0230 ホープ侯爵
ナイトレイ王国西部、ホープ侯爵領。
領都ジュエルにある領主館では、休暇中の交渉官が熱弁をふるっていた。
「父上、兄上、今すぐに、アベル王を支持するという声明を発表すべきです!」
王国外務省の交渉官イグニスは、父ホープ侯爵と、兄である次期侯爵を相手に、説得を試みていた。
「イグニスの言うことも確かにわかるのだが……」
それだけ言うと、ホープ侯爵は顔をしかめて頭を掻く。
そして言葉を続ける。
「アベルを、いやアベル王の人となりを私は知らん。旗幟を鮮明にした挙句に、その相手が酷い人物であったりしたら侯爵領としては大変困る」
「ですから! アベルの、いやアベル王の事は、わたくしがよく知っています! 確かに冒険者としてですが、人格的にも非常に優れた人物でした。歴代の国王陛下方と比べても、非常に素晴らしい王となられること疑いありません!」
イグニスは、ほんの数カ月前、トワイライトランドへの使節団で当時のA級冒険者アベルと長い時間を共に過ごした。
その経験を語って聞かせ、父と兄の支持を取り付けようとしていた。
「父上、イグニスの話が本当なら、アベル王は確かに支持するに値する方だと思われます。少なくともフリットウィック公爵よりは、はるかに……」
「うむぅ……確かにそうかもしれんが……」
アベル王の即位宣言は、今日の正午に出された。
現在、十二時半。
王国内の多くの貴族が迷っている今、支持すると宣言すれば、ホープ侯爵領を大きくアピールできる。
来たるべきアベル王の治世において、今まで以上に侯爵家の名声は高まるであろう。
もちろん、現状でも、ホープ侯爵家は西部最大の貴族だ。
現ホープ侯爵は、中央政治への関心はほとんどない。
とはいえ、子孫が領地と『ホープ』の名を引き継いでいくことを考えれば、ある程度の強さは持っていた方がいい……中央から侮られない程度の力はあるべきなのだ。
「よかろう。我がホープ侯爵家は、アベル王を支持する」
「おぉ!」
父のその宣言を聞いて、兄と弟は異口同音に、そう声をあげた。
三十分後、西部の大貴族ホープ侯爵は、アベル王を支持する宣言を出した。
それとほぼ同じタイミングで、南部のハインライン侯爵、ルン辺境伯も、アベル王を支持すると宣言した。
また、エルフたち『西の森』も、アベル王を支持する声明を発表する。
ここに、北部と中央を押さえたレイモンド王と、南部と西部の支持を取り付けたアベル王との対立構造が鮮明となる。
混乱の極にあり、領主たちの交代が相次いでいる東部を除く王国が、二分されたのであった。
いろいろ修正していたらすごく短くなってしまいました……。
ですので、今日は二話投稿です。
21時に、次話「0231」を投稿します・




