番外 <<幕間>>ズラーンスー公の最期
なんとなく、急いで、ズラーンスー公の最期を書いてみました。
あった方がいい、みたいな話があったので……。
すごく短いです。
突然、今さら、急にすいません。
辺りを圧する轟音が、響いた。
アイテケ・ボの住民たちは、生まれてはじめて見たのだ。
巨大な城壁が崩れる様を。
何か分からないが、走り出す人々。
ペタリと座り込み、呆然とその光景に見入る人々。
そして、立ったまま、ただ叫ぶ人々……。
だが、彼らは不幸ではなかった。
なぜなら、その光景を見続ける事ができたのだから。
それは、つまり、命を取られたわけではなかったという事なのだから……。
彼らは、東岸の住民たち。
崩れた城壁は、西岸側。
城壁を崩したものたちは、そのまま突き進み、一直線に国主館に……突き刺さった。
「な、何じゃ、何が起きた!?」
国主ズラーンスー公は叫ぶ。
常に、彼の傍らにいる護衛隊長グジャも、何が起きているのか全く理解できていない。
当然、国主の問いに、誰も答える事はできない。
答えは、扉の外からやってきた。
「た、大変です! 魔物が……」
急いで報告のために駆けてきた護衛隊員の後ろから、無数のウォーウルフが迫る。
「ば、馬鹿者、扉を閉め……」
グジャの叫びは、飛び込んできたウォーウルフの一団に、虚しくかき消され……。
護衛隊長は、何の抵抗もできずにこの世を去った。
魔物たちが求める物は……。
「ひぃ……」
悲鳴すら、満足にあげる事ができないズラーンスー公。
なぜなら、彼の周りは、ぐるりと囲まれていたからだ。
狼。
猪。
蛇。
そして、伸びてきているキャタピラーの触手……。
狙いは、ズラーンスー公が手に持っている槍。
言うまでもなく、ズラーンスー公の命令で採ってこられた世界樹の枝、それから作られた槍だ……。
ここに至って、ようやく気付いたのだ。
全ての原因が、この槍であり、自分が下した命令であり、自分の愚かしさにあったことに。
だが、もう遅い。
「ああ……」
キャタピラーの触手が、槍を取る。
魔物たちの目に宿る殺意は、ズラーンスー公に向けられたままだ。
彼らは知っているのだ。
誰が下した命令で、枝が折られたのかを。
『森』は全てを知っているのだ。
人の街の営みも。
人の国の構造も。
人の、誰が責任を取るべき者なのかも……。
責任をとらされ……。
ズラーンスー公の命は果てた。
その瞬間、全ての魔物の攻撃性が収まり、撤退が始まった。
西岸において、ギリギリで命が助かった者たちは、けっこう多かった。
東岸では、住民たちも、王国使節団の者たちも完全な無傷であった。
もっとも、基礎部分を破壊された国主館は、結局崩壊したのであるが。
書いた方がいいのかな、と思いまして。
もしかしたら、後で消したり修正したり、するかもしれません……。
お知らせしたとおり、明日は二話投稿です。




