10:新しい生き方
初投稿です
「――よし! 『異世界メシ屋』、ちょっとだけリニューアルだ!」
新メニュー『ラーメン』を増やした次の日。屋台の前には、いくつかの白いテーブルと椅子が設けられていた。
昨日は『黒龍殿』の人たちが百人も押しかけてラーメンを頼みまくってくれたおかげで、ギフトのレベルが3つも上がっちゃったんだよね~。そのうちの一回分で“屋台召喚能力”を強化したら、テーブルと椅子も呼び出せるようになったんだ。
いつまでもお客さんたちに立ち食いさせてばっかじゃ悪いなーと思ってたから、ちょうどよかったよ。
「そして……!」
僕は隣をちらりと見る。
そこには顔を真っ赤にしたウェイトレス衣装の女の子が立っていた。
「ちょっとルシア、この服って足が出過ぎじゃない!? 誰が作ったのよコレ!」
「あはは……たぶん異界の神様じゃないかな。でも似合ってるよ、ステラ」
「そ、そう……?♡」
彼女の名前はステラ・クリスティン。昨日僕が保護することになった女の子だ。
紅い長髪が特徴的なお嬢様で、口調は強気だけどとってもイイ子なんだよね。
ちなみに低身長の僕よりも長身だったりする。くやしい。
「ありがとうね、ステラ。お店を手伝うって言ってくれて。本当はもっとゆっくりしててもいいのに」
彼女は親に捨てられたばかりだ。その心の痛みは計り知れないだろう。
だからしばらくは休んでていいんだよって言ったんだけど……。
「ううん。聞いた話じゃルシアだって捨てられたばかりなんでしょ? だったらあたしも働くわよ、世話になってばかりじゃダメだからね!」
ぐぐっと力こぶを作るステラ。
とても頼りになる女の子だ。そろそろ一人じゃ店を回しづらくなってきてたからありがたいよ。
「無理しないでね、ステラ。疲れたらすぐに言うんだよ。あとスカートが短いからって覗いてくるヤツがいたら言ってね、料理するから」
「料理ってどゆことっ!?」
そりゃもう肉を叩いて柔らかくしたり斬り刻んでやるから料理だよ料理。
いや実際に心配してるんだよね。彼女の服は“料理人衣装召喚能力”を強化したら追加で出せるようになったんだけど、ホントに露出が多すぎるんだもん……。
チンピラさんたちがセクハラしないか心配だよ。
「あんまり酷いことをしてきたら、屋台を叩きつけてやるからね……!」
「屋台をッッッ!?」
ステラの驚く声が街に響く。
こうして元気で可愛い店員さんを迎え、新生『異世界メシ屋』をオープンさせたのだった!
◆ ◇ ◆
そして。
「――そろそろ閉店時間でーす! みなさん、また明日来てくださいね〜!」
「「「はーい!」」」
夕暮れの中、チンピラさんたちと手を振り合う。
みんな注射痕だらけだね。
「ふぅ、リニューアルは大成功だったね! 椅子とテーブルを用意したことで、抗争に負けて手足を失ったチンピラさんも食べに来てくれるようになったし!」
それだと立ち食いはキツいだろうからね。そういう人たち専用の席を用意しようかな?
「あと『黒龍殿』の人たちも、また来てくれたしねー」
新規のお客さんやラーメン大好きマオ様たちのおかげで、今日もギフトが2レベル上がっちゃった。
これでもう12レベルだ。次第にレベルアップしづらくなるそうだけど、まだまだ大丈夫そうだね。
「さてと。初日からすっごく忙しかったけど、ステラ平気?」
テーブルにダラっと寝そべった彼女に問いかける。
するとしんどそうな表情をしながらも、「なんとか〜……!」と返事してくれた。
「だいぶ疲れたけどねー……!」
「あはは、ステラってば大活躍だったね。元お嬢様なのに、テキパキと配膳できててさ」
合間合間に洗い物もしてくれたおかげで、食器を切らさずに店を回すことが出来たよ。
初日からこんなに働いてくれるとは思わなかった。
「本当にすごかったよー!」
そう褒める僕だけど、なぜかステラは浮かない顔だ。ど、どうしたの!?
「んー……今日の活躍はたぶん、あたしのギフト『滅私奉公』のおかげなのよね。それがちょっと複雑かもって」
机に寝そべったまま、彼女はぽつりと語りだす。
――『滅私奉公』。【給神ガニュメデス】という神から与えられたレアギフトなのだとか。
他人のためになる行動をする際に、器用さや素早さにすごく補正が入るらしい。
なるほど、初日から動き回れたのはその能力によるものか。
うーん、とても素晴らしいギフトに思えるんだけど……。
「……お母様に責められたわ。『そんなの使用人向けのギフトじゃない! なんて下賤で恥ずかしいっ!』ってね」
「下賤って、そんな……」
酷い話だ。そういえば僕も父上に“何が料理のギフトだ! そんなもん使用人のすることだろうが!”と似たようなことを言われたっけな。
「んで、親が変なギフト持ちだと子供にも伝染るっていうじゃない? それであたしには政略結婚に使う価値もなくなって、あっさりポイ捨てされたわけよ。
一人娘ならともかく、あたしってば五人姉妹の一番下だったしねぇ」
なら捨てても痛くないわとステラは笑う。
……だけど全然平気そうには見えなかった。
やはり家族から捨てられたショックが残っているようだ。
「ごめんねステラ、無邪気に褒めたりして。君が捨てられるキッカケになったギフトが関わってるなんて、知らなくて……」
「あ、あぁいいのよルシアっ! むしろ……うん、褒めてくれてありがとうね?」
彼女は身を起こすと、僕を真っ直ぐに見つめてきた。
「この街に捨てられるまで、“こんなギフトさえなければ”って思ってたわ。
だけど今日、このギフトのおかげで百人以上の人を笑顔に出来た。色んな人から褒められたりお礼を言ってもらうことが出来た」
まぁ怖い人ばかりだったけどね、とステラは苦笑する。
「どのみちまともなギフトを貰ってたところで、政略結婚の道具になる未来しかなかったしね。
だったらさ、親に決められた一人だけに尽くすより、色んな人に自由に尽くして、笑顔をいっぱい貰うほうが幸せかなって思えてきてさ」
「ステラ……」
「だから……ありがとう、ルシア。あたしのことを拾ってくれて。アナタのおかげで、新しい生き方が見つけれそうだわ」
夕暮れの中で微笑むステラ。
全力で働いたあとの疲れが残る笑顔は、とてもとても清々しいモノだった。
ここまでありがとうございました!
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』『ようやく暴力から脱却できたな……!』
と思って頂けた方は、感想欄に希望やら疑問やらを投げつけたり最後に『ブックマーク登録!!!!!!』をして、このページの下にある評価欄から『評価ポイント!!!!!!!!』を入れて頂けると、「出版社から声が上がる確率」が上がります! 特に、まだ評価ポイントを入れていない方は、よろしくお願い致します!!!




