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水属性の魔法使い  作者: 久宝 忠
第二部 第四章 マファルダ共和国
368/930

0343 チェーザレ

本日二話投稿。二話目です。


0時に、前話「0342 ニール・アンダーセン」を投稿しております。

そちらからお読みください。

「さて、あの六人が誰か、あるいはどこの手の者か分かりますか?」

涼は、傍らに逃げ込んできた二人に尋ねる。

二人の目は、大きく見開いている。


「おそらく……教会の、どれかの暗殺部隊」

バンガン隊長が、呟くように答えた。


「どれかの? そんなにたくさん暗殺部隊を抱えているんですか……なんて恐ろしい」

涼は何度も首を振りながら言う。


「噂ですが、十二人の枢機卿と教皇がそれぞれ……合計十三の暗殺部隊があると言われています」

アマーリア副隊長が答えた。


さすが諜報特務庁である。敵側の情報収集には余念がないらしい。


「となると……彼らは捕らえて吐かせた方がいいわけですね」

涼は呟く。

「そうですけど、驚くほどの手練れ揃いのはずです……」

バンガン隊長も小さい声で答える。

アマーリア副隊長は、隣で生唾を飲み込んでいる。かなり緊張しているらしい。



暗殺部隊六人は、じりじりと近づいてくる。



「では、いきましょうか」

涼は呟いて、唱えた。


「<氷棺6>」


一瞬で、六体の氷の塊が生まれた。中に、暗殺部隊の者たちを閉じ込めて。


「え……」

バンガンとアマーリアが、異口同音に呟く。


涼は氷の棺に近づきながら言った。

「よしよし。久しぶりに<氷棺>使った気がするから大丈夫かなと思いましたけど、大丈夫でした。技術は衰えない、ですね」

ペタペタと叩きながら、満足そうに頷く。



「あの……生かして捕らえるんじゃ?」

バンガン隊長が、恐ろしげな顔をして問う。

自分に、今の魔法を向けられたらと思ったのかもしれない。


「ああ、大丈夫ですよ。この人たち、生きてますから」

「この状況で……生きてる……?」

アマーリア副隊長の呟きは、隣のバンガンにだけ聞こえた。


「ここで尋問してもいいですけど、尋問の技術とかない……」

そこまで言ったところで、涼は突然、動いた。



「<アイスウォール10層>」



バキッ、ジュッ。



極太の炎が、渦を巻きながら、涼を襲った。

それを防いだ氷の壁が、九層までが融けた。


「馬鹿な……」

それは、涼ですら驚く威力。


アイスウォールを融かす炎など、レオノールか、あの爆炎の魔法使いくらいしか思いつかない……あるいは、赤い熊か。

まさかそんなレベルの……?




その五人は、突然現れた。



「転移? いや、この感じは違う……」

涼は、これまで何度か、転移で現れる者たちの感覚を経験している。

正確には、転移で現れる者たちを、<パッシブソナー>がどう捉えるかを知っている。


目の前の五人は違った。


むしろ、あのラフレシアもどきな植物魔物に近い。

もちろんあれは、光学系の隠蔽だが……それの、上位互換の隠蔽を解除したかのような……。


そんな現れ方。



「まさか、俺の<ファイヤーブレス>で貫けないとは……驚きだ」

中央の、燃えるような赤い髪の男が、あまり抑揚のない声で言う。

二十代後半だろうか、身長は百八十センチほど。

服は白い、ローブというより、地球における軍用コートに近いものを着ている。


「チェーザレ、どうする?」

「全員、殺す。俺に合わせろ」


そう言うと、赤い髪のチェーザレと呼ばれた男は、右手を肩の高さにまで上げ、唱えた。


「<ファイヤーカノン>」

唱えた瞬間、チェーザレの右腕から、無数の炎の弾丸が発射された。

「<ファイヤーボール>」

他の四人も唱えると、それぞれ、数十個の炎の塊が発射された。


「<アイスウォール20層>」

涼は、特務庁二人の前に移動して、前面に氷の壁を生成する。



だが、涼の氷の壁すら……。



「融ける? なんという威力……」

驚くべきことに、涼のアイスウォールを融かし、貫く……。


そのたびに、張りなおされる氷の壁。

だが……。



「あの人たち……」

アマーリア副隊長の呟きが聞こえた。

見ると、凍らせた六人……凍らせた氷の棺は攻撃を受け、無残にも破壊されていた。

中に閉じ込めていた者たちも……。


「味方じゃないのか……」

バンガン隊長の絞り出した声は、苦々しさを伴っていた。

自分たちを殺そうとした六人ではあるが、戦闘能力を失った者たちだった……それをあえて攻撃して殺す必要は……。



涼は、傍らのバンガンとアマーリアをちらりと見た。

(二人を守りながら戦うには、難しい相手……)

そう判断を下した。


そうと決まれば、話は早い。


右手でバンガン、左手でアマーリアの腰を掴む。

さらに、二人を取り落とさないように、氷で補強する。

「え?」

異口同音に疑問の声を出す二人。



「逃げるよ」



言うが早いか、立て続けに唱える。


「<アイスミスト><積層アイスウォール20層><ウォータージェットスラスタ>」


氷の霧に紛れ、氷の壁で遮り、水で飛んで……三人は撤退した。


若干二名ほどは、途中で気絶してしまったが……。




気絶から目が覚めたバンガンとアマーリアは、涼を連れて諜報特務庁の本庁に到着した。

とりあえずの報告を、上司にする必要もあったし、首都の中で、この二人にとって最も安全な場所は、間違いなくこの諜報特務庁だったからだ。


「あんな大物が出てくるなんて……」

バンガンの呟きは、涼にも聞こえた。

「さっきの人たち、誰か分かるんですか?」

「ええ、チェーザレと呼ばれていましたから……」

涼の問いに、バンガンは頷いて答えた。


だが、答えたのは、アマーリアであった。

「チェーザレって、やっぱり、教皇直属第三司教のチェーザレ……?」

「ああ。教皇直属の暗殺部隊を率いる四司教の一人……。噂以上の魔法だった」

バンガンは頷く。


「確かに凄い魔法でした」

涼も頷いた。

だが、涼には気になることがあった。

五人が魔法を発動した時、彼らがつけていたブローチが、ほんの僅かに光ったのだ。

そして、涼の認識が間違っていなければ、あの光は……。

((錬金術が発動するときの光でした))

((……俺に錬金術の話を振られても答えられんぞ?))


『魂の響』のアベルは、忙しい王様であるうえに、錬金術は門外漢だ。


((忙しいアベルにしかできないことだから、仕方なくこうして話かけているのです。ええ、仕方なくです。そう、仕方なくなのです))

((お、おう……。で、俺にどうしろと?))

((ケネスに確認してほしいのです。『融合魔法』について、詳しく))



そう、涼は、彼らの異常に強力な魔法は、錬金術と魔法を合わせた結果だと考えたのだ。

そしてそれは、融合魔法と呼ばれていることを、ケネスやイラリオンに聞いたことがある。



だが、そうなると……。


彼らの背後には、ケネス・ヘイワード子爵に匹敵する天才錬金術師がいることになる。



いろいろと厄介なことになりそうだ……。



そして、三人は特務庁に入った。

涼は、一人応接室に残され、二人は報告へ。


(はっ、これは……もしや)

涼はあることに気づく。

(貴族令嬢救出昵懇(じっこん)法則は、発動しませんでしたけど、派生型とも言える隊員救助昵懇法則の発動なのでは? ついに……折られ続けた、異世界ファンタジーものよくある法則が発動したに違いありません!)



感動していた。



二分後。


目の前に出されたコーヒーを飲もうとしたところで……乱暴に扉が開かれた。

そして、警備兵らしき者たちが入ってきて、涼が座っているソファーを取り囲む。


「……え?」

困惑する涼。


入ってきた者の指揮官らしき男が言い放った。


「身分詐称(さしょう)の容疑で逮捕する」


「……はい?」


本日2021年6月19日(土)、『水属性の魔法使い』第二巻の発売日です!


お昼過ぎ、活動報告でもあげたのですが、

Amazon kindleラノベランキングで、


3位:『水属性の魔法使い』第一巻

4位:『水属性の魔法使い』第二巻


と、二冊ともトップ5に入っていたのですよ!

うちの子たち、頑張っています!


これも、いつも応援してくださり、お買い求めくださった読者の皆様のおかげです。

本当にありがとうございます!

https://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/digital-text/2410280051/ref=zg_bs


TOブックスTwitterでも、証拠画像(?)付きで紹介していただきました!

https://twitter.com/TOBOOKS/status/1406144914757357574



ちなみに1位は「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編4.5」、2位は「Re:ゼロ 27巻」

どちらもアニメ化された大人気作品です!

ちなみにちなみに、5位は「閃光のハサウェイ(上)」でした。


そんなアニメ化作品の中で、輝きを放つうちの子たち。


ものすごくものすごく、嬉しいですよ!

そして、ありがたい事だと思っています。



これからも、なろうでも更新を続けていきますので、楽しくお読みいただければと思います。

どうか、応援よろしくお願いいたします!

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『水属性の魔法使い』第三部 第3巻表紙  2025年7月15日(火)発売! html>
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