0213 最終章 序
最終章の開幕です。
本日は二話投稿です。
12時に、幕間「0212」を投稿しております。
ナイトレイ王国北部、ゴーター伯爵領。
その領都ゴーヤーの中央広場で、大規模なデモが発生していた。
「食い物よこせ、か」
そんなデモを見ながら、一人の剣士と思しき冒険者が、宿屋の二階の窓から広場を眺めて呟いた。
「よかったな、俺ら、侯爵様のところに拾ってもらえて」
魔法使いと思しき男性が、椅子に座ったままそんなことを言う。
隣に座った神官風の男も、その言葉に何度も頷く。
「確かにな。イラリオン様様だ。それにしても、オリアナとアイゼイヤはまだか」
剣士は、扉の方を見ながら、懐中時計を取り出して確認する。
「ヘクター、心配し過ぎ。あの二人なら大丈夫だよ」
魔法使いがそう言った瞬間、扉が開かれて、二人が入って来た。
「ヘクター、指示書、あったよ」
斥候であるオリアナが、パーティーリーダーのヘクターに指示書を渡す。
「そうか!」
ヘクターは嬉しそうな表情になり、指示書を受け取った。
そして、一読する。
ヘクターの言葉を待つ、四人のパーティーメンバー。
そして、ヘクターが指示書を読み上げた。
「王都に帰還せよ」
「よっしゃー」
四人は、喜びを爆発させた。
槍士のアイゼイヤは、何度もガッツポーズを決め、魔法使いのケンジーと、神官ターロウは、抱き合った。
彼らは、元王都所属C級パーティー『明けの明星』である。
以前、王都騒乱前に、アベルを拉致しようとしたパーティーだ。
その後の、証拠隠滅のための爆破に巻き込まれて、行方不明になっていたのだが、実はイラリオン・バラハによって保護され、そこからハインライン侯爵家の王都駐留冒険者となっていた。
今はまだ、王城内の権力争いが落ち着いていないため、彼らの生存は伏せられている。
そのため、今回の任務に関しても冒険者ギルドを通したものではなく、ポイントもつかないのであるが、相当の上乗せ報酬をハインライン侯爵家からはもらっており、五人共満足していた。
ただ、一カ月にわたる、ゴーター伯爵領での調査はあまり楽しいものでもなく、若者にとっては、王都の華々しさが懐かしくなっていたのもまた事実であった。
「父上、『明けの明星』、領都ゴーヤーを出て、王都に向かいました」
ハインライン侯爵領アクレ。
フェルプスが、父アレクシス・ハインライン侯爵に報告を行った。
「ご苦労。王都についたら、ロレンス伯爵の内偵に廻すのか?」
「いえ、かの御仁は切れ者ですので、内偵は本職の者のみで続行します。明けの明星は、『イラリオン邸』で遊軍、といったところでしょうか」
ハロルド・ロレンス伯爵……現内務卿。
大臣たちの中で最も若く、最も有能との評価は、衆目の一致するところである。
だが、そんな優秀な人物が、裏切っていたとなると……。
(正直、この国はもう……)
アレクシスはそう思ったが、辛うじて口に出すのは止めた。
そして首を何度も振るのだ。
ほんの十年前まで、繁栄の絶頂にあったはずの故国……ナイトレイ王国。
なぜ、こんな状態になってしまったのかと。
自分が騎士団長の職を辞し、領地に戻ったのがまずかったのか。
アーサー・ベラシスを魔法団顧問ではなく、魔法団長に就けておくべきではなかったか。
考え始めたら、様々な過去の行動を思い出して悩んでしまうのだ。
だが、今さら変わらない。
扉から出ていった息子、フェルプスとその世代、さらに下の世代に、なんとしても良い国を残す、そのために何でもやる!
それが、アレクシス・ハインラインの決意であった。
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オスカーの、6歳から18歳の物語です。




