0691 魔人教奇譚Ⅰ
「あの水色髪に……先代お頭は倒されました」
三人の男たちが怒りに満ちた表情で呟いた。
「さっきの水色髪は、間違いなく魔人の眷属。あいつと、その先代お頭は戦ったのか?」
「はい、何年も……。先代お頭以外は、あいつと互角に戦える者はいませんでしたので」
アベルの問いに中央の男が答える。
「すげーじゃねえか。あれは、間違いなく化物だぞ。それと戦えていたなんて」
「いえ……」
アベルが先代お頭を称賛するが、三人の歯切れが悪い。
「先代お頭と戦った時より……」
「とんでもなく強くなってる……」
「正直、あそこまで強くありませんでした」
三人は、はっきりと告げた。
顔色が青くなっている。
敵が信じられないほど強くなったのを目の当たりにしたからだ。
以前も、もちろん強かった。
最終的に、先代お頭は倒されたのだから。
しかし、今の強さは……。
いや、今の速さは……。
「信じられないくらい速かったです」
涼も頷く。
「確かに剣閃も鋭かったが……リョウが言うほどか?」
「ええ。体の動き……なんですかね。現れた時も去った時も、僕のソナーで捉えきれませんでした」
涼が顔をしかめている。
「あれ……普通に移動してきたのか?」
「どういう意味ですか?」
「ほら、帝国の男爵みたいに<転移>とかじゃないのか?」
「まさか……」
アベルの言葉に、驚く涼。
確かに、<転移>で突然現れて、<転移>で突然去っていった……その方がしっくりくるほどの動きではあったが。
「そういえば、西方諸国の赤服の魔人マーリンさんは、<転移>が得意でした。ダンジョンの力を使ったとはいえ、西方諸国から王国まで一気にローマンたちを、転移で送ってくれましたし」
涼が思い出したかのように呟く。
「そうそう、悪魔のジャン・ジャックも<転移>が得意ですね。マーリンさんとジャン・ジャックの魔法戦は凄かったようです。マーリンさん、重力系というか慣性系というか、そんな魔法を駆使していました。やはり、魔人は重力を扱うのに長けているのでしょう。アインシュタインは言いました、『重力とは、空間の歪みである』と。それは、重力を直接扱える魔人たちは、空間の歪み……つまり<転移>などを使えるという理屈になるのかもしれません」
口から紡がれる思考。
「彼ら魔人たちは、僕らが使う水属性の魔法のような六属性……いえ、少なくとも風、火、土、水の四属性は使えます。重力から他の四属性の魔力に分かれていったのではないかという僕の仮説は、間違っていないとも言えますよね。重力系の魔法は、『無属性魔法』のカテゴリー、つまり無属性魔法から他の四属性魔法に分かれていく? もちろんそれは、『魔力とは、余剰次元にある重力である』という僕の仮説にも通じるものですが……重力を直接扱える魔人たちは、僕らよりも四属性魔法を上手く使える? いえ、それは論理の飛躍過ぎですね」
決して大きい声ではないが、アベルも三人も何も言えずに、涼を見守る。
「物理学において、この世界にある全ての『力』は、四つに分類することができます。すなわち、強い力、弱い力、電磁気力、そして重力。四属性の魔法は、全て電磁気力によるものだと考えていいでしょう。つまり、原子核の周りをまわる電子の動きによるものです。強い力と弱い力は、原子どころか原子を形作っている原子核のレベルの範囲でしか作用しない、非常に狭い範囲でのみ干渉する力……魔法を含めて、我々の生活で認識することはありませんし、必要もないものです。この強い力と弱い力、そして電磁気力の三つの力は、もう少しすれば統一した式で表すことが可能になると言われていました。そう、統一場理論というやつです。でも、そこまで進んでも、『重力』だけは……意味不明。天才の中の天才の中の天才たちである歴史に名を残す物理学者たちですら、重力までを含めた四つの力全てを表す式を作れる見込みはまだまだない……式を作るというのは、『理解した』と同義。つまり式が作れないということは、理解できていないという意味」
理論物理学と魔法、魔力の融合。
それは、涼にしかできない特別な行為。
「重力だけ異質なもの、そう考えるべきだと僕は思っています。他の三つの力と比べて、あまりに小さすぎる……ほとんど誤差と言ってもいいほどの力の弱さ。それなのに、誰も無視できず、他の三つの力たちは統合して説明できそうなのに、重力だけはその見込みは全く立っていない」
次から次へと溢れる発想の連続。
「重力を含めた四つの力は、宇宙開闢時には一つの力だった。それが、温度と圧力が下がることによってまず重力が離れ、次に強い力が離れ、弱い力が離れていき、四つの力に分かれた。本当に? 重力を中心に考えるのは邪道? 重力が本流で、そこから強い力、弱い力、電磁気力が分かれていったと考えるのは変? いや、そこはちゃんと理論物理学に立ち返って研究しなおす必要があります……ああ、あの美しい数式の数々を全て覚えたまま、この世界に来ていれば……」
涼は目を閉じ、おぼろげな記憶の底にある数式の数々を思い出す。
その表情は穏やかでありながら、喜悦と呼んでもよい雰囲気を醸し出していた。
「おい、リョウ」
「え?」
アベルの呼びかけに、涼は驚き目を開けた。
アベルと三人が、涼を見ている。
そこでようやく、自分が思考を口に出してしゃべり続けていたことに気付く。
ちょっと恥ずかしい。
「あ~、え~っと……さっきの人は眷属でしたけど、魔人本体もいるんですかね?」
恥ずかしさをごまかすための質問。
「いないだろう」
だが涼の質問に即答するアベル。
「え? なんで言い切れるんです?」
「いたら、簡単に潰されている」
「なるほど」
魔人の眷属は強い。
非常に強力だ。
人の力で抗うのは難しいほどに。
しかし、魔人本体は、もっと強い。
抗おうとすることそのものが無駄であると、万人に認識させるほどに。
「どちらにしろ、もう少し詳しい話を聞きたい」
「ぜひ、我らの村へお越しください」
アベルの言葉に、中央の男が呼び掛けた。
両脇の男たちも頷く。
アベルはチラリと涼を見る。
涼は小さく頷いた。
もちろん涼も否やはない。
どうせ、どこかで体を休める必要があるのだし。
いや、最悪、涼とアベルはどれほどの艱難辛苦を経験しようとも問題ないが、アンダルシアには苦労させたくはない。
だが、涼は気付いた。
「あの~、僕って、まだ自己紹介してませんよね?」
「あ……」
涼の言葉に驚くアベル。
そう、二人は名乗っていない。
「俺は確かにアベル、こっちがリョウだ」
「リョウです。よろしくお願いします」
アベルと涼が自己紹介する。
もっとも、アベルの事は知られているようなので、涼の分だけだが。
「私はロンジャと言います。この二人は、バッタとハッタです」
二人の質問に答えていたリーダー格はロンジャと名乗り、他の二人を紹介した。
「よし、では村にお邪魔しよう。でかい氷の荷物は村の外で構わんが、二頭の馬は入れてもらえると助かる」
「もちろんです。その氷の……お荷物も村に入れてもらって大丈夫です」
アベルの問いに、ロンジャが頷く。
こうして、涼とアベルは、魔人教徒と争っている辺境の村に逗留することになった。
移動すること三十分。
その村が見えてきた。
「あれが我らのファラファオ村です」
案内するロンジャの声が、少し嬉しそうだ。
「村……?」
「そびえる城壁と言うべきでは……」
アベルと涼は、その『ファラファオ村』の外観に驚いた。
そう、素直に驚いた。
村と聞いていたので、涼とアベルが想像していたのは、ほのぼのとした村。
牧歌的という表現がぴったりであろう村。
敵対勢力がいるということで、柵はあるかもしれないと思っていた。
だがそれは、せいぜい、丸太を組んだような……そんな柵であろうと。
しかし、現実は違っていた。
彼らの目から見えるのは、壁だけ。
それも間違いなく、石組。
涼の頭の中に浮かんだのは、日本の城の石垣。
その中でも、綺麗に四角形を基本に切断された石を積み上げた切込接。
緩やかな弧を描き、上に行くにしたがって急勾配になっている。
いわゆる、扇の勾配。
美しい。
「まさに芸術です」
驚きの後は、その美しさに感動しため息を漏らす涼。
「いや、凄いとは思うが……」
アベルはそこまで感動していないらしい。
「まったく、これほどの美しい城壁、というか石垣を見て感動しないなんて。国王としてそれはどうかと思うんです」
「そう言われてもな……王都の城壁とは全然違うし……」
「当然です。そんな認識のアベルには、加藤清正公の清正流について、小一時間ほど講義してやりたいくらいです」
なぜか憤懣やるかたない様子の涼。
清正流とは、石垣の下部を緩やかにすることで安定させ、上部に反りを付けた石垣の組み方だ。
九州出身の涼は、加藤清正によって築城された熊本城の石組に感動した記憶がある。
この村の城壁は、それを彷彿とさせる。
そんな芸術的な城壁……それはそれとして、やはり疑問が湧く。
この城壁の高さは、恐らく五メートル以上ある。
『村』を守る『柵』としては、あまりに巨大であまりに違和感がある。
「本来、こんなことはあり得ないのです」
「まあ、聞いたことはないが……村が、巨大な城壁を持っていても悪くはないだろう?」
「悪くはありません。ただ、経済規模的にあり得ないことなのです」
「そうか?」
「簡単に言えば、お金のない人が豪邸に住んだりしないのと同じ理屈です」
「分かるような分からないような……」
涼のたとえは、アベルでも受け入れ微妙らしい。
「まあ、とにかく、この石組は素晴らしいものです」
涼は満足げに頷く。
「組み上げの指揮は、先代のお頭です」
「おぉ!」
「お頭は、城壁の角に『ヤグラ』を建てるとおっしゃっていたのですが、それを成す前に、お亡くなりに」
「なんと」
ロンジャの説明に驚く涼。
その驚きは、当然、先代お頭が転生者だったのではないかとの驚きだ。
「設計も、その先代お頭さんが?」
「いえ、設計は、設計書に基づいて行われました」
「設計書?」
「この地域には、クンマモ城という城がありました。とても珍しい形で……。聞くところによれば、ダーウェイの他の地域でも見られない、本当に特殊な形の城で。その城の設計書を参考に、石を組み上げ、その上にヤグラを建てる予定でした」
「クンマモ……城……」
涼の頭に浮かんだ言葉は、当然、クマモト城……。
「ぜ、ぜひその、クンマモ城なるものを見なければ……」
涼の言葉に、ロンジャは申し訳なさそうな顔になって答えた。
「クンマモ城は、もうありません」
その時の涼の顔と言ったら……題名をつけるなら『絶望』以外にはないであろう。
「まさか……」
「はい、魔人教の連中に襲われ、五年前に破壊されました」
「なんたること!」
ロンジャの説明に、悔しさを前面に出し顔をしかめる涼。
だが、しばらくすると顔を上げた。
「クンマモ城は、一度は壊されたかもしれません。ですが、いつか必ず復活します! 僕はここに予言しましょう、必ずや生き返ると」
涼ははっきりと言い切った。
「実は、クンマモ城の近くに村がありました。その村は、四年前に、豊かな鉄の鉱床がみつかり、近年は街となってかなり大きな発展を遂げています」
「おぉ! クンマモ城の意思は潰えていなかったのですね。確かなものは引き継がれるのです」
「なぜリョウは、そんなにクンマモ城に思い入れがあるんだ」
力強く復活を祝う涼を横目に、よく分からないアベル。
さすがに、涼が、クンマモ城を熊本城にオーバーラップさせているとは分からない。
「地震で崩れた熊本城も、人の力によって復興しました。魔人教徒らによって壊されたクンマモ城も、その意思は人によって引き継がれたのです!」
なぜか右拳を高々と突き上げる涼。
それを冷たく見守るアベルは、いつもの通り。
だが、ロンジャ、バッタ、ハッタの三人は、どことなくばつの悪そうな表情。
それを見つけた涼が問いかける。
「えっと、なぜ三人はそんな表情なのですか?」
「街となった……今ではジュラジュの街と呼ばれているのですが、ジュラジュは非常に発展しています。ですが、彼らはクンマモ城を復興させる気は全くありませんで……」
「なんですと」
「先代お頭は、彼らに呼び掛けたのです。クンマモ城を復興させようと。ですが、ジュラジュの街の者たちは拒否しました。それはちょうど四年前で、鉱床が発見され、そちらの開発で忙しくなったからだったのだとは思うのですが……」
「ああ……」
涼が悲しそうに小さく首を振る。
もちろん、ジュラジュの街の人間を非難しようとは思わない。
それも一つの選択であることは理解できるから。
しかし、それでも……。
「仕方ありません、アベル!」
「俺?」
突然話を振られ驚くアベル。
「僕らの手で、クンマモ城を復興させましょう!」
「いや、待て。そういうのは、現地の人間たちの気持ちが大切だろう? 彼らがその気になっていないのに俺たちが先走っても、いい結果は生まれんぞ」
「ぐぬぬ」
アベルの正論に抑え込まれる涼。
そこに、ロンジャが補足する。
「復興しないジュラジュの街の人たちの代わりに、先代お頭はこの村にクンマモ城を復興させようとしたのです」
「なるほど!」
生き返る涼。
「つまりこのそびえる城壁は、クンマモ城の意志を継いだというその表れ。なんて素晴らしい」
「まあ、そう考えると、すごいものだと感じるよな」
喜びに打ち震える涼、改めて巨大な城壁を見て頷くアベル。
二人を見て、嬉しそうなロンジャら男三人。
そんな五人と二頭と五台の<台車>は、城壁の下に到着した。
「素晴らしいです! このRがなんとも言えません」
石垣が描くカーブを絶賛する涼。
「そそり立つ壁、という感じだな」
その高さに感心するアベル。
「門を開けてくれ!」
ロンジャがそう叫ぶと、門が左右に開いた。
基本は木製の門であるが、表面に鉄板が張られている。
「火矢への対抗策でしょうか」
「だろうな。木の門だと、焼け落ちる可能性がある」
涼の言葉に頷くアベル。
もちろん涼が知る熊本城の城門は、木製だ。
一行が城門の中に入っていくと……。
「ロンジャ、よく戻った!」
ようやく成人になったばかりであろう女性が、嬉しそうにそう言った。
「お頭、外で素晴らしい出会いがありましたよ」
その若い女性が、今のお頭らしい。
ロンジャは、後ろを振り返って紹介した。
「見ればお分かりかと思いますが、アベル王です」
「おぉ……」
集まってくる人々。
その表情は、全員が驚いたものとなっている。
アベルの目の前に立ち、お頭が頭を下げた。
「ファラファオ村を預かっております、頭のアンジュと申します。アベル王、どうかお見知りおきを」
「アベルだ。先代お頭の話はロンジャ殿から聞いた。まあ早速、魔人の眷属に襲われたがな」
アベルが笑いながら言う。
それを聞いて村人は驚いたようだ。
隣の者たちと話し始めた。
「その、魔人の眷属というのはもしや……」
「ああ。水色髪のやつだ」
「父上の仇!」
アベルの答えに、顔をしかめて声を絞り出すアンジュ。
「そうか、先代お頭は、アンジュ殿の父上であったか」
「はい……」
「奴は俺に、いずれまた会うと言っていた」
「なんですって!」
「それが少し気になってな。しばらく、この村に逗留させてもらえるとありがたい」
「もちろんです!」
アベルの提案に、大きく目を見開きながらも即答するアンジュ。
涼とアベルと二頭の愛馬は、ファラファオの村に受け入れられた。
「私が、アベル王、一の家臣、ロンド公爵リョウ・ミハラです」
「おぉ……」
「共に、アベル王を盛り立てていきましょう!」
「おぉ!」
涼の口上に盛り上がるファラファオの村人たち。
「さあさあ、リョウさん、まずは一杯!」
「おっと……おっとっとっと」
「さあ、ぐぐーっと!」
一息にあおる涼。
「おぉー!」
「いい飲みっぷり!」
「さすがアベル王の一の家臣!」
「いやあ、それほどでも」
酒宴で盛り上がる村人と涼。
アベルはそれを少し離れて見ている。
小さく肩をすくめて。
隣にいて、いろいろ説明をしているのはロンジャだ。
「すいません、俺の親父が……」
「いや、バンジョ殿だったか? まあ、リョウは本質的に人たらしだからな」
ロンジャは父親が涼のジョッキに酒を注いだのを恐縮し、アベルは涼なら問題ないと笑う。
だがアベルは、さらに離れた場所で、一人でゆっくり杯を傾けている女性に目が行く。
「アンジュ殿は……」
「ええ、お頭は、この一年ずっとああです」
アベルの言葉に答えるロンジャ。
その表情には、寂しさと悲しさが入り混じっている。
「何らかの形で、魔人教の連中との決着をつけないと、前に進めないのかもしれません」
「そいつは厄介だな」
ロンジャの言葉に、顔をしかめるアベル。
『教徒』だけならなんとかなるだろう。
だが相手には『眷属』がいる。
ただ一人で、何千、何万の人間にも抗する化物だ。
アベルは小さく首を振って、前に広げた地図に意識を戻した。
「そのクンマモ城の近くにできた街……ジュラジュの街だったか。それほど大きいのか?」
「はい。ここも村にしては大きい方ですが、それでも人口はせいぜい五百人ほどです。ですがジュラジュの街の人口は十万人にも届こうかとしています」
「十万? かなりでかいな」
アベルは驚いた。
だが同時に首をひねる。
二人が通ってきた道上には、それほど大きな街は無かった。
「お二人が通ってきた道は、南河の北岸を北上……途中から西北に方向を変えたと聞きましたので、この道を通ってこられたのでしょう」
ロンジャがそう言いながら、広げた地図を指でたどる。
「このファラファオ村は、地図ではこの辺りです」
そうやって指さしたのは、地図の左上、外縁ギリギリ。
「マジでダーウェイの辺境なんだな」
「そうですね。正直、ダーウェイ中央の威光が届くギリギリと言ってもいいのかもしれません」
「威光?」
「はい。先ほど言った、鉄の鉱床で大きくなったジュラジュの街ですが、街の外に北西鎮守軍の詰所が置かれています。そこには、四千人ほどの軍がいます。この辺りは辺境ですので、盗賊や山賊の類はいます。それらを排除するためですね」
「なるほど」
ロンジャの説明にアベルは頷いた。
ある程度以上の規模になれば、どんな国家においても、辺境地域というものは存在する。
そして辺境地域という場所は、中央政府がある場所に比べて治安が悪くなる。
だから、国家の統治能力を測るバロメーターの一つとして、辺境の治安はどうか、というのがあるのだが……。
治安を安定させるためには、どうしても軍隊や警察といった『力』が必要になる。
もちろん、コントロールの利く『力』でなければならない。
そして、ある程度の強い『力』である必要もある。
二人は知らなかった。
この夜、北西鎮守軍の詰所が襲撃されたことを。




