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8/15

8:ラーメンヤク抜き入ります!

初投稿です



「――女王! 今すぐにでもあのガキを殺しに行きましょう!」


 たった一人の子供に敗北した日の翌朝。

 マオ・シンランと『黒龍殿』の幹部たちは、例の少年・ルシアへの対応について議論していた。


「アイツが泊まってる宿を特定しました。寝てるうちにやっちまいます?」

「宿屋の店主を買収して毒を盛る手も……」

「いや、あそこの店主はアソコ集めが趣味の狂人らしいぞ? 関わらないほうが……」


 幹部たちは彼を抹殺する方針だった。


 ……今回の一件で死人は出ていない。あのルシアという少年が加減してくれたことは分かっている。本来ならば感謝すべき相手だ。

 されど、彼はインペリアル帝国の人間である。その一点が駄目だった。


「相手は帝国人……やはり、消すべきだ……!」


 シンラン人たちの恨みは深い。

 たとえ少年がシンラン滅亡には関わってなかったとしても、その時にはまだ産まれてすらいなかった者だとしても、帝国人というだけで罪なのだ。

 そんな相手に恩を着せられるなど屈辱だ。消してしまおうと吼え叫ぶ。


 ――だがその時。沈黙していたマオ・シンランが、ふいにぽつりと呟いた。


「……そういえば、一族以外の者に復讐を肯定されたのは、これが初めてでしたね」


『っ……!』


 その一言に押し黙る幹部たち。

 そんな彼らに女王は続ける。


「私は、彼の提案を大人しく飲んでおくべきだと思います。いいじゃないですか、いざというときに助けてあげれば」


「し、しかし、ヤツは帝国人で……」


「えぇそうですね。しかし、あの子の戦闘力は異常です。感情論で手を出すには危険すぎる。

 もしも再び彼を怒らせたら、今度こそ復讐どころじゃなくなりますよ?」


 マオは静かに思い出す。

 あの少年が最後に見せた、とても美しく邪悪な微笑。

 アレは完全に『悪党』のモノだ。

 

「……この街に捨てられたばかりの少年と聞いて、私たちは舐めていましたね」


 街のチンピラたちを蹴散らせる程度には強いと聞いていた。

 だが、所詮は今まで平和な世界で暮らしていた子だ。組織的な力で脅してやればどうにかなると思っていたが……、


「あの子には、悪の才能があります。己が理想を守るために躊躇なく暴力を振るえる人種です。

 次に彼を襲おうものなら、今度こそ私たちは全滅させられますよ」


「女王……」


「だからもう、彼のことは放っておきましょう。私たちの復讐を認めてくれた子なんです。ならば邪魔にはならないでしょう」


 それが女王の決定だった。

 彼女の言葉に、幹部たちは渋々頷く。

 彼らとてわかっているのだ。真に復讐を考えるなら、たった一人の危険な相手にかかずらうのは愚かだと。


「反対意見はありませんね? では会議は終了です」


 そうして立ち上がる女王たち。

 さぁ、気を取り直してまた頑張ろう。失われたシンランの者たちや数々の文化は戻ってこないけれど、それでもいつか復讐してやろう。

 その夢に向かってまた努力しよう、と――そう思った瞬間のことだった。


『――スンッ、スンスンスン!』


 女王や幹部たちの鼻が本能的に動き始めた。

 本人らが驚くよりも先に、彼らの鼻孔は遥か遠くから流れてくる『懐かしい香り』をキャッチする。


『こ、こ、この匂いはぁぁああ!?』


 一斉に駆け出す『黒龍殿』の者たち。

 もはやどうにも止まらない。彼らの本能が吼え叫ぶのだ。

 “あの懐かしき最高の味が、この先にあるぞ”――と。



 ◆ ◇ ◆

 


「こ、『黒龍殿』のみなさん!? なぜここにっ!」


 マ、マ、マジでどういうことなのぉ……!?

 気付いたら押し寄せてきたマオ様たち。全員なぜか興奮気味で汗だくだ。

 突然の彼らの登場に、並んでいたチンピラさんたちがビビッてその場を退いてしまった。

 人の壁がなくなったことで、マオ様がつかつかと屋台の前にやってくる。あ、アタマの龍の角が脇にいたチンピラさんに当たった。痛そう。


「ルシア・スカイアークッ! スープの匂いを嗅いでやってきましたぁぁぁああ!」


「うぇえっ!? め、めちゃテンション高くないマオ様!? あとスープを煮始めたってついさっきのことなのに……」


「全力ダッシュで来ましたぁあああああッッッ!」


「ひぃっ!? やっぱりなんかおかしいよマオ様ッ!?」


 細目の大人なお姉さんだったのに、もう両目ガン開きだしめっちゃ叫んでくるじゃん!? こわぁ!?


「あぁああぁ間違いありません……! この香りは、失われしシンランの国民料理『拉麺ラーメン』のものじゃないですかぁああぁ……スゥゥゥゥゥン……!」


 とろけた顔でふかーく匂いを吸い込むマオ様。他の『黒龍殿』のみなさんも匂いを吸い込みまくったせいで、周囲の空気が薄くなった。迷惑。


「ていうか、ラーメンってシンランの国民料理だったんですか?」


「えぇそうです。どの家にも先祖代々受け継いできた秘伝のスープがあり、みんな毎日食べているほどでした。ですが……」


 マオ様は語る。

 スープのレシピを受け継ぐのは、その家の女性の務めだったとか。

 だが十五年前の戦争時、インペリアル帝国は『龍との混血児を始まりとした一族とは、なんと気色が悪い。民族浄化だ。お前たちの血を一切未来に残さん』と言い放ち、なんと非戦闘員の子供や女性たちを集中的に攻撃していったのだ。

 その結果、


「……逃げることが出来たのは、百名ほどの男性の兵士と私だけでした。

 そして当時の私はまだ四歳。スープのレシピは教わっておらず、見事に失伝してしまったわけです」


「そうだったんだ……」


 すごく壮絶な話だった。

 まず帝国が民族浄化なんて真似をしてたこと自体に驚きだ。歴史書には『シンラン王国は非戦闘員までも兵士にする暴挙を犯し、やむなく彼らも撃滅することになった』――と、向こうが悪いように書かれていた。

 どっちの言い分が真実かはわからない。でもマオ様の語った内容が本当なら、そりゃ違法薬物を売りさばいてまで帝国に復讐しようと思うわけだ。


「あの、ルシア様。なぜアナタがラーメンスープのレシピを? ……まさかシンランの女の子だったんですかッ!?」


「って違うよっ、男だよっ! ……僕のギフトはね、はるか遠い世界にある食材を呼び出すことが出来るんだ。それでたまたまその世界にも、ラーメンって食べ物があったわけ」


 そんなことあるのかな、って思ったけど、絶対にない話じゃないか。

 なにせギフト『異世界料理人』を与えられたのは僕が初めてって確証はないからね。

 もしかしたらシンラン王国を作った龍人さんが、僕と同じか似たようなギフトを貰ってた可能性もある。


「そうですか……もはや消え果てたと思っていたラーメンですが、どこか別の地にちゃんと根付いていたんですね。

 母がよく作ってくれた料理ですから……なんだかすごく、嬉しいです……!」


 切なげに微笑む女王様。他の黒服さんたちも似たような表情だ。

 きっと心の底から、ラーメンという料理を愛していたのだろう。


「あの……ルシア様。先日、迷惑をかけた身であることを承知の上で、お願いがあります。どうか私たちに、ラーメンを作ってくださいませんか……っ!?」


 涙さえも浮かべながら彼女は訴えかけてきた。

 ああ、そんな顔をしなくてもいいよマオ様。僕の答えは決まってる。


「もちろんだよっ! みんなの懐かしのラーメンを、お腹いっぱい食べていってね!」




※ようやくほのぼの料理小説になってきた気がします(冒頭一行目が『あのガキを殺しに行きましょう!』というセリフだったことはさておき)


『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』『これに懲りたら』『もう暴力はするなよ』

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― 新着の感想 ―
[良い点] 早く、具入りの麺も食べたいっす~♪
[良い点] おお…… むしろ民族浄化してそうな国っぽいのに! それが民族浄化の憂き目にあうとはなんたる設定の妙! ラーメンおいしそうです!
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