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水属性の魔法使い  作者: 久宝 忠
第一部 第一章 スローライフ(?)
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0022 再び海へ

デュラハンとの剣戟で、剣での戦いの自信はついた……まだ良くても、一日一回しか打ち込めていないが。

それでも自信はついた。

魔法制御もかなり上達した自信がある……未だに<血液凍結>は成功していないが。

そもそも成功するものなのかどうかも、不明であるが。



どちらにせよ、涼は自身の成長を確かめようと考えていた。

それは絶対に避けては通れない道。


気絶させられたあの時以来、涼は海に入っていない。

塩は、陸上から海水を採水して水分を蒸発させて手に入れていたが、海中に入ることはなかった。

どうしても魚が食べたい場合は、川魚で済ませてきた。


そう、避けては通れない道、それは海中での戦闘。

ベイト・ボールとの魔法制御の奪い合い……これに勝つ必要がある!

確かにあの時、ベイト・ボールを蹴散らした。

だが、それは魔法制御において、手も足も出なかったのを奇襲で逃れたに過ぎない。

これから先、この『ファイ』で生きていくためには、それではダメなのだ。

自信を手に入れるには、結局は、成功体験を積み重ねるしかないのだ。



涼は岩場に立ち、海中を睨みつける。

姿は前回同様、武器は右手に持ったナイフ付き竹槍のみ。

腰巻、サンダルと一緒に、デュラハンからもらったナイフ……みたいな氷の剣、通称『村雨』(涼命名)は置いてある。

前回と同じ装備にこだわった。


「いざ、参る!」


飛び込み、そのまま近くにいた魚を竹槍で突き刺す。

前回の様な景色を楽しむ気はない。

あれから更に鍛え、持久力も上がりそれに伴って肺活量も上がっていたが、それでもせいぜい活動可能時間は五分である。

おそらくそれが人間の限界……。

ならば、出来る限り早く、戦闘に持ち込んだ方がいい。


魚を突いた瞬間、前回と同様に、世界が変わった。

前方からやってきたのは、これも前回同様にベイト・ボール。

狙い通りである。

そして涼は、手でも足でも水を掴めない状況に陥ったことを確認した。

(よし、では手足まわりの海水の制御を奪い返す)

ちょっとイメージしただけでは、「弾かれる」。

だが、以前とは桁違いの魔法制御力を手に入れた涼にとっては、ほんの少し魔力を多めにしてイメージするだけで、手足が水を掴めるようになった。

(よし! やり返してやる)



次は涼の番である。

頭の中でイメージする。ベイト・ボールがいる海水を、涼が自由自在にコントロールし、ベイト・ボールを構成している魔物たちが動けなくなる光景を。


(<ワールドイズマイン>)


心の中で唱えた瞬間、ベイト・ボールが歪み始めた。

構成している魔物たちが、自分の姿勢、動きをコントロールできなくなったのだ。

(これは、もしかして凍らせることもできるのでは? <氷棺>)

歪んだベイト・ボールが凍り付いた。

構成している魔物そのものが凍ったわけではなく、その周囲の海水が凍ったのだ。

地上で、以前は魔物の身体から十センチ以内を凍らせることは出来なかったが、今では水魔法の制御能力が高いと思われる魔物に対してすら、周囲を凍らせることが出来るようになったのだ。


涼は、その成果に非常に満足していた。


竹槍を振るうまでもなく、ベイト・ボールを丸ごと無力化することに成功した。

これまで訓練してきた魔法制御の威力によって。

そのため、すぐ目の前に巨大なイカが現れるのに気づくのが遅れてしまったのも、仕方なかったのである。



前回も、倒した直後に油断して、エビに気絶させられたが、今回も同じパターンなだけだ。

そう、もうこれは仕方がないのだ。


巨大イカ……地球では伝説の生物クラーケンと呼ばれるものかもしれない。

全長は四十メートル。

気付いた直後の反応は、だが速くなっている。

(<アイスウォール5層>)

張った瞬間に、何かがアイスウォールにぶつかり、アイスウォールが砕けた。

(アイスウォール5層が一撃で!?)

さすがにそれは想定外だ。


(<アイスウォール5層>)

(<アイスウォール5層>)

(<アイスウォール5層>)

三連で張る。


だが今度は、張ったそばから剝がされ、消えていく。

クラーケンは、訓練に訓練を重ねた魔法制御の元で編んだアイスウォール……その制御を、いとも簡単に奪い取っていったのだ。

(<氷棺>)

先ほど、ベイト・ボールを丸々凍りつかせた範囲氷結魔法で、クラーケンの周りを凍りつかせる。


だが、一瞬だけ氷が発生したが、すぐに霧散し元の海水に戻った。

クラーケンに制御を奪われた……。


(これは無理。逃げよう。<ウォータージェット32>)

足の裏からウォータージェットを噴き出し、緊急脱出。


さすがのクラーケンも、これは想定していなかったのだろう。

脱出は成功した。

急いでサンダルを履き、腰布と村雨を手に取り、そのまま脱兎のごとく家に向かって駆け出した。

ようやく一息入れることができたのは、結界の中に入ってからであった。

「海って怖い……」



「またも、後から現れたクラーケンに負けたけれども、ベイト・ボールには完勝した。そう、間違いなく成長はしている。ただ、ちょっとクラーケンに出会うのが早すぎただけ。あれは、もうちょっと強くなってから出会うべきボスキャラだったに違いない」

魔法制御のレベルが、ベイト・ボールなんかとは全然違う、それは嫌でも感じさせられた。

つまり、もっともっと魔法制御を上げることは可能だということだ……多分。


「やはり、もっと訓練しないといけないということ。今までは五重塔だったけど、これからは東京スカイツリーにしよう」

何かを大きく間違っているが、それも含めて、涼なのであった。


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