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水属性の魔法使い  作者: 久宝 忠
第四部 第二章 西へ
768/935

0721 平和な航海…?

最初に、大切なお知らせです。(本日2025年1月10日 正午解禁情報)


『水属性の魔法使い』が、

2025年7月より、TBSほかにて、TVアニメとして放送開始予定です!


続きは、本編下の「あとがき」に書いておきます。

ぜひ、読んでください!

スキーズブラズニル号が、ウィットナッシュを出港して二日目。

甲板上では、朝から国王陛下が剣を振るっている。


そこから少し離れた場所では、騎士たちも剣を振るっている。

全員ではない。

さすがに全員振るうと、甲板上で仕事をしている乗組員の邪魔になるのが分かっているので、十人くらいずつ順番にやるらしい。


「この光景を見ても、アベルが国王としての特権を振りかざしているのが分かります」

「ああ、国王をやってて良かったと思っているぞ」

涼の言葉を、笑いながら認めるアベル。


「珍しいですね。いつもなら反論するのに」

「覚えているかリョウ、俺が東方諸国から戻ってくる時に言った言葉」

「言葉? たくさん聞いたので、どれのことだか……」

首を傾げる涼。


嫌味ではなく、本当にどれのことを言っているのか分からないのだ。


「もっと強くなりたいと」

「ああ、それは覚えています」

剣を振り続けながら答えるアベル、氷の椅子に座り氷の板に書かれた魔法式を見ながら答える涼。


二人とも、それほど重要な会話だとは思っていないということ。


「強くなるには訓練するしかない。訓練するには時間が必要だ。俺は今、その時間を持っている」

「確かに。この西方諸国への旅では、訓練する時間がいっぱいありそうですね」

「まあな。途中、いくつかの海洋国家に寄るらしいから、その時は国王として顔を出すが……それ以外は時間がありそうだ」

「海洋国家とかあるんですか?」

「ああ。我々ナイトレイ王国はもちろん、西方諸国でも知られていなかった島国がいくつかあるそうだ」

「航路が開かれたら、そういう所で補給ができるかもしれませんね」

アベルの説明に、涼が頷く。


全ての船が、このスキーズブラズニル号のように足が速いわけではない。

小さな船は、そもそも無理だろうが、ある程度の交易用の大型船なら、そんな海洋国家を繋ぎながら中央諸国と西方諸国の間を行き来できるかもしれない。


これまでは、この二つの地域を海路で結ぼうなどという行動すら起こされなかったために、どちらの地域にも知られていなかった国々。


ただ、このスキーズブラズニル号が西方諸国からウィットナッシュに来る際に、寄港はしたらしい。


「パウリーナ船長が言うには、かなり大きな島もあるらしい。もちろん、海路上にあった港に寄っただけだから、島に降りた乗組員も少しだそうだ」

「多島海地域を思い出しますね」

アベルの説明から、二人が魔人ガーウィンの魔力暴走によって飛ばされた多島海地域を思い出した涼。


「アベル王の寄港が、平和な海洋国家群に戦雲(せんうん)を呼ぶかもしれません」

「不吉なことを言うな」

涼の言葉に、顔をしかめるアベル。


西方諸国と中央諸国とが海路で結ばれれば、長い付き合いになる可能性のある国々だ。

平和な関係を築いておきたいと思うのは、王として当然だろう。


「アベルが持つ戦力は、王国騎士団五十人だけですからね? ちょっと占領してやるか、とかそんな軽い気持ちで戦争を吹っかけないでくださいね」

「するわけないだろうが」

「どうしてもと言うのなら、月一ケーキ特権を週一ケーキ特権にすることによって、筆頭公爵の助勢を得られる可能性があります」

「うん、戦う気はないから助勢はいらん」

なぜか(あお)って交渉しようとする涼、げんなりして交渉を拒否するアベル。


「なぜ寄港する前から危険な香りを(ただよ)わせるんだ?」

「だって、トラブルに巻き込まれてからじゃ交渉できないじゃないですか!」

「リョウの欲望に、平和な船と国を巻き込むな……」

アベルはため息をつくのであった。



順調に進むスキーズブラズニル号は、平和な航海を続けた。

美味しい食事と規律正しい日常。

その二つに象徴される平和な航海。


コバッチ料理長率いる料理人たちは、百人を超える乗組員と乗客に対して、美味しい食事を提供し続けた。


パウリーナ船長率いる乗組員たちは、誰も手を抜くことなく完璧な仕事をこなし、何の問題も起きなかった。



ただ、食事に関して疑問を持った国王陛下がいた。

「船長、ちょっと質問があるんだ」

「はい陛下、なんでしょうか?」


ある夕食時、アベルは貴賓室(きひんしつ)で食卓を囲むパウリーナ船長に質問する。

「もちろん不満というわけではないんだが……どうして魚料理が出ないんだ?」


そう、スキーズブラズニル号が進むのは海の上。

周りは全て海。

海の中には魚がいる。

釣るなり網を使うなりすれば、いくらでも魚という食材は手に入るはず。


だが、一度も出てきていない。


アベルが疑問に思うのは当然だろう。



「タイを突いたら、世界が反転したのです」

パウリーナ船長が答える前に、涼が(つぶや)いた。


涼は覚えている。

ロンドの森の近くの海に初めて潜った時のことを。

タイのような魚を突いた瞬間……世界そのものが涼の敵に回った、あの感覚を。


海の生き物に手を出すということは、そういうこと。



パウリーナ船長が答えると思っていたのに、それより先に涼が呟いたので、アベルの方が驚いている。

むしろパウリーナ船長は微笑(ほほえ)みながら涼を見て問う。


「公爵閣下は、もしや海中で?」

世界が敵に回るような経験をしたのかと。


「はい。恐ろしい経験でした」

涼は素直に頷く。


無知であった。

無知は命を危険にさらす。


未だ無知な人物が、ここには一人いる。

「海中で、何があった?」

アベルは首を傾げて問う。


「海の生き物に手を出すと、海の魔物たち……いえ、魔物だけではないのですが、それらが襲ってきます」

「何?」

「ですので漁師たちも、恐ろしい魔物がいない海域でのみ漁をします。我々は、進んでいる海域に()む海の魔物に関する情報を持っていませんので、手を出さないようにしているのです」

「なるほど……海の中は恐ろしいんだな」

パウリーナの説明に頷くアベル。


「強力な魔物のいない場所、あるいは船ではなく島のような場所からの釣りでない限り、お薦めはしません」

「ああ、承知した」

「もちろん本船には、海の魔物除けがありますので近くに魔物は寄ってこないでしょうが……」

「いや、あえて危機を招く必要はない。どこかの水属性の魔法使いと違ってな」

「アベル、ケンカなら買いますよ!」

アベルがわざわざ煽るような言い方をして、涼がそれに答える。


そこに、コバッチ料理長が入ってくる。

「陛下、デザートのリンドーパイをお持ちしました」


とても美味しそうなアップルパイ!


「美味しそうなパイに免じて、アベルを許してあげます」

「その言葉をそっくりそのままリョウに返してやる」

涼もアベルも、威勢のいいことを言っているが、視線はすでにリンドーパイにくぎ付け。


やはり美味しい料理こそが、世界平和の(かぎ)となるに違いない。



ウィットナッシュを出港して七日後、スキーズブラズニル号は最初の海洋国家ピシュカン国に寄港するのだった。

とても大切なお知らせです。(本日2025年1月10日 正午解禁情報)


『水属性の魔法使い』が、

2025年7月より、TBSほかにて、TVアニメとして放送開始予定です!


パチパチパチ~。

読者の皆様が応援してくださったおかげです!

本当に、ありがとうございます。


キャストも決まっております。

涼:村瀬 歩さん

アベル:浦 和希さん

セーラ:本渡 楓さん


ああ、なんて素晴らしい、なんて楽しみなんでしょう!


・公式サイト

mizuzokusei-anime.com


・公式X

https://x.com/anime_mizuzoku


公式サイトには、いろいろと載っていると思います。

(少なくとも筆者の感激の言葉は載っています)

見てください!


公式Xは、Xアカウントを持っている方には、ぜひフォローしてほしいです。

多くの人がフォローしてくだされば、アニメ製作陣はもちろん、筆者など書籍周りの人たちもとっても嬉しく感じるでしょう。

期待している人がいっぱい! ってことですから。

そうなるといいなあ、と思っております。


よろしくお願いします!

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『水属性の魔法使い』第三部 第4巻表紙  2025年12月15日(月)発売! html>
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