5:決戦、『黒龍殿』!(決戦!?)
料理やめたので初投稿です
「――ついてこいガキ。さもなくば殺す!」
「ついていったら殺さない……?」
「つれていった先で殺す!」
「えええええええ!?」
……ルシアです。ただいま、『黒龍殿』という組織の人たちに連行されています。たすけて。
「まったく、我らが縄張りでヤクを売るなどけしからんッ! ちゃんとルールを守れよガキめ!」
「いや法律守ってない人たちには言われたくないんですけど!?」
「黙れガキめッ! 前立腺を大人にするぞッ!?」
「ひぇぇこわい!?」
プンスカと怒っている組織の人たち。全員ボウズで黒い丸眼鏡をしており、ぶっちゃけ見分けがつきません。
あとこの人達が纏っているヒラヒラでピッチリした服って、たしか『シンラン王国』ってところの民族衣装だったような……?
十数年ほど前、僕たちの国『インペリアル帝国』との戦争に負けて滅んじゃったんだっけ。そこの人たちがどうしてこの国の暗黒街に?
「む、何をジロジロと見ている?」
「えっ!? あっ、あぁいえ、綺麗なお召し物をしているなーと!」
「っ…………フン!」
鼻を鳴らされてそっぽを向かれてしまった。どうやら気安く言葉を放ったせいで不機嫌にさせてしまったようだ。
うぅ……これ以上はもう喋らないようにしよう。
――そうして、沈黙したまま悪の都を歩いていくと……、
「ついたぞガキ」
ボウズ眼鏡さんの声にハッと顔を上げる。
そこには、黒と金の装飾に彩られた異国の小城が建っていた。
「入城を許可してやる。――我らが女王・マオ様がお呼びだ」
◆ ◇ ◆
外観と同じく、城の中も豪奢だった。
僕だって貴族家の息子だ(※八男だけど)。そこら中に飾られた調度品が、全部一級のモノだってくらいわかる。
どうやらこの城の主様は相当な大金持ちのようだ。
「この先が玉座の間だ。決して無礼は働くなよ……?」
城を奥へと進んでいくと、立派な大扉が現れた。
身だしなみを整えるボウズ眼鏡さんたち。やがて彼らが緊張気味に、その扉を開けると――、
「あらあら。噂以上に可愛い子ですねぇ?」
そこで待っていたのは、黒いシンランドレスを纏った物凄い美人さんだった。
たおやかな細目の女性だ。どこか気だるげな雰囲気から眠っているようにも見える。
「私の名はマオ。『黒龍殿』の首領を務めている者です。アナタは?」
「ル、ルシアです。スカイアーク家の八男でしたが、先日勘当されました……」
自己紹介をしながら彼女を見つめる。
あぁ……その美貌だけでも目を引くけど、それよりも気になるのは大きすぎる胸元――ではなくっ、
「気になりますか、私の『角』?」
彼女の頭部からは、鹿のような二本の大角が伸びていた。
銀色の髪を分けて伸びた、明らかに異常な部位。それを見て僕は思い出す。
「……シンラン王国は、ドラゴンの血を引く『龍人』が建てた国だそうですね。王族にはその血が受け継がれており、龍の特性を持って生まれるとか」
「あら博識」
にっこりと笑う女王様。
今の話が真実だとすれば、彼女はシンランの王族ということになる。
本当の意味で女王様ってわけだ。
「たしかシンランの王族たちは、戦争に負けて全員処刑されたって話じゃ……?」
「ふふ……私は妾の子として、記録上はいない者として育てられていましたからね。おかげで生き延びることが出来たというわけです。皮肉な話ですよねぇ?」
彼女の問いかけに僕は頷く。
たしかに数奇な運命だ。不義の子として生まれたおかげで唯一生き残り、結果的に女王になってしまったってわけか。
「ふむふむ、思っていたより話せる子ですねぇ、ルシア。あの戦闘馬鹿なスカイアーク家の子なのに」
「出涸らしの八男ですからね……。ビビリだったせいか戦闘のギフトがもらえず、ここに捨てられたわけでして……」
恥ずかしげに頬を掻く。
こちらとしても、ボスのマオ様が話の通じる人物で安心しているところだ。
客のチンピラさんたち曰く、“この街には『五大悪』っつーゲロヤバい五つの組織があって、そこのボスに目を付けられた日にゃぁ首も乳首も飛ばされますぜ!”って話だったからね。
乳首は飛ばさなくてもいいだろ。
「いやぁ、マオ様がよさそうな人でよかったですよ。僕のことを事前に調べてたみたいですし、ヤクうどんだかヤクそばなんて売ってるって噂は信じてないですよね?」
「えぇ、用意周到なタイプですから。ちゃんとアナタのお店に『三度の飯よりヤクが好き』って部下を行かせて調べましたよ」
「僕の店より病院行かせましょうよその人……」
それだいぶ末期の中毒者じゃん。そんな人がお客に紛れてたとかこわいよ……!
「ははは……じゃあ僕、無罪ってことでいいですよね? もう帰っても」
「お待ちなさい」
――その瞬間、部屋の空気が変わった。
何十人ものボウズ眼鏡たちが部屋を囲むように現れ、さらには出入り口が閉められてしまう。
えっ、どゆことぉ!?
「……ルシアさん。私は今や、シンラン王国の女王なんですよ。共に逃げてきた国民たちの、『夢』を叶える義務がある」
「ゆ、夢、ですか?」
「ええ」
ゆっくりと立ち上がるマオ・シンラン。
彼女から感じる圧が増大する。息が出来なくなるような闇の気配に、動けなくなる……!
「国民の夢――それは、祖国を滅ぼしたこのインペリアル帝国を滅ぼすことです……ッ!
そのために我らは『悪徳都市』に巣食い、中毒性薬物を生産し、帝国に蔓延させようとしているんですよ……!」
「っ、それで……!?」
そうか……そういう理由だったのか。
どうしてシンランの人たちが、帝国内にいるのかとは気になっていた。
全ては、内側からこの国を腐らせていくつもりだったのか……!
「知ってますルシアさん? アナタを捨てたお父上のように、この街を利用する人ってかなり多いんですよ。
年端も行かない子を買ったり、殺し屋を雇ったり、そしてオクスリを貰いに来たりとか……!」
聞きたくもなかった帝国の闇を聞かされる。
たしかに、この街は危険すぎて中の様子を見ることが出来ない。ゆえに表社会の汚い者らは、ここで法を犯すような真似をしているというわけか。
まさに悪党たちの都だな。
「あぁルシアさん。アナタの料理はとても美味しいらしく、例のヤク好きの男も絶賛してましたよ? これはとんでもないことですよ、アレの脳はほとんど壊れていたはずなのに」
「……それで?」
「ええ、そこでアナタに提案です。ヤクをさらに蔓延させるためにも――本当に『ヤクご飯』、作っていただけませんか?」
ニィィィッと微笑みかけてくる女王。
その笑みはまさに、獲物を前にした邪龍のモノだった……!
「アナタにもメリットがある話ですよ? アナタって繊細そうですし、この街に嫌々住んでる感じですよね?
――ならば、護衛を大量につけた上で帝都の一等地に送って差し上げましょう。お金はたくさんあげますから、そこでお店を開いてくださいな」
「……そして、料理にヤクを混ぜて売れと?」
「そういうことです♡」
本当に話が分かる子ですねぇと彼女は笑う。
……なるほど。もしかしたら悪い話じゃないかもしれない。
たしかに僕は嫌々ここに住んでる。今すぐに平和な場所に引っ越せるならそうしたいよ。ついでにお金だって欲しい。
「アナタのご実家、スカイアーク家は国防を任されているそうですね。ならば国を腐敗させたら、彼らに一泡吹かせられることになるのでは?」
甘い声が耳朶をくすぐる。一緒に復讐しちゃいましょうと、女王は僕を誘惑してくる。
ああ、本当に悪い話じゃないなぁ。意地悪な父上や兄貴たちの面子を潰してやるのは気持ちよさそうだ。
――だけど。
「お断りします」
「……は?」
瞬間、女王の笑顔が崩れた。
細目が静かに見開かれ、縦に裂けた龍の如き赤眼が露わになる。
「あらぁぁ……あらあらあら。あらあらあらあら? 何を言ったのか、聞き逃してしまいましたねぇ……?」
本気の圧力が僕を襲った。“断るのなら首も乳首も刎ねてやるぞ”という意思が、眼光から伝わってきた。
――それに対し、恐怖ではなく怒りの感情が湧き上がってくる。
「出来ればもう一度、ゆっくり、百名の部下のみなさんにもよく聞こえるように言ってくれると……!」
「そういうところが嫌なんだよッ、この馬鹿!」
「!?!?!?」
気付けば暴言が飛び出していた。ノアと黒服たちが一斉に驚く。
この状況で罵られるとは思っていなかった証拠だ。本当に腹が立つな。
「何が提案だ、この女……! 暴力を背景にしやがって。その上で甘い話をすれば、どうせ落ちると思ってたか? ふざけるな……!」
最終的に力で従わせればいいと考えているその態度。相手を都合のいい駒だとしか思ってない姿勢に、虫唾が奔る。
ああ、そういう人種は大嫌いだよ。だって父上や兄貴たちがちょうどそんな感じだったからな。
そして。
「……調べたのなら知ってるだろう? 僕は出来損ないの子だった。たくさんの訓練を受けさせられてきたけど、全部失敗だ。一度だって褒められた試しがなかった」
白く細い手を握り締める。
僕に、武の才能は一切なかった。幼い頃から病弱で気弱で、家族からいびられ続けてきた。
だけど……だけどっ!
「そんな僕がっ、『料理』で初めて褒められたんだよ! チンピラさんたちに“すごく美味しい!”って言ってもらえたんだよ!」
女王とその部下たちに言い放つ。
本当に初めての体験だったんだ。異世界の食材がよかっただけかもしれないけど……それを少し焼いて煮ただけの僕は、大したことなんてしてないかもしれないけど……だけど、それでも。
「貰い物だろうが関係ない。『料理』は僕の誇りだ。ようやく見つけた生き方なんだ。それをお前らは悪用するつもりか? 無理やり脅して、歪めるつもりか……?」
こんなに怒ったのは初めてだ。
お気に入りの玩具を兄貴たちに壊された時よりも、意味もなく父に殴られた時よりも、ずっとずっと許せなかった。
ああ――覚悟しろよ、『黒龍殿』。
「僕の誇りを穢すつもりなら、お前たちから料理してやる……!」
宣した瞬間、女王がついにブチ切れた。
鉄の扇をこちらに突きつけ、「吼えるなガキがッ!」と怒り叫ぶ。
「ずいぶんと舐めてくれたものですねぇッ!? もういいですッ――お前たちッ、そいつを殺してしまいなさい!」
『オォォォォオオオオオーーーッ!』
一斉に襲いかかってくる黒服たち。
数多の拳が振り上げられる中、僕は高らかに吼え叫んだ――!
「来いッ、『異世界屋台』――!」
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