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水属性の魔法使い  作者: 久宝 忠
第一部 最終章 ナイトレイ王国解放戦
270/930

番外 <<幕間>> 総合評価190,000到達記念SS ある日の午後の涼

前回の幕間に引き続いて、第二部に出てくる人物の顔見世的SSです。

あ、でも、やっぱり第二部も、ハーレム展開にはなりませんので……。

「ふぅ、王都のカレーライスも、なかなかレベルが高いですね」


なぜか偉そうに、アマチュアカレー評論家になっている涼。

約束通り、ウィリー殿下とカレーライスを食べた後、殿下を学校に送り届け、自分は王城に向かっていた。



そんな時だ、音が聞こえてきたのは。


涼の記憶に間違いがなければ、それは剣戟の音。



だが、ここは王都の中でも、王城にほど近い場所。

建ち並ぶ建物は、貴族の館……それも、伯爵以上の上級貴族のものばかり……だと、アベルから聞いている。

何を隠そう、アベルが用意したロンド公爵家の屋敷も、この界隈にあるのだ。



そんな、超高級住宅街で剣戟の音……百歩譲って夜ならまだしも、今はまだ午後一時。

そんな時間帯に?


「ああ、剣の練習とかそういうのかな?」

涼は呟く。

確かに、それならありそうである。



歩いていこうとしている方向から、音は聞こえてくる。



そして角を曲がると、道路で剣戟中であった。


さすがに、貴族の剣の練習ではなさそうだ。


十代後半くらいの金髪青年と、三十歳ほどの栗色の髪の男が戦っていた。

少し離れた場所には、二十代半ばと思われる男が倒れている。

死んでいるのか、気絶しているのか……。



二人の戦いは、互角であった。

若干、金髪青年が押しているか、という程度であり、何かのアクシデントがあれば、簡単にひっくり返るほどの差。


涼としては、人助けをするのはやぶさかではないが、どちらを助ければいいのか、よく分からない。


悪者を助けてしまったらまずいじゃないですか?


なので、成り行きに任せることにした。



ただ、邪魔が入るのは無粋ということで……。

(<パッシブソナー>)


案の定、反対側の角に潜み、矢を放とうとしている男を見つけた。


(<アイシクルランス>)

「ごふっ……」


いつもの、先を丸めた氷の槍が、突然、矢を放とうと潜んでいた者のすぐそばで発生し、腹に当たり……男は悶絶した。



「これで邪魔は入りません」

涼は、そう呟くと、再び剣戟に視線を戻した。


それと、ほとんど同時に、栗色の髪の剣が飛び、間髪容れずに金髪の青年の剣が心臓に突き立てられた。



一瞬の躊躇もなく。



「おぉ……怖い」

涼は呟く。


それが聞こえたわけではないのだろう。

恐らく、戦っている間から、分かっていたのだろう。

金髪青年は剣を引き抜くと、涼の方を向き、剣を向けた。



恐らく、「お前も敵か?」という問い。



涼は首を振って言った。

「ただの、通りすがりの魔法使いです」


そう言うと、ちょっと頭を下げて、王城に向かって歩き始めた。


「あ、そうでした。来週、西の森を訪ねるのに、持っていくお土産を決めなきゃ」

そんなことを呟きながら。




涼が完全に見えなくなると、金髪青年は剣を鞘に入れ、立ち去った。


死体二つ、悶絶する男一人を無視して。

彼らが、どこの手のものか調べるまでもなくわかっていると言わんばかりに……。



金髪青年の銀色のマントには紋章が描かれていた。

もちろん、涼もそれは見えていたのだが、王国貴族の紋章など知らないため、全く気にしなかった……。



ほんの少しでも、王国貴族の紋章について理解している人物がいれば……例えば、一緒にカレーを食べたウィリー殿下などがいれば、教えてくれたかもしれない。



「シルバーデール公爵家の紋章です」と。



さらに、金髪青年についても教えてくれたかもしれない。



「青年ではなく、シルバーデール公爵家のご令嬢、フェイス様でしょう」と。



十代後半の、美男と美女の区別はつきにくい場合がある。

世界は複雑で、いろいろと難しい。



涼にとっては、そんなことよりも、西の森へのお土産を何にするかの方が重大事であったのは確かだった……。





涼は王城に入ると、そのままアベルの執務室に向かった。


部屋の主は、やはり書類まみれとなっている。

王国解放戦が終わって、まだそれほど経っていないのだが、王たるもの、休む時間はないらしい……。


「ルンの執務室と同じ光景ですね」

「んあ? ああ、リョウか」

涼の声に、アベルは少しだけ書類から顔を上げると、すぐにまた書類に向かった。



涼は、きちんとアベルに報告をする。

ホウレンソウ、つまり報告・連絡・相談は、社会人の常識なのだ。


「ちょっとした冒険をしてきました。午前中は、危うく<アイシクルランス>を食らいそうになり、お昼はウィリー殿下とカレーを食べ、さっきは道路で剣戟が行われているのを見てきました」

「意味が分からんが……。そもそも、アイシクルランスって、リョウの魔法だろ?」

「そうですよ」

「何でそれを食らうんだ?」


アベルが訝しげに問う。


「いや、ちょっと実験をしようとしたら、跳ね返ってきました」

そんな涼の言葉を聞いて、アベルは何があったかを理解した。


「リョウ、お前、王城の城壁に攻撃しただろ!」

「なぜ、わかった!」

「分かるわ! あれだろ、以前、イラリオンの爺が<エアスラッシュ>をかまして、跳ね返ってきたやつに左腕を斬り飛ばされたと言っていた……」



王都攻略戦の前、作戦会議中の会話に、そんな話があったのを、アベルは覚えていた。



「そう、それです。で、跳ね返ってくるのが分かっていれば迎撃できるかなと思って、<アイスウォール>を張ったのですが、貫かれました。つまり、王城の城壁は、ただ跳ね返すだけではなく、威力を増して跳ね返している可能性があります」

「マジか……」

「リチャード王、とんでもないですね。すごい錬金術です」

「……で、貫いた氷の槍は、大丈夫だったのか?」

「ええ。村雨で斬り捨てました。城壁を使った、いい訓練方法を考え出しましたよ。アイシクルランスを城壁に向けて放って、跳ね返ってきたところを村雨で斬る……魔法も剣も鍛えられる、一石二鳥です!」

「うん、やめろ」


止められて不満そうな涼。


脳筋とはかくも恐ろしいものである……アベルは、目の前の涼を見て、ひしひしとそう感じた。




アベルは話題を変えることにした。


「で、ウィリー殿下とのカレーは、まあいいが、道路で剣戟ってなんだ? この王都でか?」

「そうです。ああ、でも昔、アベルも勇者ローマンと、王都の路上で剣戟を繰り広げたことありましたね。ということは、よくあることなんでしょう。実際、高級住宅地で、真昼間に戦っていたのに、誰も止めに来ませんでしたし」

「俺とローマンのは……仕方ないだろ。陰謀みたいなもんだ。そもそも、王都で真昼間に剣戟なんてめったにないだろ。しかも……高級住宅地?」

「そうなんです。アベルが、ロンド公爵のお屋敷を準備してくれたじゃないですか。あそこのすぐ近くですよ。実は、すごく治安の悪い場所だったんじゃないですか? 安い土地で手を打とうとかしたんでしょ!」


涼が、胡乱げな目をアベルに向ける。


「そんなわけあるか! あの辺りは、伯爵以上の上級貴族の屋敷しかない場所だ。そんなところで剣戟となると……。ああ、やばい臭いしかしないわな。そりゃ、誰も知らせたりはしないだろう。誰も首を突っ込みたがらないのはわかる……。上級貴族同士の暗闘だろうからな」

「国王としてそれを放置しているアベル王……。ハッ。まさか、貴族同士を潰しあいさせている!? 権謀術数ですね。恐るべしアベル……」

「なんでだよ! まあ、ちょっと気になるから調べさせるが……」



その後、結局涼は、アベルの執務室のソファーに、ぬべ~っと寝転がって、王城図書館から借りっぱなしにして、この執務室に置いてある錬金術の本を読んだ。


ルンにいた頃と同じである。


結局、筆頭公爵になっても、あまり変わらない涼であった……。


総合評価19万にまで到達できたのは、読者の皆様のおかげです。

本当にありがとうございます!


書籍化に向けても進んでおります

(活動報告にも書いています……上の作者:久宝 忠 あるいは、下の作者マイページから、活動報告へ飛べます)

情報を出せるようになったら、すぐにお知らせしますので、今しばらくお待ちください。

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『水属性の魔法使い』第三部 第4巻表紙  2025年12月15日(月)発売! html>
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