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水属性の魔法使い  作者: 久宝 忠
第一部 第七章 インベリー公国
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0106 <<幕間>>

短い幕間です。

本編である次話『0107』は、いつも通り本日21日に投稿します。

アベルをリーダーとする『赤き剣』は、王国東部国境の街レッドポストでゲッコー商隊と別れてから、北西の方角へと歩を進めていた。

その方角の先には、ナイトレイ王国王都クリスタルパレスがある。


「ねえ、絶対おかしくない? なんであの手紙、ルンの街じゃなくてレッドポストに届いたの? あの手紙のせいで、レッドポストから直接王都に行く羽目になってるし」

四人の中で、自他ともに認める、最も体力に自信のない魔法使いリンは、レッドポストを発って以来何度目かのボヤキを始める。


「知らないわ。それこそ、王都に着いたらイラリオン様に問いただしなさいよ」

リンの次に体力のない神官リーヒャが、適当に答える。

「ハッ、内部情報が漏れている可能性があるわ! この中に裏切り者がいるに違いない……」

「リン、最近リョウに似てきてるぞ」

「なんでよ!」

リンのボケにアベルがつっこむ。



赤き剣の四人は、レッドポストから出発しようとした時に、冒険者ギルド経由で届いた手紙によって、行先をルンから王都に変更することになったのである。

手紙の差出人はいつものように『イラリオン』であった。


イラリオンが、冒険者ギルドのコネクションから、赤き剣がレッドポストにいるという事を知ったからであるが、その事はあえて知らされていない。



「イラリオン様のお手紙はいつもの事だけど、今回のは珍しい内容よね」

リーヒャが傍らを歩くアベルに言う。

「ああ。兄上に会え、か……」

アベルの表情は決して明るくない。

それは『兄』との関係性の問題ではなく、急遽、そんな内容であったために訝しんでである。

何度か小さく首を振り、忘れることにした。



「今ごろは、もうリョウたちも、公都に着いているかしらね」

それを察してか、リーヒャから話題を変える。


「さあ、どうだろうな」

「無事に着けばいいんだけど」

「少なくとも、リョウは辿り着くだろ。というか、ちょっかい出した暗殺教団が壊滅させられないかの方が気になるんだが……」



「そう言えば宿の会議室で、こっちに向かってきていた暗殺者、凍らせていたわね」

リーヒャが、シャーフィーの手術中に襲ってきた賊たちのことを思い出しながら話す。

「いつの間にか氷漬けになっていたな」

アベルが答える。


「ああ、それそれ! 私、以前魔法学院で聞いたことあるんだけど、水属性魔法で生きた人を氷漬けにすることは出来ない、って。でも、リョウって氷漬けにしたから、なんでだろうって……」

リンが二人の会話に割り込む。

「ん? 氷漬けに出来ないのか?」

「当然でしょ。そんなことが出来るなら、その魔法に特化するだけで対人戦最強じゃない」

アベルの疑問にリンが即答する。


「人間ってのは、身体の表面十センチくらいまで、他人の魔法の侵入を受け付けない特性みたいなのがあるらしいの。<魔法障壁>も、その特性を拡張したものらしいし」

「そう言えば神殿でも習ったわね、それ。光属性の回復も、一番いいのは対象の身体に触れながらがいいって」

リンの説明に、リーヒャも聞いたことがあると乗っかった。



「それって、魔法が使えない俺みたいなのでも?」

魔法が使えない剣士のアベルはどうなのかと。

「うん。魔法が使えない人でもそうらしいよ」

リンが大きく頷きながら答えた。


「それなのにリョウは凍らせることができる、と……しかも生きたまま」

「考えてみると恐ろしいよね……」

アベルがぼそりと言い、リンが首を横に振りながら言う。


「以前は、帝国の皇女を凍らせようとしたからな……」

「うん、アベル、王国と帝国の戦争がもし起きるとしたら、原因を作るのは、きっとリョウだね」

アベルの呟きに、リンが重々しく頷きながら恐ろしいことを言うのであった。

「勘弁してくれ……」


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『水属性の魔法使い』第三部 第3巻表紙  2025年7月15日(火)発売! html>
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