9:邪魔する奴は料理してやる
もう暴力展開はないはずなので、これからはちゃんと料理小説です! なので実質初投稿です!
「――はふぅううううー----っ! おいひぃっ、おいひぃいですぅううう!」
夢中になって麺を啜るマオ様たち。『刻みネギたっぷりの特製ラーメン』は大好評だった。
「うめっうめっ! あぁこれだよコレッ!」
「十数年ぶりのラーメンうめぇえええッ!」
「ウチの家でも、かーちゃんにたっぷりとネギを載せてもらって食ってたっけなァッ!」
みんなすごく幸せそうだ。
ズルズルごくごくッと、勢いよくラーメンを食べる音を暗黒街に響かせる。
これはたくさんおかわりを用意しないとね。それに『黒龍殿』以外のお客さんたちにも食べさせてあげないと。
「さぁさぁみんなっ、どんどん作るから食べてねーっ!」
汗を拭いながら笑いかける。
やっぱり食べてくれた人が喜んでくれるのは嬉しいね。今はまだ簡単な料理しか出来ないけど、いずれはもーっと種類を増やしていこうと思う。
そうすればシンランの人たちみたいに、求めていた味に出会える人が増えるかもだからね。
まぁ戦闘力もちょいちょい増やすけど。
「あの、ルシア様」
そうしてラーメンを作りまくっていた時だ。頬を上気させたマオ様が、お椀を手に話しかけてきた。
銀色の長髪が横顔に張り付いてて色気を感じるぞ……。
「ど、どうしたのマオ様? おかわり?」
「あっはい! それもあるんですけど……改めて、ありがとうございました。アナタのおかげで、再び故郷の味を楽しむことが出来ました」
深々と頭を下げるマオ様。彼女に続き、『黒龍殿』の人たちも平伏してくる(※お椀を持ちながら)。
「それでルシア様。提案なのですが、よければ安全な街に移りませんか? もちろん妙な仕事は頼みません。その上で護衛も家の用意も行いますので」
「えっ、それってどういうこと……?」
ヤク入り料理も作らなくていいと? それじゃあマオ様たちが損するだけなんじゃ?
そう疑問に思う僕に、彼女は続ける。
「……もしもアナタに何かあったら、故郷の味をもう一度失うことになってしまいます。それだけは絶対に避けたいんですよ」
「あぁ、なるほどね」
ベリアルは危険な街だ。明日どうなってるかはわからない場所だもんね。
「本当はずっとこの街でラーメンを作って欲しいんですけどね。そうすれば私たちも毎日食べにいけますから。
……でもアナタの身を案じるなら移動させるのがベストでしょう。それで、どこに向かいますかルシア様? 住みたい街はあったりします?」
僕が引っ越す方向で話を進めるマオ様。まぁ、提案を飲まれると思って当然だよね。好きこのんでこの街に住みたいと思う人間はいないだろうから。
だけど。
「ごめんねマオ様、その提案は断らせてもらうよ」
「えぇっ、どうして!?」
まさか断られるとは思わなかったらしい。うん、僕も今朝までなら街に住むのが怖かったんだけどね。
だって、『黒龍殿』の人たちが報復に来るんじゃないかって思ってたし。
「たしかにここは怖い街だよ。でもマオ様たちが味方になってくれたってわかったら、なんだかやっていけそうな気がしてきてさ。だから、別に引っ越さなくてもいいかなって」
それに。
「マオ様たちの笑顔を見て、この街で果たすべき『役割』みたいなのを見つけた気がするんだ」
「え、それって一体……?」
首を傾げるマオ様。役割とは何なのか彼女に語ろうとした――その時。
街の入り口のほうから、人が地面に叩きつけられる音が響いた。
「うぐぅっ!?」
「あばよ、ゴミギフトの元お嬢様。せいぜい悪徳都市の連中に可愛がってもらうんだなぁ」
倒れ伏した女の子と、そんな彼女に唾を吐きながら馬車に乗り込む兵士たち。
……なるほど。マオ様が言ってた通り、どうやら僕みたいにギフトが原因で捨てられる子は割と多いらしい。
「まっ、待ちなさいよアンタたち! こんなところに置いてかないでよッ! ぁ、あたしを誰だと思ってるのよォ!」
強気に叫ぶ女の子。されど馬車は一切止まらず、彼女を置き去りにしていった。
「まって、待ってよぉ……!」
叫ぶ声音が嗚咽に変わる。
ああ、僕が捨てられた時は使用人さんたちが惜しんでくれたけど、あの子の場合は救われないな。もはや彼女は独りぼっちだ。
――だからこそ。
「お嬢さん、怪我はない?」
みんなから見捨てられたお嬢様に、僕は近づいた。
そして。
「はい、どーぞ」
「……ふぇ?」
人生のどん底に入る彼女に、一杯のラーメンを差し出したのだった。
「とりあえずさ、ご飯食べようよ。まずはお腹をいっぱいにしてから、これからのことを考えよう?」
「ぇ……アンタ、は……?」
呆気に取られているお嬢様。
悪の都からやってきた僕を訝しげに見るも、ふいに整った鼻がスンスンと動いた。
ラーメンの香ばしい匂いを自然と吸い込んじゃったんだね。彼女の顔が真っ赤になる。
「うぐっ、レ、レディにあるまじき行為を……っ!」
「あはは、いいよいいよ。……ここに来るまで、あまりご飯はもらえなかったんでしょ?」
「っ……うん……!」
悔しげに頷く女の子。彼女の頬はわずかにやつれていた。
あぁ、やっぱりね。あの馬車の兵士たちの様子を見ればそんな感じだろう。
彼らが女の子の分も食べてしまったか、あるいは元々彼女の親が『どうせ死ぬのだから食わせなくてもいい』と命令した結果かな。どちらにせよ酷い話だ。
「悲しかったよね。ギフト一つでいきなりゴミ扱いされてさ」
「うん……」
「悔しかったよね。この街に捨てられるってことは、『死ね』って言われたようなものだもん」
「うん……っ」
たとえ無能扱いされても。たとえ親から捨てられて、悪の都に放逐されても。
だとしても、
「でも――生きたいよね?」
「うんッ……!」
「よしわかった。だったら僕が全力で救おう――!」
涙を流す彼女に宣言する。
ああ、いっぱいご飯を食べさせよう。笑顔になるまで美味しいモノを作ってあげよう。そして彼女が新しい生き方を見つけるまでは、何があっても守り抜いてやろう。
それが僕の見出した『役割』だ。自分と同じ理由で捨てられた子を、お腹いっぱいにさせて生きる元気を与えてやる。
身勝手な親たちの思うようにはさせるかよ。お前たちが死ねと思うなら僕が生かそう。
邪魔する奴は料理してやる。
「僕の名はルシア。これからは僕のことを親だと思ってね?」
「ママ……?」
「いや男だから……」
こうして僕は、捨て子たちの保護を始めたのだった――!
ここまでありがとうございました!
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