序章
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二十二世紀というひとつの時代が終わる最後の年に、人類は未曾有の災害に直面する事になった。かつて人類は天変地異を怖れ、壊されては造り直す。文明を手に入れてから、人類は立ち直って来た。それは地震、水害、暴風、隕石、疫病と様々な悪疫に悩まされ続け、その度に対抗手段や再建を繰り返して来た。そのような繰り返しの時代も、変革期を迎えた。
古来より、世界中では巨大生物の逸話が語られ続けていた。人類が現れる以前より、より大きく、より重く、より強かな生命体が地上を跋扈していた。それも環境の変化により数を減らし、人類の文明の進化の途上では全くと言っていい程姿を現さなくなった。その巨大な生物を、特に日本と云う国では“怪獣”と呼び、畏れた。しかし、寓話や神話の域を出なかったのもまた事実。小説や映画、漫画などに“怪獣”の存在が描かれているので、尚の事創造の範疇、という域を脱しなかった。しかし、地球の環境は人間の体調のように変化する事もまた事実。
日本の古来の神話に、巫覡と呼ばれる者たちがいた。神に仕える者。その神とは、荒ぶる大自然の超越した存在。その存在を諫め、崇め奉る接触者。その中でも、古文書に残されている巫覡は特に逸したものがあった。富士の御山に封じて永久の眠りにつかせしもののけ。そのもののけが神であり、それが二十三世紀を目前にして、復活する。