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【おかげさまで100万PV到達!!】ー盟約のティルフィングー  作者: 精神感応4
第2部 『京の乙女と年の瀬捜査網』 プロローグ
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幼子の記憶 京に現れし影

 咲いている。咲いている。真っ赤な花が咲いている。


 揺れている。秋風に撫でられて揺れている。


 泣いている。地に伏した花々の園に、女の子が泣いている。黒髪の綺麗な女の子が。


 嗚呼、自分は何をしてあげられるのか。


 唯々、理由はわからないけれど。


 初めて出会った、その女の子の笑顔を見てみたい。幼心にそう思った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 大日本皇国、国家の象徴たる帝、国の要である陰陽師、その他魔術師たちの元締めである土御門宗家など国家の重鎮たちお膝元である皇都、京都は雪に包まれていた。


 年の瀬とあって夜にも関わらず人通りは多い。「師走(しわす)」とはよく言ったもので、人ごみの中には物を抱えて忙しなく歩いている袈裟(けさ)を纏った坊主頭たちもチラホラと混じっている。


 時が幾らか経ち、深夜になると流石に人々は帰途に着く。分厚い雲に覆われ、風もなく、京の夜は静まり返る。そして、ここからは千年以上続く魔性の者たちの時間だ。


 そこら中でどこからともなく湧いてきた化け物たちが珍妙な行列を作って楽し気に通りを練り歩いていく。


 琵琶やら箏やらに手足が生えたモノ、ボロボロの御幣(ごへい)を振る烏帽子を被った小鬼、首なしの馬に乗った一つ目の鬼等々。


 時代と共に人々に危害を加えることもなくなった彼らを警邏する陰陽師や特殊警察部隊、検非違使たちは微笑ましく見守っている。


 時刻は丑三つ時を少し過ぎた頃。百鬼夜行で賑やかな洛中と違い、寺社の多い洛東、東山周辺は化生の者たちには居心地が悪いのか猫一匹すら外を出歩いてはいない。


 そんな中、清水の参道を男が一人ひょこひょこと奇妙な足取りで歩いていく。


 男は参道の真ん中を堂々と歩いているが、不思議なことに時たますれ違う陰陽師や僧侶はそれに全く気付かない。


 男は奇妙な足取りのまま参道を進んでいく。昼間は寺への参拝客とそれを狙った参道沿いの茶屋や土産屋で賑わっているが、今は仄かに明るい灯篭が点在するだけだ。


 男の足は緩まることもなく、急くこともなく、ひょこひょこと前に進んでいく。そして、山門の近くの丁字路に差し掛かるとその足を止めた。


 「…………」


 男は懐を探り、紐の付いた丸い水晶のような物を取り出した。


 水晶をぶら下げるようにして紐を垂らすと参道から逸れて坂をゆっくりと下り始める。


 奇妙なのは男が手に持った紐付きの水晶だ。普通なら男の動きに合わせて揺れようものが全く揺れていない。


 手にした水晶の動きを気にするようにひょこひょこと坂を下って行く。


 「…………」


 水晶は全く動かない。男の足だけが動いていく。


 「…………!」


 そのまま何も起こらずに坂を下りきろうとしたその時、水晶が激しく動き出し、それに釣られて紐が揺れ始めた。


 男はその場で立ち止まる。暗闇で表情は分からないが、ニヤリと笑っているように見えなくもない。


 紐付きの水晶を懐にしまうと、今度は何か液体の入った小瓶を四つ取り出した。


 視線を下に向けて何かを探すように首を動かす。


 「…………」


 ある一点に男の視線が止まった。石畳に覆われている通りの内、その一か所だけ少し盛り上がり、土が露出して塚になっている。


 「…………」


 その場にしゃがみ込むと小瓶の蓋を開けて土に一つずつ中身を垂らしていく。


 びちゃびちゃと音をたてて四つ目の小瓶の中身が落ちていきやがて空になる。


 土に液体が完全に染みたのを確かめると瓶を懐にしまう。入れ替わりに裁縫箱を取り出して蓋を開ける。

 中に入っていた数本の針の内、一番短いものを手に取る。


 「…………!」


 そして、土にその針の全身が埋まるように刺した。


 直後、グラグラと地面が揺れ始める。


 先ほどまでのひょこひょことした足取りとは打って変わって機敏な動きでその場から飛び退く。


 一方、揺れは段々と大きくなり、ついには塚が盛り上がり、土の下から巨大な何かが出てきた。


 獣だ。体長四メートルほどの巨体は暗い靄に全身を覆われていてよく見えないが目が赤く光り、不気味に揺らめいている。


 身震いをして身体中に着いた土を落とす。そして、息を吸い込むと、吠えた。


 「ヒーーーーーーーーーーヒョーーーーーーーーー!」


 身の毛がよだつ不気味な咆哮。風も吹いていないのに辺りの灯篭の火が全て消えた。


 謎の巨獣は音もなく飛び上がると空を駆けて何処かへと消えていく。


 「ヒーーーーーーー!ヒョーーーーーーーーー!」


 この世のものとは思えない奇声が夜の都に響き渡る。


 洛中の百鬼夜行は怯えて逃げるように消え去り、陰陽師たちも騒ぎ出した。


 分厚い雲が裂け、月光が一筋漏れて男の下に降ってきた。


 「…………フッ」


 男は満足そうな笑みを浮かべるとひょこひょことした足取りで降りてきた道を登り始める。男もまた、謎の獣と同じように山門の方へと消えていった。



 こんばんは!お待たせしました!今日から第2部に突入します!今日はプロローグだけなので、明日からの本編もよろしくお願いします!

 いつも通り評価とかレビューとか、感想とかお待ちしてます!特に、多くの人に読んでいただきたいのでレビューとksしていただけるとむせび泣くほど喜びますので、どうかよろしくします!

 それでは、またお付き合いください!!良い夜を!

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