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水属性の魔法使い  作者: 久宝 忠
第一部 第十一章 トワイライトランド
223/930

0209 <<幕間>>

ハインライン侯爵領の都アクレ。

その街中にある、貴族の屋敷。

ここは、ルン所属B級パーティー『白の旅団』の、アクレにおける拠点である。

白の旅団の団長フェルプスは、このアクレの街を領するハインライン侯爵家の跡取りであるため、ルン所属にも関わらず、白の旅団はけっこう利用していた。


「やはり、北部は変な動きだ……」

いくつかの報告書を比較しながら、フェルプスは呟く。

横には、淹れたてのコーヒーを持ってきた、副団長のシェナがいる。

「シェナ、悪いけど、あの四人を呼んできてくれないか。屋敷のどこかにはいるはずだから」

フェルプスにそう言われると、シェナは一度お辞儀して、部屋を出ていった。



シェナと、呼ばれた四人が部屋に入ってきたのは三分後であった。


「団長、呼ばれたので来ました~」

背中に、二本の剣をクロスさせて背負っている男が、部屋に入る早々告げた。

双剣士のブレアである。


「ほんっと、ブレアって、話し方講座受けた方がいいと思うんだ!」

自分の身長よりも長い杖を持った男が、ブレアに苦言を呈した。

土属性の魔法使いであるワイアットである。


「まあまあ、二人ともそのへんで」

言い争いを始めたブレアとワイアットを仲裁した男は、神官の服を着ている。

神官のギデオンである。


「……」

最後の男は、無言のまま、首を横に振るだけで入って来た。

斥候のロレンツォである。


フェルプスとシェナに、この四人を加えた六人が、ヒュー・マクグラスが言うところの『白の旅団の中核部隊』

そして、この四人は、他の団員からはこう呼ばれていた。

『四天王』と。

涼が聞いたら、絶対にこう言ったであろう。

「なんて中二的な!」



「すまんが四人で、北部のフリットウィック公爵領に行って来てもらいたいんだ」

「フリットウィックって、王弟の領地だよな?」

「ブレア、せめて王弟殿下と……」

フェルプスが言い、ブレアが問い直し、ワイアットが言葉遣いに苦言を呈す。


「ああ、はいはい、でんかでんか」

「やりますか! 表に出……」

「はい、そこまで」

ブレアとワイアットのじゃれあいはいつもの事なので、フェルプスは完全スルー。

止めるのは、神官ギデオンの役割である。


そして、ギデオンが止めたら、フェルプスがまた話を再開する。


「はっきり言うと、反乱、もしくはそれに類することが起きると思う。しかも、一年以内に」

「マジか……」

さすがに、事の重大性を理解し、ブレアすらも軽口をやめる。



王弟レイモンドが治めるフリットウィック公爵領は、北部でもかなり力のある領地である。

北部第二の都市カーライルを公都とし、肥沃で広大な領地は、小麦の生産で有名だ。


そんな場所が反乱……しかも、王弟の反乱となれば、多くの貴族がその後ろに従うであろう。

現国王の下では出世を望めない者たちが、一発逆転を狙って王弟レイモンドの元に参陣する可能性がある。

下手をすると王国を二分する内戦になる可能性が……。



「団長、それで、我々は具体的にはどのような行動をとればいいのでしょうか」

神官ギデオンが問う。


「可能なら反乱の証拠を持ち帰って欲しい。ただし、命を懸けてまでやる必要はない。皆の力は、その後にこそ最も必要になるからね」

「反乱を抑える必要は……」

「その必要はない。そう簡単に抑えられるとは思えないし、もしかしたら反乱を起こさせた後で処理した方がいいかもしれなくなるから」

「おお、こわい」

最後の言葉は、双剣士ブレアである。


ブレアは、団長フェルプスが、騎士の中の騎士と言えるほどに王国屈指の正面突破力を持つが、それ以上に搦め手、謀略が得意であることを知っている。

そんなフェルプスが、「反乱を起こさせた後に」とか言っているのだから、実際に恐ろし気に感じるのは当然であろう。


「まあ、とりあえず、行ってきますよ」


こうして、白の旅団の最精鋭『四天王』は、北部に送り込まれた。


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『水属性の魔法使い』第三部 第3巻表紙  2025年7月15日(火)発売! html>
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