中国の情報技術産業戦略と無防備な日本
このエッセイは、「ナカイドのゲーム情報チャンネル【辛口】」を、参考にさせていただきました。
ネタバレを含みますので、それが嫌だという人は、↓を先に見ておくと良いかもしれません。
フォートナイトが削除されて大炎上中…理由をまとめてみた
https://www.youtube.com/watch?v=PxRgxVpJxsI
ゼルダ風新作ゲーム「原神」が大炎上!パクリとガチャもヤバい
https://www.youtube.com/watch?v=0rIwEMDHWOI
人気ゲームの運営を訴訟したらまさかの…ヤバすぎる炎上事件【KOF'98 UMOL】
https://www.youtube.com/watch?v=qlYrB9wtbdE
2021年3月の終わり頃、日本で広く普及しているメッセンジャーアプリの“LINE”が、中国企業に業務を委託していて、“LINE”でやり取りしている情報が中国で閲覧可能状態であった事が大きく話題になりました。
以前より、韓国系企業である“LINE”には、「韓国に情報が流れているのではないか?」という疑惑がありましたが、「まさか、中国だったとは!?」って感じでしょうかね。
――ただ、もしかしたら、ここで疑問に思った人もいるかもしれません。
クラウドコンピューティングであるマイクロソフトのオフィス365や、コミュニケーションアプリであるスカイプなど、他にいくらでも情報が盗まれる可能性のある情報サービスは巷に溢れています。何故、中国や韓国だと問題になるのでしょうか?
これははっきり言ってしまえば、“信頼”の問題だろうと僕は考えています。
実態がどれほど酷いのかは知りませんが、韓国は“遵法精神が低い”と言われています。嫌韓派の人達だけでなく、一部の親韓派の人達もこれは認めているので、恐らくは事実なのでしょう。だから、韓国系の企業が日本の情報を扱っている事に対して、不安を覚えるという心理は分かります。
ただ、韓国は完全に“黒”という訳ではなく、“グレ”ーという判断が妥当ではないかと思われますが。
しかし、中国に関しては違います。完全に“黒”です。何故なら、中国には“中華人民共和国国家情報法(国家情報法)”という法律があり、「中国の企業は国家から求められたなら、その情報を提供しなくてはならない」と定められているからです。
つまり、中国企業が日本の情報を扱っている時点で、中国政府が自由に日本の情報を利用できてしまえるという事です。
もしかしたら、この中国の法律に対し「そんな滅茶苦茶な、法律があるの?」とそういった感想を持った人もいるかもしれませんが、その感想は正しいです。
実は以前は中国は法律なしで、中国企業や個人に対して強制的に情報を提供させていたのですが、その所為で「法治国家じゃない」という批判を国際的に浴びる事になってしまったのです。それで、
「ほら、法律を作ったから問題ないでしょ?」
みたいなノリで制定したのが、この法律なのですね。これで納得する人がいるとは思えません。
「変わってないじゃん!」
……って、感じですから。
いえ、実は変わっていないどころか、更に悪くなっているのかもしれないのですが。
この法律は個人も対象となっています。その所為で、外国企業に勤める中国人へ情報提供を求める法律上の正当性を中国が持つ事にもなってしまったのです。
だから、もし中国籍の人が、日本企業に勤めていて、中国から「企業秘密を教えろ」と命令されてしまったなら、それに従わないと法律違反になってしまうんです。
どれだけその中国籍の人が真面目で誠実であったとしても、安心できないのですね……
中国籍の人で、真面目に仕事をしている人にも僕は出会った事があるので、本心で言えばこんな事は書きたくはないのですが、だから中国籍の人を起用する場合は、重要な情報を与えないように気を付ける必要があるのです。
これは中国政府の所為ですね。
(一応、強調しておきますが、人事でこの法律を考慮する場合は、中国籍の人達にきちんとその事情を説明しておくべきです)
どうです?
「ダメだ、こりゃ」
って、普通の人なら思うのじゃないでしょうか? 近年、中国に対する警戒感が、先進諸国を中心に増しているのには、こんな背景もあるんです。
もし、こんな法律がまかり通っている状態で、中国が“情報技術産業の支配者”になってしまったなら、世界は恐怖するしかありません。
一応断っておきますが、これはただ単に“情報を盗まれる”というだけの話ではありません。
――近年、情報サービスは、社会を支える重要なインフラとなっています。現在、主にこの情報サービスを提供しているのはアメリカの企業で、「支配している」と言っても過言ではない状況です。だからもしアメリカがこの立場を利用して、他の国を脅迫するような真似をし始めたなら、かなりの脅威となるでしょう。
情報インフラをアメリカに握られてしまっている限り、多少、軍事力を強化しても、いえ、核武装したとしてもアメリカの優位は揺るがないはずです。
ただ、アメリカに対して本格的に牙を向けない限り、アメリカは非道な行いはしないとは思います。アメリカは法治国家ですし、何より「今までそんな事はしなかった」という実績がありますから。
信頼して良いでしょう(と言うか、もう信頼しないとどうしようもないような状態になっているのですが)。
トランプ大統領は、何をするか分からない人でしたが、選挙で負けちゃいましたからね。少なくともしばらくは平気でしょう。
ですが、もし仮に、中国がこの現在のアメリカの位置を占めてしまったなら、はっきり言って何をするか分かりません。
そして、中国は明確にそのアメリカの「情報技術産業の支配者」の位置を狙ってもいるのです。当然ながら、アメリカは中国のその姿勢に対して、対決の姿勢を見せています。
中国は以前から、自国で様々な情報サービスを賄ってきました。中国で暮らす人々は“グーグル”ではなく“百度”で検索を行い、YouTubeではなく“優酷”で動画を鑑賞し、Twitterの代わりに“新浪微博”を使ってミニブログを作っています。また、中国は国内プロバイダーを完全に掌握しており、徹底した監視体制を執ってもいます。
もっとも、これらは“攻め”の為のものではなく、高度情報化を進めると共に情報規制を行うという目的で作られたものでしょう。つまり、“守り”です。
これだけなら、アメリカはそこまで警戒をしなかったのではないかと思われます。
が、近年中国は“守り”だけじゃなく、“攻め”の姿勢も見せています。
通称“5G”と言われる次世代の移動通信システムでは、中国はHUAWEIによってその主役に躍り出ようとしていますし、TikTokといった動画サービスを中国以外にも普及させようともしています。
また、コンピュータゲームをスポーツと見做す、eスポーツが少しずつ世界に認知されつつありますが、現在世界のeスポーツは中国中心に回ろうとしています。日本もその影響を強く受けていて、日本のプロゲーマーの多くが配信を行っている“Mildom”は中国企業ですし、日本esports促進協会(JEF)は、“日本”って名前が入っていますが、中国資本が注入されています。
ITを絡めたゲームにも中国は強い力を入れていて、だから当然、アメリカに対しても攻撃をしかけています。
2020年の8月頃、アップルやグーグルといった巨大企業に対し、アメリカ企業ではあるのですが、背後に巨大中国資本の存在があるエピックゲームズというゲームの配信会社が喧嘩を売りました。
通常、オンラインで遊ぶゲームは課金をする際に、アップルやグーグルといったプラットフォームを運営する企業に手数料を支払っています。ところが、「フォートナイト」という人気ゲームを、この会社はアップルやグーグルに手数を支払わなくても遊べるようにしてしまったのですね。当然、その分、安く遊べます。
もちろん、中国は、直接、中国製のゲームを様々なプレイヤー機器で売りに出してもいます。
更に近年の目立った動きとしては、中国は遂にOSまでも中国製に切り替えようとしています。政府機関に“ウィンドウズ禁止令”を出したのですね。
中国はOSを中国製に切り替えようと、これまでも何度かチャレンジしていたらしいのですが、今までは失敗をし続けています。
この理由は簡単に分かりますよね?
現在、ほとんどのパソコンソフトは、ウィンドウズ上でしか動きません。それらソフトを中国製に切り替えようとしたなら、凄まじいコストがかかりますし、仮にできたとしてもビジネスの取引相手がそのソフトを使えなかったなら大きく不利になります。
ですから、恐らく、中国はウィンドウズと互換性のあるOSへの切り替えを目指すものと思われますが、それはそれで問題があります。
仮に現在、ウィンドウズで動く全てのソフトと互換性のあるOSに切り替えられたとしても、今後開発されるソフトにまで対応できるという保証はありません。重要なソフトが出る度に、そのOSは動作検証を行い、必要ならアップデートをしなくてはならないのです。
はっきり言って、かなり難しいしコストだってかかります。
だから、失敗をしているのです。
今行っているOSの切り替えも、現実的には聞こえませんが、それでも、中国は今回は本気かもしれないと僕は考えています(それでも失敗するかもしれませんが)。
何故なら、ウィンドウズから脱却できなければ、中国はアメリカに対して大きく不利になってしまうからです。
ウィンドウズは、近年に入り、クラウドコンピューティングとの繋がりを強くしています。もちろん、クラウドコンピューティングで利用可能な情報サービスは、アメリカ企業が中心で、つまりはアメリカ企業有利です。
中国で使われている多くのウィンドウズのバージョンはどうやら旧いらしいのですが、それはアップデートしてしまったなら、情報技術戦略においてアメリカが有利になってしまうからではないでしょうか?
そしてそれと同じ理由で、中国はなんとか独自のOSに切り替えたいのだと思うのです。今は政府機関だけのようですが、絶対に国内外に普及したいとも願っているでしょう。
次世代の覇権を目指すという意味では、中国はAIの開発にも膨大な予算を割いています。知っている人も多いと思いますが、以前は国民の監視を人手でやっていた(誰でも思い付く発想ですが、思い付くだけで普通はやりませんよね…… 色々な意味で凄い国)のを、中国はどんどんAIに切り替えていて、国民の信用度をAIを用いて判定していたりもします。
AIに関しては、まだまだ未開拓な分野なので、これから中国がシェアを奪ってしまう可能性はかなり高いでしょう。AIは情報を集められれば集められる程有利になると言われている(AIを成長させられるからです)ので、専制主義で情報を集めやすい中国は、その意味でも脅威と見做すべきです。
このように、中国はあの手この手でなんとかアメリカの情報技術産業の支配権を奪おうとしているのです。
ぶっちゃけ、これは単なるビジネス上の問題ではなく、システムVSシステムといった軍事上の問題でもあります。
近代の“軍事戦略”は、最早、単なる軍事兵器同士のぶつかり合いなどではなく、“情報技術のシェアの奪い合い”にまで及んでいるのですね。
日本はこの分野では、かなり後進国ですが……。
大丈夫なのでしょかね?
こういった中国の動きに対しアメリカは対抗していて、なんとか封じ込めようとしています。
中国の5G戦略に対しては、国際的に包囲網を敷く事で世界的な普及を阻止しようとしていますし、TikTokも禁止にしようと検討しています。先ほど挙げた「フォートナイト」は、アップルとグーグルが利用できないように削除してしまいました。復活を試みているようですが、現在(2021年4月)は、上手くいっていないようです(まぁ、これはアメリカ政府はもしかしたら関与していないのかもしれませんが)。AI開発も苛烈に競い合っています。
こういったアメリカの姿勢に対し、「自由競争を妨げる」という批判もあるようですが、中国は自国内ではアメリカ企業を締め出しているので、何もしなければ、それこそ公平性が損なわれます。致し方ないと考えるべきでしょう。
これまでの説明を読んで、或いは人によっては一部に違和感を覚えた人もいるかもしれません。
「“ゲーム”のシェアの奪い合いが軍事上重要?」
と。
まぁ、ゲームですからね。
が、既にそんな呑気な話は通用しない事件も起きているのです。
“原神”という中国企業が開発したゲームをご存知ですか? 盛んにコマーシャルも行われているし、実際に相当売れているようなのですが、このゲーム、実は発売当初に「スパイウェアが入っている」とネットで騒がれていました。
メーカー側の説明によれば、それはスパイウェアではなく、アンチチートプログラムなのだそうですが、スパイウェアとしても利用できる点は事実です。
中国社会では、データ改変やプログラミングに手を入れるなどのいわゆる“チート行為”が横行していて、放置するとビジネス上支障が出てしまうので、それを防ぐ為のアンチチートプログラムを入れる事が普通に行われているのだそうです。
この“原神”の「スパイウェアまがいのアンチチートプログラム」もそういったものだというのですが、仮にメーカー側のこの説明に納得するにしても、中国には先に説明した“国家情報法”があります。悪用しようと思えば悪用できるプログラムが混入していた事実は見逃せないでしょう。
もし、中国が命令したならば、原神を開発した企業はこの「スパイウェアまがいのアンチチートプログラム」を悪用せざるを得ないのですから。
(因みに、中国製ゲームの多くには、規約に「提供された個人情報の完全なる保護を約束することはできません」と記されているそうなのですが、これは“国家情報法”があるからでしょうね)
しかも、「スパイウェアまがいのアンチチートプログラム」は、なんと当初はゲーム停止中でも稼働しているばかりか、ゲームをアンインストールしても残り続けるというとんでもない仕様でした。
これに関して、
「他のゲームでも既にある仕様だから、大騒ぎするような話ではない」
という声もあったようですが、それは話が逆で「他のゲームでもダメ」なんです。現在はアップデートによって解消されているとの事ですが、それって逆を言えば、アップデートによって復活させられるという事でもあります。
はっきり言って、中国が法律で禁止にしなければ安心できないレベルの話でしょう。そして中国は今のままでは、それをやりそうにない。
もし仮に、そんな「スパイウェアまがいのプログラム」を混入させられる可能性のあるゲームが国内に蔓延してしまったなら、それだけで社会的脅威になるのは言うまでもありません(これは中国製ゲームに限りませんが)。
また、このまま中国製のゲームが人気を獲得していけば、このような戦略を執る事も可能になります。
「中国製のOSでプレイすれば、特典が得られる」
最近はゲーミングパソコンも広まっていますが、熱心なゲーマーならゲームの為に中国製OSのパソコンを購入するくらいやっても不思議ではありません。
つまり、“中国製の人気ゲーム”が、中国製OS普及の足掛かりになってしまうかもしれないのですね。
ところで、この件に関して、僕には気になる点があります。
前述したように、ゲーム“原神”に混入していたアンチチートプログラムは、スパイウェアとして悪用も可能な問題のある代物です。が、それに関して何故か日本の大手報道機関は全く報じなかったのですね。
因みに、僕はこれを「YouTubeチャンネル:ナカイドのゲーム情報チャンネル【辛口】」から知りました(前述した「フォートナイト」に関する内容も主にこのチャンネルを参考にさせていただきました)。
少なくとも、報道機関は「パスワード等の貴重な情報を記録させているパソコンではプレイしない方が良い」と警鐘を発するくらいはするべきだと思うのですが……
テレビ局のスポンサーに原神の会社はなっているみたいですから、それで圧力をかけたか、または忖度したっていう線が最も妥当でしょうが、果たして本当にそれだけなのでしょうか?
スポンサーは関係のない、NHKも報道していませんからね(と言うか、滅茶苦茶な理由でNHKが映らないテレビからも受信料を取ろうとしているのだから、「これくらい、国の為にやらんかい!」って感じですが。資金源が国民である意味がなーい!)。
穿った見方をするのなら、「中国が裏から圧力をかけて報道規制を行った」なんて可能性も考えてみるべきかもしれません。
「そんな馬鹿な」とか、「考え過ぎ」とか、こういった指摘に対して思う人もいるかもしれませんが、中国に限らず、多くの国でこのような工作は行われています。
日本で明るみになった“事実は小説よりも奇なり”な嘘のようなこの類の本当の話としては「読売新聞社を成功へと導いた正力松太郎は、なんとCIAのエージェントであった」なんて事実があります。
決して考えられない話ではありません。
特に中国は、様々な国々にスパイを送り込んでいて、陰から世論や政治に影響を与えていると言われています。実際に、日本でもカジノ法案で中国企業から政治家が金を受け取っていた事件が大きく報道されましたが、このような政治家は他にも多くいると言われています(親中派として有名な自民党の二階幹事長の派閥は、近年、勢力を拡大しているそうです)。
更に、よく注意深く観察すると、思わず「お?」となってしまうような怪しい出来事も起こっています。
例えば、アップルとグーグルに削除されてしまった「フォートナイト」ですが、このゲームは日系のゲーム会社であるカプコンから出ているストリートファイターVとのコラボを実施しました。
何故、これが気になるのかと言えば、eスポーツ関連の法律を巡るゴタゴタの際に、カプコンと日本の政治家との繋がりが噂されていたからです。
もしかしたら、中国と繋がりのある政治家から、カプコンは「フォートナイト」とコラボするよう要請を受けたのかもしれません。
いえ、もちろん、これは証拠も何もない“想像”レベルのお話なのですがね。
ただし、単なる“危機意識の低さ”から、原神の「スパイウェアまがいのプログラム」問題を、日本の報道機関が大きく報道しなかった可能性も大いにあるのではないかとも僕は考えています。
何故なら、日本社会は…… (日本だけじゃありませんが) 情報インフラに対する認識が全般的に甘いからです。
冒頭で説明したメッセンジャーアプリの“LINE”ですが、個人的な他愛のないコミュニケーションだけではなく、なんと企業や自治体のインフラとしても利用されていたという事が分かりました。
仮に“LINE”が中国に業務委託していなくても、前述した通り、“LINE”を運営しているのは韓国系企業です。少しばかり警戒意識が低いようには思いませんか?
これまで情報サービスに対する警戒意識が低くても大きな問題が発生して来なかったのは、それらを提供して来たのがアメリカという法治国家だったからでしょう。しかし、これからはそうはいかないかもしれません。何故なら、“5G”や“AI”など、未開拓な分野でアメリカ以外の企業が情報サービスを担う可能性が出て来ているからです。
それに伴い、利用しているソフトやアプリなどが、どこの国のどこのモノでどんな罠が潜んでいるのか益々分からなくなっています(情報収集用に公開されているのではないかと疑われているゲームが既にあったりするらしいです)。
現在のところ、その安全性の評価は民間企業や個人の判断に任せてしまっていますが、はっきり言って限界があるでしょう。
(因みに、前述した「フォートナイト」を配信しているエピックゲームズは、ゲームのプラットフォームを目指しているようです。もし仮に、その地位を確立してしまったなら、中国製のゲームの審査を甘くしてしまう可能性は大いにあると思います)
ダウンロードソフトやアプリの類全般の安全性を確かめる為の、国が運営する“審査機関”が必要です。
その審査機関で安全性が確認された場合、安全認定するのですね(法律で禁止するのは今の段階では無理でしょう)。全てのダウンロードソフトやアプリの類をチェックするのは現実的ではないので、申請があったもののみとなってしまうでしょうが、それでも存在価値は絶対にあります。
一応断っておきますが、チェックするのはプログラミングだけではありません。審査後のアップデートまで監視し続けるのは至難の業でしょうし、むしろ重要なのは、その製造元や管理元の国の法律です。
これは一般人には判別が難しいです。その国の法律まで調べるのがかなり手間なのは簡単に分かると思いますが、そもそも説明されてある企業が嘘というケースすらもあるからですね。
これも「YouTubeチャンネル:ナカイドのゲーム情報チャンネル【辛口】」で知ったのですが、通称「KOF’98 UMOL」と呼ばれるゲームの運営会社は表向きは日本の会社となっていたのに、実際は中国の会社である事が分かった事件があったそうです。
こんなの、一般の消費者に分かるはずがありません。
つまり、その国が確りと法整備されてあるのか、あったとしてその法律に問題はないのかだけではなく、運営実態がちゃんと説明の通りかどうかも調べて“安全”認定をするのです。
一応断っておきますが、中国製のみをターゲットにするのではなく、“ダウンロードソフトやアプリの類”に対して全般的に基準を設け、それに合致するか否かで判断を行うべきでしょう。
中国だけをターゲットにすると角が立ちます。どの国でも対象にする公平な審査基準だと主張した方が印象は随分と和らぎます。そして、それを国際的な潮流にする事ができたなら、「安全性を担保した国の情報技術産業が成長し易くなる」という市場を築けます。
もし、それを実現できたなら、情報サービスがより安全になるのは言うまでもありませんし、情報サービスを「軍事的な戦略に用いる」といった事もし辛くなるでしょう(理想を言うのなら、国際的な機関がそれを担った方が良い……
日本から創設を提唱したりできないのですかね?)。
もっとも、その審査機関が信頼を得られなければ、この試みは成功しないでしょうが。
散々説明して来た通り、中国は情報インフラの重要性を理解しています。だからこそ、執念的なまでの監視体制を敷き、なおかつそれを武器として利用してすらいるのでしょう。
その中でも、今後、最も脅威となる可能性が高いのは“AI”であると考えられます。前述した通り、AIを用いた情報サービスはまだまだ未開拓な分野です。その分野に中国は膨大な予算を注ぎ込んでいて、これも前述した通り、専制主義国家という特性から、AIの成長に必要な“情報”を集め易くもあります。
そして、もし、一部でも中国のAI技術に情報インフラを依存した状態になってしまったなら、その国は大きく不利になります。
現在でも、中国はレアアースの輸出制限というカードを外交で使っていますが(ただし、少なくとも日本は、企業努力によりこの影響を緩和できています)、それと似たような手段で圧力をかけてくるかもしれません。
(断っておきますが、情報インフラは急に切り替えられるような類のものではありません)
更に言うのなら、より直接的な攻撃の手段としてAIを使う可能性だってあります。
一部の学者等が警鐘を発している内容が正しく、もし今後AIの能力が飛躍的に上昇してしまったなら、中国がそれをサイバー攻撃に用いる危険だってあるでしょう。
例えば、原子力発電所は随分前からサイバーテロの標的になってきました。実害が報告される例は稀ですが、それでも実例はあります。もし、AIが人間では防御不可能な程に高度なサイバー攻撃を行えるようになってしまったなら、原子力発電の運用は不可能になってしまいます。
これらを考慮するのなら、少なくとも「これから新たに誕生する情報サービスは、国内企業で提供できる」ようになるのが理想で、「サイバー攻撃から身を護れるほどの情報セキュリティ技術を身に付ける必要もある」、という事になります。
その為には、AIなどの情報技術産業にもっと予算を割く必要があるのは言うまでもありません。
――がしかし、これを日本の政治家や官僚達はあまりやりたがらないでしょう。
もちろん、全員ではありませんが、予算を確保しようとしたなら抵抗があるのは容易に想像がつきます。
理由はシンプルです。
「その分、自分達に入る予算が減ってしまう」
からですね。
政治家や官僚達は、まるで「予算を奪い合う」本能を持っているかの如くそれを行動原理にしているみたいなんです。
まぁ、奪い取った予算が富と権力の源泉になるからなんですがね。
もっとも、情報技術産業を盛り上げていけば、それが新たな富と権力の源泉にもなり得ります。
がしかし、どうもそんな意欲は彼らにはないようなのです。
政治家や官僚達が、私利私欲の為に行動していても、まだ“チャレンジ精神”さえあるのなら、それが社会の発展に結びつく可能性は大いにあるでしょう(ちょうど、今の中国のように)。
ですが、“既得権益”にしがみつき、それを護ることにしか興味がない状態では、社会は絶対に発展しません。
近年、日本社会は急速に衰退していると言われていますが、それは先進技術を積極的に取り入れる事を拒んでいるかのような状態になってしまっているからなんです。
新しい技術を社会に普及させると、既得権益団体が損害を被り、場合によっては新しい産業にとって代われる可能性すらあるので、抵抗が物凄いのですね。
例えば、カーシェアリングが普及したなら、タクシー業界は縮小せざるを得ません。だから、実質的に禁止にしているのです。その他、物流業界に配慮してか、ドローンもあまり積極的に用いようとしませんし、コロナ19禍対策で多少は進みましたが、オンライン診療やオンライン授業もあまり普及させようとはしてきませんでした。
生産性が上がる技術発達を拒絶しているのですから経済が停滞するのは当然の話で、そんな事を日本中の様々な産業でやっていれば、「そりゃ、衰退するよね」ってな話な訳です。
散々、語って来たように、情報技術産業のシェアは軍事上の問題でもありますが、軍事志向が強い人達もこの態度は似たようなものです。
つまり、全員とは言いませんが、本当は日本の防衛などどうでも良く、“既得権益の確保”しか考えていない人達が、この国のトップにはいて、しかもそれなりの権力を持ってもいるって話です。
一応断っておくと、アベノミクスの三本の矢の一つ“規制改革”は、このような状況を打破する為に計画されていたものです。ですが、途中で安倍政権はこれを止めてしまいました。菅政権が誕生した際に、再びこの“規制改革”が持ち上がりましたが、「進んだ」という話は今のところは聞きません。
デジタル庁の創設や技術情報漏洩対策など、多少の動きは見られますが、それでどの程度の効果を得られるのかは注意深く見守っていく必要があるでしょう。
僕は“規制改革”は、妨害を受けているのではないかと疑っているのですが。
そして、規制改革を再び訴えた菅政権の支持率は、コロナ19対応の問題もあってか、芳しくありません。
このままではほぼ間違いなく日本は衰退し続けます。
最後に、少し毛色の違う話をして、このエッセイを終わりにしたいと思います。
アリやミツバチなどの社会性昆虫を表現する言葉として「民主主義」が用いられている事があります。これに対し、一部の学者などが「語弊を招く」と懸念を述べていたりしますが、「民主主義」と表現する根拠は実はちゃんとあったりします。
社会性のアリやハチの巣は、実は知性を持っています。温度調節や湿度調節の機能があったり、餌を集める個体が足りなかったら自動的に増やしたり。これらは女王が命令している訳ではなく、各個体が自由に活動し、相互影響した結果創発される“群知能”と呼ばれる類の知性です。
この“各個体が自由に活動し”という部分は民主主義の理念にそのまま重なります。正確には民主主義ではありませんが、資本主義のシステムを思い浮かべると分かり易いかもしれません。
資本主義では、市場原理によって自動的に商品価格が決定されます。これは各個人の自由な行動で自律的に起こる現象です。社会性昆虫はそのようなシステムで社会を成り立たせているのですね。
いえ、“社会”と表現するのはやはり語弊があるかもしれませんが。社会性のアリやハチは“巣一つ”で、一つの個体とも見做せるからです。
とにかく、このように個人の自発的な行動から秩序が創発される事を“ボトムアップ型”と呼びます。それに対し、上層部が命令する形で秩序を産み出すのを“トップダウン型”と呼びます。
規模が大きくなると、トップダウン型では限界があり、やがては社会が崩壊してボトムアップ型に、要するに民主主義に移行せざるを得なくなると言われて来ました。
だからこそ、先進諸国は民主主義に行き着いたのですね。
これは“正しい”とか“悪い”とかの問題ではなく、民主主義の方がシステム的に安定をしているからです。
だからこそ、ソ連は崩壊をしましたし、中国だって経済では資本主義を受け入れたのです。そして、中国はやがては政治体制でも専制政治から民主制に移行するのではないかと考えられていました。
その方が安定しているからですね。
が、中国が情報技術を積極的に活用し始めてから、「そうはならないのじゃないか?」という懸念が出始めてしまったのです。
規模が大きくなると、“トップダウン型”では限界が生じるのは、扱わなければいけない範囲や情報量が膨大になり、制御できなくなってしまうからです。ところが、進歩した情報技術は極めて広範囲から集めた膨大な情報を扱う事を可能にしました。
例えば、かつては大型店舗では、小型店舗が行っているような“お得意様に特別サービスを実施する”ような顧客管理は不可能だと思われていました。それが近年の情報技術の発展によって変化していて、「購入履歴から“客の好み”を分析し、適確なサービスを実施する」といった事が可能になっています。これにより、企業戦略も大きく変化しているのですが、このように情報技術の発達は今までの常識を覆しているのです。
これと同じ様に中国も膨大な人口を抱えてはいますが、情報技術を飛躍的に上昇させる事で、専制主義のままでも安定した社会を実現しつつあるのかもしれないのです。
つまり、中国は情報技術を進化させる事で、専制主義のまま発展し続けてしまうかもしれないのですね。
近年、アメリカが特に中国を警戒している理由の一つが恐らくはこれではないかと思われます。
ただし。
念の為断っておきますが、中国は専制主義ならではの問題点を抱えてもいます。例えば、一部に集中した権力によって、膨大な資源の無駄遣いが行われ、それが社会全体の負担になっている点はまず間違いありません。
野心的な先進技術への取り組みがそういった問題点を上回って社会を発展させるか否か。
中国を分析評価する際の重要なポイントはそこでしょう。
日本は、この先、どうこの国と向き合うべきなのでしょうね? 今のアメリカ頼みのままでは、下手したら呑み込まれてしまう危険性すらもありますが……