんだよ。休日どころか休憩すらねぇんだわ。治療が終わるまで大人しくしとけ。次飲んだら肛門科に引きずり出して大腸カメラ3本ぶち込むぞ。いいんか?それで』
崇文:『病院で飲む酒がうまいねん』
友花は、さらに一歩踏み込んで強気に出た。
友花:『じゃあ、私が特別に美味しいお水を入れてあげるから、それで我慢しなさい。成長期にお酒なんか飲んでたら、脳に悪い影響を与えるんだよ。特に前頭前野っていう大事な部分に影響を与えて、判断力や行動のコントロール、学ぶ能力に影響を及ぼすんだから。こんなに大量摂取してると身体にも悪いし、骨の成長とか筋肉の発達にも悪影響だよ。アルコール依存症になる前にやめること』
崇文:『筋肉にも……?あかん!そら、あかんわ!わし、もう酒やめる!』
友花:『よちよち。じゃあ、一先ず全部出そっか。お酒。ねっ☆』
崇文:『ちぇっ!』
崇文は大人しくお酒を全て友花に渡した。
友花は崇文の頭を撫でながら『えらいでちゅねぇ~』と褒めた。
友花はそのまま病室を出て、スタッフルームに向かい、崇文がお酒を摂取したことを看護主任に報告した。
そして、お水と紙コップを二つ持って戻ってきた。
崇文の前にお水を差し出すと、崇文は少し不満そうな顔をしながらも、仕方なく受け取った。
崇文:『お前、俺が酒飲んだこと誰かに言うたやろ?』
友花:『うん、報告したよ』
崇文:『いらんこと言わんといてや』
友花:『崇文ちゃんの健康が心配だったんだもん。じゃあ、一緒にお水飲もっか。ちょうど喉乾いてたんだぁ』
そう言って紙コップにお水を入れ、友花も一緒に飲んだ。
この時間に堂々とお酒を飲む崇文を見て、本当寂しかったんだろうなと友花には勘付いていた。
お酒を飲んでいた時の崇文の横顔は、何とも言えない寂しさを感じるものがあった。
友花:『美味しい。休憩室で同じのを飲んだことがるのに今日が一番美味しいよ』
崇文:『またまた、そんなこと言って……。ごくごくごっくん!(飲む自然な音。口では言ってません)………あっ、……美味い。いつも飲んでるのに今日は甘みがあって優しい味がするっ!なんでやろう?』
友花:『二人だからだよ』
この時、崇文は、友花が天使のように見えた。
友花:『何か困ったことがあったら、いつでも言ってね。私ができる限りのことはするから』
崇文:『おおきに』
その後、血液検査や尿検査などの身体検査が行われ、治療が始まった。
友花は崇文の様子を見守りながら、崇文が無事に治療を終えるようサポートを続けた。
その日、友花は田淵を呼び出した。
友花:『田淵ちゃん、これからも患者さんのために全力で働いてくれると私は信じてるよ。どんな状況でも、患者さんのことを第一に考えて、人としての尊厳を守るよう心がけようね』
田淵:『斎藤さん』
友花:『なぁに?』
田淵:『ありがとう』
田淵は、友花の一言で自分が自分の意思で担当を変更したことが見抜かれていたことに気づき、自分の嫉妬深さという醜さと向き合うことになった。
ごめんねとは言わない田淵だったが、“ありがとう”と言った言葉に友花は田淵の込めた思いを笑顔で受けとったのである。
一方、友花の周りでの同期たちの態度も次第に変わり始めた。
友花が崇文の問題に対処したことで、友花の実力とプロフェッショナリズムが認められ、徐々に嫌がらせが減っていった。
友花はそれでも油断せず、常に周りの状況に目を光らせ、自分の役割を全うした。
そして、次第に友花の真摯な姿勢に感化された同期たちも、友花を見直し、次第に協力的な関係を築いていった。
時間が経ち、友花は病院での経験を重ねながら、ますます成長していった。
友花の信念であるチームワークと患者のケアを最優先にする姿勢は、やがて病院全体に広まり、職場の雰囲気も改善されていった。
友花の存在は、病院の一つの柱となり、友花の名前は同僚たちの間で尊敬と共に語られるようになった。
そして、その先に待つ新たな試練や挑戦にも、友花は揺るぎない信念を持って立ち向かっていくことだろう。
友花の輝く笑顔と強い心は、病院内だけでなく、多くの患者や同僚たちに勇気と希望を与え続けていくのだった。
こうして、一つの壁を越えたと思ったのも束の間。
友花への試練は、またすぐにやってきた。
いつもの笑顔で出勤し、崇文の病室へ入ると、崇文の様子が明らかに普段とは違った。
普段ならば自分から先に『おはようさん』とコンマ0.1秒くらいの速さで挨拶するのだが、どういうわけか友花に挨拶されても無言だった。
友花:『おはよう、崇文ちゃん。元気?』
崇文は深呼吸をして、少し表情を引き締めた様子で答えた。
崇文:『実は話があるんや』
友花:『なぁに?』
崇文は少し口ごもりながら、最後に決意を込めて言った。
崇文:『好き』
友花:『ありがとう。私も好きだよ』
崇文は深く息を吸い込み、目を見つめながら言葉を重ねた。
崇文:『そういう好きやないねん。女として愛してる』
友花の顔には戸惑いとともに、崇文の真剣な気持ちが伝わってきた。
友花は優しく微笑みながら、少し悩んだ表情で答えた。
友花:『ありがとう。でも、ごめんね。私は人に恋をしたことがないから愛が何なのか分からないの』
その言葉には謙遜と真剣さが混ざっていた。
崇文は諦めきれず、毎日口説き続けた。
ある日、崇文は愛が分からないと言った友花のことを考えた。
自分のことを話したら心を開くかもしれないと感じた崇文は、ついに勇気を振り絞り、友花に自分が岸和田のヤクザであることを打ち明ける決心をした。
だが、この一歩踏み出した先に待っていた答えは完全に叶わない恋となってしまった。
崇文:『友花、実はひとつ話があるんや』
友花は興味深そうに彼を見つめ、微笑む。
友花:『なぁに?』
崇文は少し緊張した表情で続けた。
崇文:『わし、岸和田でヤクザをやってるんや』
友花は慎重に返答した。
友花:『崇文ちゃん、それは……』
友花は口を開いて言葉を探し、落ち着いた声で続けた。
友花:『私のお父さまは学校の先生で、お母さまは商店街のお店を経営してるから、ヤクザの男性と付き合うのは難しいんだ。住む世界も違うし、ヤクザの妻になる自信もないの。ごめんね』
友花の声には決意が込められていた。
崇文はその言葉を受け止め、深く頷いた。
崇文:『わかった』
しかし、崇文は諦めることはなかった。
友花との出会いが崇文にとって特別なものであり、時間が解決することを信じていた。
退院の日が近づくにつれても、焦らずにただ静かに友花のことを考え続けた。
そしてついに、退院の日が訪れた。
崇文は笑顔で岸和田に帰ってしまった。
その後、崇文は建設業で働き、新しい生活を始めた。
時が経ち、崇文は再び東京に行く機会を得た。
崇文は18歳になり、以前よりも成熟し、自信を持って再び友花にアプローチした。
友花の心を動かすために、今度こそ成功するための準備は整っていた。
崇文の道は決して平坦ではなかったが、愛と決意は不屈であり、友花に対する気持ちは永遠に変わらないものだった。
ところが、友花の気持ちを動かすことは1mmたりともできなかった。
そこで崇文は1日デートを提案した。
ここでも友花にお断りされたが、崇文は一歩も引き下がらなかった。
後に友花は崇文が愛する人を振り向かせるために建設業で働いていることを知り、心の変化が訪れた。
そして愛知県で崇文と友花が初めてのプライベートを過ごした。
その時、崇文と会話をする中で友花は居心地が良い相手と感じていたものの、この時点ではまだ愛を知ることはできなかった。
2度目のデートは岸和田で過ごした。
ここで、愛を知ることとなる。
それは崇文の友人と偶然遭遇した時の出来事である。
崇文が東京で入院した時に複数の女性と完全に縁を切ったことを友人に暴露され、友花は自分のことをこれほどまでに真剣に愛されていると知り、ここで漸く崇文の一途な愛を受け取ったのであった。
友花の心に崇文の存在が刻まれる中、感情が変わり始めた。
友花と崇文の交際は順調に進み、1年後にはお互いに結婚を真剣に考えるようになった。
しかし、その幸せな時間は突如として終わりを告げることになった。
友花の父上は、ヤクザと交際していることに強く反対した。
教師としての自尊心から、自分の娘が犯罪と結びつく存在と関係を持っていることに耐えられなかった。
母上も同様に、商店街を営む者としての地位と家族の評判を守るために、友花の選んだパートナーに対して不良というレッテルを貼ったのだ。
友花の家庭はこの問題で深刻な危機に瀕した。
父上は友花に対して絶縁を宣言し、友花を家族から追放することまで考えていた。
母上も同様に、友花が崇文との関係を続けるならば、家族から疎外する覚悟を固めていたのだという。
友花は絶望の中で、自分の愛情と家族の忠誠の間で引き裂かれる苦悩に直面した。
崇文は友花を支えようとしたが、友花の家族が示す威圧的な反応の前には無力であった。
二人の将来は暗雲に包まれ、愛と家族の忠誠の間で揺れ動く壮絶な試練が待ち受けていた。
崇文は友花の父上の反対に直面し、友花が自分との関係を選ぶことができるようにするために戦うことを決意した。
最初に崇文が取り組んだのは、友花の父上との対話である。
崇文は敬意を持ちながら、岸和田での自身の立場や人柄を現地で説明し、ヤクザとしての生活がどのように形成し、人となりや信念にどのように影響を与えたかを明らかにした。
友花を本当に愛しており、将来と幸福を第一に考えていることを説明した。
次に崇文は、友花の母上と直接会い、母上の商店街での立場や家族の名誉を守ることの重要性を理解しながらも、自身がどれほど真剣に友花との将来を考えているかを伝えた。
自分の過去を受け入れつつ、今後は建設業で正々堂々と生活していることを示し、友花が崇文と共に歩む道がどれほど真実であり、安定しているかを示した。
同時に、崇文は友花自身に対しても尽力した。
崇文は友花のために時間を割き、友花の夢や目標に向けた支援を約束し、友花が幸せになれるように自分の全てを捧げることを誓った。
友花が崇文に完全に信頼し、崇文の愛が本物であることを確信させるために、優しく、耐え忍んで、そして強くその気持ちを示した。
崇文は友花が自分との未来を受け入れることができるよう、懸命に何度も戦い続けたのである。
12月1日、崇文は再び明治神宮外苑のイチョウ並木の前でプロポーズをした。
この特別な場所で、心を込めて友花に愛の言葉を伝えた。
長い間、友花の両親との関係は緊張した状態にあったが、崇文は両親の理解と認めを得るために努力し続けていた。
友花の父上には、崇文の真摯な態度と過去の自己紹介が父上の心を動かし、少しずつ理解を深めさせていたのだ。
そして、友花の母上も、崇文が建設業で真面目に働いていることや、友花を真剣に愛していることを知るにつれて、崇文を受け入れることができるようになっていた。
12月1日のプロポーズの時、崇文は友花の両親の前で、自分の誠実さと友花への深い愛情を改めて伝えた。
崇文の言葉と行動から、友花を幸せにする決意を理解し、最終的には両親も結婚に対して承諾を与えたのである。
こうして友花と崇文は将来を誓い合い、家族としての絆を深めていったのである。
そして、2人は結婚し、1年後の6月23日に第一子が誕生した。
それが織田輝である。
次回は剛仁の誕生伝説をお楽しみに
剛仁は1月1日生まれのAB型となります




