0113 <<幕間>>
極めて短い幕間(いわゆるSS)ですので、本日二話投稿の一話目です。
デブヒ帝国帝都マルクドルフ。
その日の午後、帝国執政ハンス・キルヒホフ伯爵は、急報を皇帝ルパート六世の元に届けた。
「陛下、昨日の報告通り、ウィットナッシュの件、襲撃者が暗殺教団の者たちであったことが確定いたしました」
「やはりか。だが、あやつらには金を払って、例の計画を遂行させておるであろう?」
ハンスの報告に、ルパートは小さくため息をついてうなずいて言った。
「はい。王国東部の件ですね。それとは別の仕事として、ウィットナッシュも引き受けていた様です。まあ、金を払えば何でもする者たちですから……両方から金をとり、両方の仕事を行っているだけだそうで」
「なんとも忙しい奴らだな。だがそうなると、お灸を据えるわけにはいかんか。ウィットナッシュの件は腹立たしいが、王国東部への活動は、まだまだこれからも続けてもらわねばならぬからな」
そう言うと、ルパートは紅茶を一口だけ、口に含む。
「おっしゃる通りです。そのため、昨日提案しました通り、『山の長老』に直接確認するため、奴らの本拠地アバンの村に人をやりました」
「ああ、そう言っていたな。もし事実であれば、直接首領に事の真偽を問いただすと。奴らも、我らが本拠地を知っておったことに驚いたであろう?」
ルパートがそういうと、なぜかハンスはその後の言葉を言い淀む。
それは極めて珍しい事であった。
「どうした?」
ルパートが再度促すと、ハンスは意を決して口を開いた。
「はい。それが……アバンの村なのですが、全て凍りついておりました」
「……なに?」
「村全てが、凍りついておりました」
それを聞いて、ルパートはたっぷり五秒間、無言であった。
最後にカップに残った紅茶を飲み干してから、ゆっくりと口を開いた。
「天変地異か、何か我らの知らぬ魔物の仕業か……そうでなければ、化物じみた魔法使いでもいるのか……。そうか、オスカーが不覚を取った魔法使いがいたな」
それを聞いて、ハンスは驚愕した。
「まさか……村一つを凍りつかせるほどの魔法使いですか……」
「ふん。オスカーも、怒り狂えば街の一つくらいは業火の元に焼き尽くすだろうよ。それの氷版ということだ。しかし……まさかこれほどとはな。オスカーの報告、もっと真剣に聞いておくのであったわ。我の失態か」
後半は、ハンスにもほとんど聞き取れないほどの呟きである。
「ハンス、早急に、その水属性魔法使いについて調べよ。今回の情報、皇帝魔法師団に回し、オスカーからも直接、その水属性魔法使いの情報を取れ。よいな、しかと命ずる」
「ははっ」
本日21時に、短い幕間『0114』を投稿します。
涼たちのその後です。
幕間続きですいません……。




