0331 ダンジョン攻略……本格化
本日二話目です。
0時に、「0330 金色の目 【書籍版 情報解禁記念!】」を投稿しております。
そちらから、お読みください。そちらのあとがきに、今後の書籍版などについても書いております。
次の日から、本格的な西ダンジョン攻略が始まった。
西ダンジョンは、基本的に、フロアボスや階層主と呼ばれるようなものはいない。
ただ、五十層、百層、百五十層に、異常に強力な魔物が出て、それを倒さない限り、下への階段が現れないことは知られている。
「到達最深層って、百五十層でしたよね? もしかしてそれって……」
「うん。その百五十層の魔物を倒したパーティーはいないらしいよ」
「もしや、一度倒した魔物も、時間が経てば再び現れる?」
「みたいだね」
涼とエトが、『ダンジョン地図』を見ながら、そんな話をしている。
話をしながらも、一行はダンジョンを進んでいた。
現在、四十九層。
四十一層からは、洞窟の中のような、岩場のダンジョン。
そこに、コウモリ系と狼系の魔物が現れる。
上からのコウモリ、下からの狼と、なかなかに厄介なコンビネーションになる。
決して弱くはない。
だが、この探索一行にかかると……。
「<アイスウォールパッケージ>」
涼が氷で屋根を作り、コウモリが一行に攻撃を与えることはできなくなる。
そのうえで、前衛四人が、狼を確実に屠っていく。
狼を倒し終わったら、<アイスウォール>を解除して、コウモリを倒す。
完璧な連携。
「よし、四十九層終了だな」
一行は、四十九層の終点に着いた。
「明日は五十層ですね」
涼が嬉しそうに言う。
『ちゃんと』ダンジョン探索をできているのが、嬉しいのだ。
「五十層にいるのは、ボス一体だけらしいよ」
「おぉ~」
エトの説明に、さらにテンションの上がる涼。
「厄介なのは、どんな魔物が出るか、その時々によって変わるということと、フロアの適性も変わるんだって……」
「フロアの適性?」
涼が首を傾げる。
「そう。例えば、炎の鳥とマグマが噴き出すフロアとか……」
「なんと!」
驚くほどえげつない組み合わせだ。
普通のパーティーであれば、攻略はかなり難しいだろう。
「そんな相手、倒すの大変じゃないですか?」
「うん。実際、この五十層の突破率って、一パーセント以下だってさ」
「なんという……」
「しかも、かなり恵まれたボスが出た場合に突破できる、くらいに言われているみたいで、普通の、いわゆる『稼ぎたい』パーティーは、四十九層までで攻略を止めるんだって」
「なるほど……」
ゲームとは違うのだ。
命が懸かっているのだ、パーティー全員の。
「とりあえず行ってみよう」で臨める場所ではないらしい。
「それって、撤退とかは……」
「うん、五十層ボスはできない。百層ボスは撤退できるけど、五十層ボスは入口の扉が閉まる。つまりボスを倒して『石碑』に記録を残すか……」
「倒せないで全滅するか、か」
涼が確認し、エトが肯定し、ニルスが頷く。
本気でダンジョン攻略を目指すかどうかのふるいにかけられる……それが五十層の役割。
「そう考えると……無理に攻略する必要はない気がするんですが……」
ハロルドが言う。
そう、彼らの目的は、再びマーリンに会うこと。
そのためには、攻略を進める必要は、実際のところない。
だが……。
「マーリンは、このダンジョンの管理人と言った。五十層のボスを倒すこともできない者たちの前に、再びは出てこないんじゃないか……」
ニルスが言う通り、一行は思っているのだ。
何においてもそうだ。
力を示せ。
そうでなければ、人は動かない。
無視できない力を示せば、相手は無視できない。
力を示せないような者の言うことなど、誰が聞くというのか。
みんな、そんなに暇じゃない!
その力を示すために、一行は五十層を攻略する。
翌日。
一行は、五十層に足を踏み入れた。
そこには、両開きの、巨大な石の扉が。
扉には、なにやら巨大なレリーフが彫られている。
「いかにもな扉ですね」
涼が扉の前で腕を組んで、偉そうに論評している。
「昨日話した通り、前後二列。前衛が俺ら四人。後衛が涼とエト、ジークだ。みんな、死ぬなよ!」
「おう!」
ニルスが言い、全員が応じた。
石の扉は、スムーズに開いた。
全員が中に入ると、ひとりでに閉まる。
そこは、運動場のように広く、天井も高い……四十メートル以上はあるだろうか。
空を飛ぶ魔物にも対応した部屋なのだろう。
地面は、岩のままだ。
明かりは、かがり火がたかれている。
一行が進むと……。
それは現れた。
「骸骨の……王? 聞いたことないけど……」
エトが呟く。
涼も最初は、その姿に驚いたが、すぐに別の事に意識が持っていかれる。
それは違和感。
かつて経験したことのある、違和感。
何度か経験したことのある……。
そういえば、西方ダンジョンに、そんな罠があると以前聞いたことがある……違和感。
「まさか……魔法無効空間」
「0035 怪獣大決戦」アベルのセリフ中の
「西方諸国にあるダンジョンの中に、そんな罠があるらしい。魔法無効空間の部屋」
の伏線が回収されました!
長かった……。




