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パンッ!と乾いた音が、公園に響く。黒い渦の人型、もとい虚者の腕が引っ込む。

まるで山姥みたいな風貌で、黒い渦のようにも見える髪が逆立っている。


「間に合うなら腕切り落としなさいよ」


レンがそっと目を開くと、目の前には黒い艶のある布地が広がっていた。


「間に入りこむだけで精一杯です!」


もう少し安全運転してください!と、さらに文句が飛ぶ。


「さっきの、刑事さん……?なにがあったの、なんで……。そうだ、ユキ、ユキが!」


「レンくん、落ち着け」


虚者はまだ隙を狙ってる。明星はちらりと目線をレンに送る。パニックを起こしているのがは一目瞭然だった。


「話はあとだ。とりあえず、後ろにいる姉ちゃんのところまで走ってくれ。できるね?」


ふと、逃げろというより走れ、と言った方がいい、なんて話を思い出した。

通りはよくわかんないけど、効き目はあったらしい。たどたどしく立ち上がると、レンくんは走り出した。


「邪魔しないでよ」


「残念だったね、メインディッシュはお預けだ」


明星は刀を握り直した。刀はキーホルダーサイズじゃない、フルサイズだ。

あとは、あの虚者を倒せばいい。


「じゃあ、お兄さんをメインにしてー、レンをデザートにしよう」


 ふふふ、と楽しそうな笑い声。

 真夜中にこの虚者と遭遇したら、と考え身震いをした。明星は、ホラーが苦手だ。

 気を取り直し、虚者に向かって走り出す。


 ガキンと刀が当たる。渦に見えるが、実態はある事を確認。


「全然ダメージ喰らってないわよー!しっかりしなさーい」


高みの見物と決め込んだのだろう、西願の呑気な声がする。


「西願さんも協力してくださいよ!」


 虚者の攻撃をかわしつつも、こちらも攻撃の手は止めない。ガキンガキンと当たる音はするが、余裕綽々といった様子だ。


「この手のは大体コアがあんのよ。ほら、ゲームとかだと定番でしょ?探せ探せ〜!」


「おれテトリスとか、パズルゲーばっかなんで、わかんねぇっすよ!!」


「その見た目でテトリス?!うそでしょ、FFとかKOFとかしなさいよ!!」


 どう〇つの森やってます、なんて絶対言わないでおこう、そう固く誓う明星であった。


ドンッ!と衝撃音がする。やばい、と思ったときには遊具の柱に勢いよく背中をぶつけた。


「ガッ…!」


 強くぶつけた事により、一瞬呼吸ができなくなる。


 呼吸を整えると、遊具の柱に捕まりながら立ち上がる。背中の激痛は治まりそうにない。


 しかし、おかげで少し冷静に周りを見回せ、考える事が出来る。

 先程から、西願がしきりに銃弾を撃ち込んでいるが、奴は攻撃を避ける素振りすら見せない。その時、奴が頭部に当たる銃弾のみを避けている事に気づいた。


 さっきから攻撃は胴体にしか当たってない。なるほど、頭か。

 しかし、奴の身長は高い。目算で3m。明星の身長が、190cm前後。足りない。どうすればいい、頭から真っ二つにするには。

依然、背中はズキズキと痛む。奴と西願の距離がジリジリと縮まっていく。


 明星は、ハッとして勢いよく振り向く。痛みの原因、ぶつかった遊具は、高さが2mほどある。そうだ!この手があった!


 虚者は明星に目もくれず、まっすぐに西願とレンのいる公園の出口に向かっている。西願と目があった。遊具の柱に手をかけている明星を見て、西願がニヤリと笑う。

 勢いをつけてそのまま天辺まで登る。屋根がついているタイプでよかった、と安堵する。さらに高さを期待できるのだ。


 登り切ったところで虚者に向き直る。思った通り、ここから飛べば頭に届く!


 二歩の助走で高く飛び、虚者の頭を超えた。


「いっけぇえええええ!!!!」


 刀を振り上げてそのまま虚者の頭に振り下ろす。


 それに気づいた虚者が振り払おうと手を挙げたが、西願がすかさずその腕を連射で撃ち抜く。その反動で腕は明星に当たらず空振り。勢いそのまま、刀が真っ二つに虚者を切り裂いた。


 グォオオオオオオオオと虚者の咆哮と共に、切り口から黒い煙がもくもくと出てくる。すべて煙になると、次第に風に乗って消えた。


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