だから、何で知ってるんだよ
すみません、誤字脱字がありましたのでいろいろ直してます。
ストーリーは変わっておりません。
「ねーねー、ゆうくん。わたしゆうくんとケッコンしたい」
「いいよー」
「ほんと!? ゼッタイ、ゼッタイだからね!」
まともに字も書けなかったくらい幼かった時、隣の家に住む女の子と交わした約束。
当時の俺は言葉の意味もよくわかっていなかった。
あれから十年以上経ち、約束が有効かどうかわからない。
とは言え彼女とは仲違いするようなことはなく、今も関係は続いていた。
「朝だよ、起きてー。学校に行く時間だよー」
布団の上から身体を揺すられる。
毎日朝の同じ時間に起きるために何が必要だろうか。
そう問われたら、現代人なら皆口を揃えて目覚ましだと答えるだろう。
しかし俺に限っては言えば必要がない。結婚の約束したあの時から、彼女がこうして朝に起こしに来てくれるようになったからだ。
彼女の名前は三上沙織。結婚の約束はしたが、俺と沙織は一応幼馴染みという関係になる。
「おはよ……」
「あ、起きたんだ。それじゃあ、玄関で待ってるからね」
沙織はそう言うと、部屋から出て行った。
現在、両親が出張中でこの家に住人は俺しかいない。そのため朝は玄関の鍵は閉めている。
本来沙織は俺は部屋はおろか、家の中にすら入ってこれない。
沙織が俺の部屋に入ってこれるのは、俺の部屋の窓と沙織の部屋の窓がすぐ近くにあるからだ。
朝に窓の鍵を閉めたままでいると、窓をガンガンと叩かれるので、寝る時はいつも鍵を開けるようにしている。
昨日夜遅くまで起きていたこともあって、本当まだ眠い。
しかし、沙織が起こしてくれた手前を待たせるわけにもいかないので、手早く準備済ませて玄関に向かった。
「ふぁあ~」
学校に向かって歩いていても、眠気はまだ取れない。
そのせいか間抜けな欠伸してしまう。
「もー、おじさんとおばさんがいないからって、遅くまでゲームしちゃだめだよ」
長い付き合いの幼馴染みには俺が昨日の夜に何をしていたか、お見通しだったようだ。
俺は普段親がいる時にあまりゲームはしない。
別にゲームしていたからと言って親から叱られるからということではない。
ただ夕方にゲームをしていると、夕飯などで呼ばれたりして中断されてしまうことがあり、それが嫌だった。
そんな事もあって、買ったのはいいものの未だにクリアできていないゲームがたくさんある。
親が留守の今こそ積みゲーを消化する絶好の機会だと思い、昨日は深夜までゲームに熱中していた。
「いいだろ別に。ぶっ続けでゲームができるチャンスは今しかないんだ」
「でも、流石に夜の2時までやるのは体にも良くないよ」
「いや、あれは仕方がなかったんだ! 急に強いボスが出てきたから、倒さないと気が済まなくて」
「そもそもあのボスって光属性が弱点なのに、闇属性の武器で攻撃したら時間がかかっちゃうのは当然だよ」
「え、そうなの?」
「うん。見た目が天使みたいな敵は基本的に光属性が弱点になってるよ」
知らなかった。
あのゲームは序盤だけプレイして暫く放置していたし、攻略サイトも見ていなかったしな。
あれ?
なんで沙織がボスの弱点なんて知ってるんだ?
そもそも、昨日何のゲームで遊んでいたかも言ってない。
俺の部屋をずっと窓から覗いていたとか?
いや、ありえない。俺の部屋のモニタは、彼女部屋から見える角度にはない。
大方、俺の部屋から音が漏れていてそれで何のゲームしていたかわかったんだろう。
隣を歩く幼馴染みに違和感を覚えたが、気にしないことにした。
今日の授業も何事もなく終わった。
寝不足のせいで、意識を失いかけたことは何度かあったがそれ以外は問題ない。
流石に今日は家でのゲームは止めておこう。
部活に入っていない俺は、校舎に残るようなことはしない。
沙織は部活に所属しているので、朝と違い俺は一人で帰ることになる。
家には誰もいないので夕飯は自分で準備しなければならない。
親からお金はもらっているものの、外食するには少し足りない。
備蓄していた食糧も残りわずかになっていたので、帰り道にあるスーパーに寄ることにした。
ここのところ、炒飯や餃子といった似たような冷凍ものしか食べていない。
自炊がてきれば食事の幅が広がるのだろうが、生憎と料理が苦手だ。
とはいえ今日は、普段食べないようものを食べてみたい。
「お!」
インスタント食品のコーナーに普段食べないそれが置いてあった。
俺は迷わずそれを篭に入れた。
★★★★★
今日もゆうくんとは別々に帰った。
ゆうくんには高校に入学した時に部活入ったと言ったが、本当は私も帰宅部だ。
クラスも同じなので、放課後を除けば彼と私はほとんど一緒にいる。
いくら幼馴染みでも、四六時中離れずにいたら彼も疲れてしまうだろう。
だからと言って私は彼から目を離すつもりはない。
私にとってゆうくんは全てだ。
幼い頃から共に人生を歩んできたパートナーであり、愛すべき夫だ。
私が夫のことで知らないことなどあってはならない。
ゆうくんが帰り道のスーパーに入ったのを見て、私も後から入る。
ゆうくんはいつも食べている冷凍食品のコーナーにはいかず、インスタント食品のコーナーに向かった。
「今日はカップ麺なんだね」
ゆうくんが篭の入れたカップ麺のパッケージをみると全体的に赤い。
きっと辛い系の物なんだろう。
最近ゆうくんはちゃんとしたもの食べていない。
冷凍ものばかりで、しかもカロリーが高い。野菜も不足している。
「ふふふ」
今度夕飯を作りに行ってあげよう。
ゆうくんの好物も、足りていない栄養も私はちゃんと把握している。
きっと喜んでくれるはすだ。
家に着いてから、私はずっとメニューを考えていた。
ふと、時計を見ると長い方の針も短い方の針も真上を指していた。
そして窓を見ると隣の部屋の明かりが消えた。もうゆうくんは寝るのだろう。
念のため、ゆうくんの部屋に設置したカメラを確認する。
電気を消してベットでスマホいじっているだけなのかもしれない。
映像確認するが、スマホの光は映っていない。
ゆうくんは本当に寝るようだ。
ちょうど言い時間だし、私も寝ることにしよう。
「と、その前に」
スマホの目覚ましをいつも起きる時間より1時間ほど早く鳴るように設定しておく。
慣れない辛い系のものを食べたゆうくんのことだ、明日は腹痛で早くに目が覚めるだろう。
私が起こしに行く前に、先に家を出るかもしれない。
行き違いにならないように明日はあらかじめ玄関で待ってることにしよう。
★★★★★
「うぅ~、腹いてぇ」
昨日食べたカップ麺のせいで、お腹を下してしまったらしい。
そのせいか、幼馴染みから起こしてもらう時間より早く目が覚めた。
二度寝をするには中途半端な時間だ。
せっかく早く目が覚めたんだから、今日は俺が向かえに行こう。
そう思い、身支度を整えて外に出た。
「――ッ!」
「おはよ」
玄関を開けた目の前に、いるはずのない幼馴染みがいた。
「うわぁ!」
「きゃっ!」
思わず声をあげてしまった。
俺の声に沙織は驚いているようだったが、こっちそれ以上に驚いてる。
「もう、急に大声だすからびっくりしちゃったじゃない!」
「なんでいるんだ? いつもより早い時間だろ?」
率直な疑問を彼女にぶつける。
この時間沙織は寝ているはずなのだ。
「それは今日ゆうくんが早く起きると思ったから、私も早く起きて待ってたんだよ」
なるほど、俺に合わせて早起きしてたのか。だから、玄関の前にいたんだな。
そうじゃない。そうじゃなくて。
「なんで早く起きると思ったんだよ?」
「だってゆうくん、昨日辛いもの食べたでしょ? 普段食べてない物だし、お腹壊しちゃうんじゃないかなって」
「いや、だから」
なんで知ってるんだよ。
初投稿です。
読んで頂きありがとうごさいました。