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短編とかその他

隣り合う数字

作者: 仲仁へび



 少年は、永遠に繰り返す。


 何度も同じ時を繰り返す。


 生まれてから、死ぬまで。


 人生を繰り返していた。


 その繰り返しの内容は様々だ。


 住む場所が変わったり、両親が変わったりしている。


 けれど、時代の流れはまったく変わらなかったから、おそらく同じ世界でループしていると見られた。


 無限の時を繰り返す少年は、心を疲弊させていた。


 救いでもあり呪いでもあるのが寿命だ。


 どうしてだか、少年は8歳までしか生きられなかった。


 病気や事故、事件に巻き込まれて、短い生涯に幕をおろしては、また生まれてくるのだ。


「数字の八は演技が良い」


 漢字にすると末広がりだから。

 八は繁盛や繁栄、発展などを意味しているから。


 多くの人からそう言われているのに、その8の歳で生涯を終えるのは、質の悪い皮肉だった。







 同じ世界に生きる少女もまた、


 8歳までしか生きられないループ経験者だった。


 少女は知らないが、少年と同じ時期に生まれ、同じ時期に死んでいた。


 その少女もまた、永遠の繰り返しの輪の中に囚われていた。


 様々な人生を経験するものの、8歳で死ぬ事はまったく少年と同じだった。


 そんな少女は、諦めずに様々な人生のルールを経験して、ループの突破口を探し続けた。


 少女の精神が、少女とは言えなくなっても、ずっと探し続けていた。






 そして、不屈の精神を持った少女はある時に出会う。


 同じ運命を持った少年と。


 繰り返した人生の終着点。


 繁栄と発展を意味する8の歳の終着点で、出会う。


 少女の8と、


 少年の8は……、


 同じ世界にありながらも、隣り合う事なく、別々の場所で生きていた。


 しかし、


 少女の8と少年の8が隣り合う事によって、はじめてループ脱出への活路が開かれたのだった。






 繰り返す時の中で二人とも、両親が異なる世界が多く存在していた。


 それは、少年少女が孤児として保護され、幼い頃に養子に出されていたから。


 双子の家族であった二人は赤ん坊の頃に、別々の施設で保護され、それぞれの家庭へいきつく。


 双子は、自分の本当の家族を知りたいという思いを、心の底で抱いていた。


 だから、その答えを引き寄せるために、いくつもの人生を経験するような繰り返しの時がうまれていたのだった。


 その現象は、少年と少女の人生が隣り合う事で終了する。


 8歳の頃に、彼等は双子の家族として、出会う事になった。


 二人にとって、その8が意味するものは、正しく縁起の良いもの。多くの人が思うような意味へようやくなったのだった。


 それからの人生、双子は常に隣り合いながら、88歳になるまで生活していった。


 苦難がある時はささえあって、喜びの時は祝福しあいながら。



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