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水属性の魔法使い  作者: 久宝 忠
第一部 第十一章 トワイライトランド
225/930

0211 <<幕間>>

使節団は、特に問題も無く、王都に到着した。


解団式を経て、それぞれに散っていく。

王国騎士団は新築の騎士団詰め所へ。

冒険者はギルドへ。

交渉官イグニスと文官たちは外務省へ。

そして、涼は錬金工房へ。



涼とアベルは、明日の朝にはギルド馬車で、王都を発ってルンの街へと出発する予定になっている。

そのため、何かするなら今夜しかないのだ。

だから、涼は迷わずケネスのいる王立錬金工房へ向かった。

一方アベルは……。



『イラリオン邸』の地下から、王城の隠し通路を通って、王太子の石の扉を叩くアベル。


いつも通り、扉は開いたが、そこにいたのは、王太子ではなかった。

実直そうなその男の顔には、見覚えがあった。

「確か、ダニエルであったな。王太子付き侍従の」

「さようでございます、アルバート殿下。どうぞ、中へ」


アベルは、扉を開ける前の合図から、扉の向こうにいる者が王太子でないことは分かっていたが、やはり心が騒ぐのを止めることは出来ない。


はたして、王太子はベッドにいた。


歩くことは、もう出来なくなったのだ。



「ああ、アルバート、よく来てくれた」

「兄上……」

アベルは、それ以上言葉を紡ぐことができなかった。


「アルバート、そんな顔をしないでくれ。幼少より、こうなることは分かっていたんだ。この身体も、想像以上にもってくれたさ。それに、確かに歩くことは出来なくなったけど、まだ頭は働くよ」

そう言うと、王太子は微笑んだ。



アベルは、生涯、その微笑みを、忘れることはなかった……。




「ところで、宿題はやってきたかい?」

「はい、全て終わらせました」

「そうか、さすがだ。そういうところ、アルバートは昔から真面目だったね」


王太子は一つ頷くと、提出された宿題の中から一つ取り出し、無造作にめくる。


「ふむ……さすが、なかなかに興味深い回答だね」

「ダメ……でしょうか?」

アベルは、不安な顔をして問いかける。

「ん? いやいや、そんなことはないよ。言うまでもなく、これらの問題の多くは、絶対の正解はない。基本的な法に沿ったものであれば、あとはアルバートの考え一つさ」


それはそれで難しい。アベルはそう思った。



「民あってこその国であり、王室だ。それさえ忘れなければ、いい王になれると思う」

王太子のその言葉で、兄弟の短い会合は終了した。


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