番外 <<幕間>> 第一部完結 一カ月記念SS 騎士団
「なあスコッティー、俺ら、働き過ぎじゃないか?」
「うん、そんな気はするな。解放戦が終わったと思ったら、今度はずっと演習だもんな」
騎士ザック・クーラーは問いかけ、騎士スコッティー・コブックも同意した。
実際には、王国解放戦が終わってから、少しだけ休暇を貰えたのだが……こう、連日演習が続けば、ボヤキの一つも言いたくなるかもしれない。
「それもこれも、新しい騎士団長様の気合入り過ぎなのが原因……」
「まあ、対抗組織が着々と団員集めをしているからね。古参騎士団としては、頑張らないといけないのでしょうよ」
ザックが原因を指摘し、スコッティーが原因の原因を指摘する。
観覧席では、演習を見る国王陛下と、戦後、新たに騎士団長に任命された人物が話している。
「ドンタン団長、かなり様になってきたな」
「ありがたきお言葉」
そう、ドンタンが王国騎士団長となったのだ。
かつて、トワイライトランドへの使節団護衛では護衛隊長を務め、南部軍ではかつての騎士団長ハインライン侯爵を補佐し、王城へ潜入隊を率いてスタッフォード四世の身柄確保の指揮を執った、あのドンタン隊長だ。
アベル王直々のご指名であった。
それに伴い、ザックとスコッティーの地位も少しだけ上がっている……。
だが、『騎士団』が話題になっているのは、それだけではなかった。
完全に、国王直下の騎士団として再編成された王国騎士団。
これまで、男性だけの騎士団であった。
そこには、伝統やその他もろもろの理由があったわけだが……。
王城には多くの女性がいる。
高貴な身分の女性もいる。
彼女らからしてみれば、いくら王国騎士団員とはいえ、男性の護衛では少し困る……という場面もあったのだ。
そのため、女性団員を求める声は、昔からあった。
アベルはその声をくみ取った。
王国全体が、大きな変革を伴いながら復興しなければならないこのタイミングなら、それも可能だと考えたのだ。
だが、男性ばかりの騎士団の中に女性騎士を入れるのは、現実問題としていろいろと難しい……。
そうして考え出されたのが、女性騎士団の創設であった。
正式名称、未定。
通称、ワルキューレ騎士団。
将来的に、国王並びに王妃直下の騎士団となる予定。
まだ現在は、ふさわしい団員を募集している段階。
とはいえ、その中核となる人物たちの実力は折り紙付きである。
団長:イモージェン
副団長:カミラ
魔法隊長:ミュー
斥候隊長:アビゲイル
救護隊長:スカーレット
王都所属C級パーティーであった、『ワルキューレ』の面々であった。
アビゲイルとスカーレットこそ平民出身であるが、イモージェンはコムリー子爵家令嬢、カミラも男爵家三女、ミューに至っては、西部の大貴族ウエストウイング侯爵の娘だ。
表立って不満を言える王国貴族などいない。
さらに、王都でのレジスタンス活動や解放戦における活躍など、王都民はもちろん、王国民の多くに『ワルキューレ』の名は知られているため、王国の騎士団復興のイメージにもぴったり合っていた。
今現在、王都の話題の半分は、彼女たちがさらっていた。
ワルキューレ騎士団は、従来の騎士団と違い、内部に『魔法隊』、『斥候隊』さらに『救護隊』まで揃え、単独で、独立した作戦行動が可能となることを目指していた。
そのために、ミューやアビゲイル、そしてスカーレットも入っている。
王国騎士団からすればライバル騎士団の誕生!
ではあるのだが、王国騎士団員たちからは、全く反発はされていない。
特に騎士団長となったドンタンなどは、トワイライトランドへの使節団の時代から、『ワルキューレ』の実力を知っているため、それを中心とした騎士団の創設にはもろ手を挙げて賛成したほどである。
国の復興時期というのは、たいていそういうものなのだ。
他者の足を引っ張っている暇などない。
そんなことよりも、自分たちがより良くなる方法を模索する……パイはいくらでも余っている。他者を貶めて手に入れる必要などない……。
王国全土はもちろん、特に王都ではその傾向が強かった。
「ついに、ここまで来たー!」
斥候アビゲイルが、イモージェンの真似をしながら宣言する。
驚くイモージェン。
なんとなく理由を理解しているために小さく首を振るミューとカミラ。
そして、いつも通りニコニコ微笑んでいるスカーレット。
ここは、王城内の一角に新たに設置されたワルキューレ騎士団の司令部。
「え~っと、アビゲイル?」
イモージェンが、よく分からずに問う。
アビゲイルが、自分の真似をして言ったのは理解したが、何が、ここまで来たのだろう?
「憧れの、アベル陛下のすぐそばを確保したじゃん!」
「!」
再び、小さく首を振るカミラ。
だが、今回は、ミューは首を振らない。
代わりに言葉を発した。
「第二王妃になるには、陛下のお手付きになるとか、いろいろ手順があるよ」
「お、お手付きとか……」
「それは、手順なのか……」
ミューが説明し、イモージェンが顔を赤らめ、カミラが三度首を振りながら呟く。
「やっぱり……第一王妃は、無理?」
アビゲイルが、ミューの方を見ながら問う。
「うん。第一王妃の候補が強すぎるから」
「まあ、聖女様だもんね……」
ミューが答え、カミラも同意する。
「いや、あの、第一王妃とか、第二王妃とか、そういうんじゃなくて……ただの憧れ……」
イモージェンの言葉は、誰の耳にも届かない。
そんな中でも、いつも通りニコニコと微笑みながら、コーヒーを飲む救護隊長である神官スカーレット。
彼女の周りは、いつも穏やかな空気が漂っている。
そのため、イモージェンが、時々慰めてもらうために抱きつく。
「スカーレット……誰も私の話を聞いてくれないの……」
そして、愚痴る。
「イモージェンは、陛下に憧れているだけよね。近くにいることができるだけでも満足なのよね」
スカーレットが、慈愛に満ちた笑みを浮かべて言う。
「そう! そうなのよ! それだけで満足なの! さすがスカーレット!」
我が意を得たりと、喜ぶイモージェン。
その二人を見ながらミューが呟いた。
「そういえば、スカーレットは……」
カミラが続けて呟く。
「確か、アベル陛下のご友人の……」
アビゲイルがさらに続けて呟く。
「筆頭公爵のリョウ様をお気に入りだと言っていた……」
憧れと恋愛感情は、似ているけれども、少し違うものらしい……。
今回は「騎士団」のお話です。
次に投稿するSSと、その次に投稿するSSが涼パートになります。
錬金工房と西の森……。
どちらも、今年中には投稿しますので、今しばらくお待ちください。




