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水属性の魔法使い  作者: 久宝 忠
第一部 最終章 ナイトレイ王国解放戦
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番外 <<幕間>> 総合評価189,000到達記念SS 老魔法使いたちの日常

老魔法使いコンビのSSです。

第二部にがっつり出てくる人物の顔見世……というか、名前見世です。

ここは、王国魔法研究所、別名イラリオン邸。


「イラリオン、入るぞ」

そう言って入ってきたのは、白い髭を長く伸ばし、魔法使いの灰色のローブを羽織り、大きな杖を持った、見るからに魔法使い然とした、魔法使い、宮廷魔法団顧問アーサー・ベラシス。


「なんじゃい、アーサーか。手土産くらい持ってこんかい」

部屋の主、イラリオン・バラハは、読んでいた手紙から顔を上げて、アーサーを確認する。


「手土産? 何だそれは」

「決まっておろうが。リョウじゃ。あれとの魔法談義は楽しいからのぉ」

「……リョウも、面倒な奴に目をつけられたな……かわいそうに」

イラリオンの言葉に、首を振りながら答えるアーサー。


そして、ふと、イラリオンが読んでいた手紙に目をやる。


「ん? 手紙?」

「うむ。ロベルト・ピルロからの手紙じゃ」


イラリオンはそう言うと、読み終えた手紙をしまった。


「ロベルト・ピルロ? 連合のロベルト・ピルロか? それはまた、珍しいな!」

「他に、ロベルト・ピルロなんぞおらんじゃろうが。あれもな……さっさと跡継ぎに面倒な地位なんぞ譲って魔法に専心しておれば、いい魔法使いになったじゃろうに……」


イラリオンは、心底残念という顔をして首を振りながら言う。

それを見て、アーサーは苦笑する。

ロベルト・ピルロの地位を知っており、その地位は、簡単に譲れるものではないことも知っているからだ。

「魔法使いとして優秀であるのは同意するが……奴がもっと強かったら、我らは生きてここにはおらんぞ? まあ、地位の方は仕方なかろうよ」



そう言うと、二人とも応接セットの方に移動した。

ちょうど、イラリオンの秘書スーラーが、コーヒーを持ってきたからだ。



だが、二人が一口飲んだところで、部屋の隅の錬金道具が、ウーウー鳴り始めた。



スーラーがボタンを押して答える。

「こちら、王国魔法研究所です」

「イラリオン様に至急お伝えください。王都東の森から、グレーターベアーが現れました。現在、騎士団と魔法団は演習中で王都不在。そのため、王都衛兵隊より、ご助力を乞うとのことです」

イラリオンは、すぐに頷いた。

それを見て、スーラーは答える。

「イラリオン様は、すぐに向かうとのことです」


「さて、仕事が入ったわい」

「わしもついて行こう」

イラリオンは立ち上がり、顧問アーサーも立ち上がった。




王都東。

それなりに広い森が広がっている地域だが、これまでグレーターベアーほどの魔物が現れたという記録はない。

少なくとも、ここ数十年はない。



森から出てきたグレーターベアーを、衛兵隊が盾を掲げ、遠巻きに取り囲んでいる。


「ここは王都じゃぞ? なんであんなものが現れるんじゃ……」

イラリオンがその光景を見て、ぼやく。

「王国解放戦や、戦後に、帝国兵が森を荒らしたり森に逃げ込んだりしたからな……。いろいろバランスが崩れたのであろう。しばらくすれば元に戻るであろうが……」

アーサーは小さく首を振りながら答えた。


「まあ、さっさとやってしまうか」

イラリオンは、杖を構えて詠唱する。


「風に命ず 汝の身は無限の刃 我を妨げしものを貫き制圧せよ <ソニックブレード> 風に命ず 汝の身は無限の刃 我を妨げしものを貫き制圧せよ <ソニックブレード> 風に命ず 汝の身は無限の刃 我を妨げしものを貫き制圧せよ <ソニックブレード>」


たてつづけに発射された風の刃が、それぞれ五分割し、最終的に十五本の刃となって、グレーターベアーの全身を貫いた。


風属性の魔物であるグレーターベアーを、風属性の攻撃魔法で圧倒するなど、普通はできない。

だが、それをなしてしまうのが、イラリオン・バラハ。


その、立て続けの三連詠唱……。


「あいかわらず、えぐい詠唱速度じゃな」

隣で呆れるアーサー。

先ほどの三連詠唱は、全部で三秒ほどで唱えられたものだ。

『早口』というレベルは、大きく超えている。


「ふん。わしには、これくらいしか取り柄がないからの。無詠唱で唱えることができるようになりたいわい、リョウのように」

イラリオンは答える。

「そういえば、午前中に、リョウを城壁の外で見かけたな」

アーサーが思い出しながら言う。


「城壁の外? そんなところで、何をしておったんじゃ?」

「さて……。ちらりと見ただけだったからな」



「そういえば、無詠唱で思い出した。シュワルツコフの娘が、無詠唱で魔法を行使しておったな」

顧問アーサーは、デスボロー平原での撤退戦での光景を思い出して言った。


「シュワルツコフの娘と言うと……ナタリーじゃったか? 解放戦の功績で、シュワルツコフ家を継ぐことになったんじゃろう? 若いというのはいいことじゃ、全ての可能性を持っておる」

「まあな。だが、家を継いだおかげで、ナタリーは魔法団を辞めるかもしれぬ。優秀な人材が出ていくのはつらいわい」

アーサーは、首を振りながら嘆いた。


「しかしアーサー。お主、ついてきたが、何もせんかったな」

「火属性魔法じゃからな、わしは」

「火属性は狩りには使いにくいのぉ。何でも焼いてしまうから、倒した魔物の素材が使えん」

「否定はせんが……イラリオン、お主の風の刃も、グレーターベアーの全身貫いたから、熊の皮は使えんぞ?」

「あ……」


いちおう、グレーターベアーの魔石は、無事に回収できたのであった。


また、どこかの良きタイミングで、「幕間」という名のSSを投稿します。

ですので、「ブックマークは、そのままで!」


次のSSは、涼がこの日の午前中にやっていたことと、午後のお話などの予定です。

涼パートです。


ちなみに、涼が西の森に行くのは、12月投稿になります。

今しばらく、お待ちください……。

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『水属性の魔法使い』第三部 第4巻表紙  2025年12月15日(月)発売! html>
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